儚いなんて言わせない
前職は20代の時にアルバイトで入り、その後なんと!30年くらい勤めていた。
コロナの事業縮小で辞めざるを得ないことになったが、仕事は楽しかったし、出会った中には個人的に好きだった方たちもいる。
その中の1人、Oさん。
わたしより9つくらい年上で、優しくて柔らかい雰囲気の素敵な女性だった。
わたしが入職した数ヶ月後に、3人目のお子さんを産まれた。
かわいい女の子で、産休明けて戻られてからは毎日のように娘さんの話を聞かせてもらった。
上のお2人のお子さんは男の子たちで、そのお話を聞くのも楽しかった。
そのOさんが、娘さんが小学校に上がって少しした頃に白血病になられた。
とにかく無事でいてほしい、とわたしも祈り、その時の最先端の治療を受けられたりしていた。
その治療の最中に「ほんとにきれいな川とお花畑があるのよ」と言われるような生死を彷徨うことがあったことも聞かせてもらった。
その治療の成果もあり、ガン細胞がほとんどなくなり仕事に復帰された。
嬉しかったなあ。
Oさんも本当に仕事できることを喜んでおられた。
けど、薬の副作用だという心臓の具合が良くなくなってきて、ある年末に入院された。
病室からお電話くださり、「今年はダメみたい。来年からまたがんばるね」と言われて、わたしは「待ってますよ」とお伝えした。
その数日後、お亡くなりになった。
娘さんは中学2年生。
お通夜に行くと、涙が出てきた。
もっと話したかったし、一緒にランチやカフェにも行きたかった。そしてこれからまた仕事も一緒にできると思っていた。
その時に、勤めていた法人の理事長が「Oさん、儚かったなあ」と言った。
悔しくて、そして腹が立って、そんなことをサラッと言うなんて…
どこが儚いんだ、こんなにいい子3人産んで育てて、仕事もして、病気を治すために頑張ってきたOさん。
悔しかった、悔しかった。
日本人は儚さを愛でる、という。
そうなの?そうかもしれないけど、人が亡くなった時に言うな。
それぞれの人生での楽しいこと頑張ってきたこと辛かったこと、その人生は儚くない。
儚いなんて言うな。