
人生の最期まで、その人らしく美しく ―― ある終末期ケアの記録
「介護美容分野において8年の実績を誇るRingsCareでは、根拠に基づいた美容ケアを提供しています。
看護学の研究に裏付けられたアプローチで、介護が必要な方にも安心して利用いただけるサービスを展開中です。「美しさは人間の尊厳を守る」という信念のもと、看護・介護(Nursing)とメイクセラピー(makeup therapy)を融合させた新しいケアスタイルを提案します。
このブログでは、RingsCareの実際の事例や介護美容の最新情報、心身のケアに役立つ実践的なヒントをお届けします。

こんにちは。RingsCare代表の大平 智祉緒です。
私たちRingsCareは2024年、7名の方の終末期ケアに関わらせていただきました。
2023年の会社設立時に掲げた理念は、『病気や障害があっても、一人ひとりのいのちの輝きを支え続ける』というものです。
ここで「命」ではなく「いのち」と書いているのには理由があります。
人の命は、体の働きだけでなく、心の動きや人とのつながりも含めた大切なもの。「いのち」という言葉が、そんな深い意味を優しく表現できると考えたからです。私たちは、人生の最期のケアを選ぶとき、RingsCareを誰もが選択肢の一つとして考えられる社会をつくりたいと願っています。
一人ひとりの人生には、それぞれの物語があります。
当社のケアを選んでくださった方々には、心から感謝しています。こうした穏やかな最期の迎え方があることを、もっと多くの方に知っていただきたいと思っています。
大切な人の死を悲しみだけで終わらせないために、ご本人だけでなく、ご家族とも寄り添いながら伴走します。
本日は、昨年お見送りしたNさんの事例をご紹介します。
優しい思い出とともに
70代前半で介護が必要になったNさんには、二人の優しい娘さんがいました。元気な頃のNさんは、手作りのケーキやお料理で家族を温かく迎える、おしゃれなお母様だったそうです。「いつも綺麗にしていた母に、最期までその人らしさを」という娘さんの願いから、私たちの関わりが始まりました。
言葉を超えたつながり
お会いした時、Nさんはすでに言葉でのお話が難しい状態でした。でも、声をかけると目を開けて見つめ返してくださり、小さな声で応えてくださいました。温かいタオルでお顔を拭くと、気持ちよさそうな表情を見せてくださいました。
フルメイクはあまりしませんでしたが、Nさんらしい「きれいでおしゃれ」な印象を大切にしました。お肌のお手入れ、髪や爪のケア、心地よい姿勢づくりなど、細かな部分まで気を配りました。ケアの最中は、やさしく触れながら声をかけ続けました。普段は静かに過ごされるNさんでしたが、私たちのケア中は目を開けて見つめたり、時には声を出して何かを伝えようとしてくださいました。
変化に寄り添って
体調の変化とともに、食事が難しくなり、痰の吸引も必要になりました。体力も落ちましたが、「母がこの時間を楽しみにしている」というご家族の言葉で、週2回の訪問に増やしました。
娘さんたちが来られたとき、少しでも明るい気持ちになっていただけるよう、現場のケアスタッフとも方向性を合わせ、日々のケアを行いました。スタッフがNさんの大好きなプーさんの飾りつけをしてくれ、アロマの香りとディズニーの音楽で部屋を彩りました。医療機器が増えても、不思議と温かな空気が流れていました。
最後の日々に込められた想い
最後の訪問日、娘さんと一緒にケアをさせていただきました。Nさんの愛用していた化粧品の思い出話に花が咲き、「お肌ツヤツヤね!」「私も母に似て色が白かったら良かったのに!」「〇〇の化粧品を使っていたのが良かったのかね!」
シビアな状況下であっても、最期まで家族もスタッフもみんなで笑顔の時間をもつことができたのは、見た目の綺麗がもたらしてくれる安心と喜びの力なのではないかと思います。
後日、娘さんからは「本人も家族も幸せな時間を過ごせました。このようなケアをもっと多くの人に知ってほしい」という心温まるメッセージをいただきました。
終末期のケアに、これが正解というものはありません。大切なのは、ご本人とご家族の気持ちに寄り添い、みんなが安心できる方法を一緒に見つけることです。
「母の最期の姿から、私自身も自分らしく生きる勇気をもらいました」。
娘さんがそう語ってくださった言葉が、今も心に残っています。
いのちの輝きとともに
人は誰しも、いつか老いて、病を得て、死を迎えます。それは悲しいことかもしれませんが、自然な摂理でもあります。その過程に寄り添うことで、私たちは「生きること」の意味を深く学ばせていただいています。
悲しみの中にも、希望と学びを見出すこと。それが私たちの目指すケアです。
【お問い合わせ】
株式会社RingsCareは、首都圏で高齢者向けの美容ケアサービス(Rings Care®)を提供しています。
ご家族様や施設様からのご相談を、心よりお待ちしております。
介護美容実績8年、看護の知識に基づく心と身体のケア:Rings Care®