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【拳闘の寺】ご挨拶

はじめまして、山口倫太郎と申します。
アメリカ、メキシコ、タイ、ドイツで活動した元プロボクサーで現在物書き志望の男ですが、正直言ってその為の活動はあまり出来ていません。
ぶっちゃけて言わせて貰うと、このアカウント開設の目的は「小遣い稼ぎ」です。
勿論それが(例え小遣い程度であっても)難しいことなのは理解できます。それでも、僕がこの「note」で何が出来るかと言ったら、各国でトレーニングをし、強豪ボクサーたちと手合わせし、1日何時間もビデオをみて考え抜いた経験を基に学んだボクシングの技術、戦術、トレーニング方法、考え方などを紹介し、解説していくことかと思い、この『拳闘の寺』を開設しました。

さて、この『拳闘の寺』をどういった方々に読んで欲しいかというと、ボクサーやボクシングファン、格闘技ファンは勿論、ボクシングに興味は持っているが解説が何言ってるか分からず掘り下げられないので興味を持続出来ない、あるいは「ボクシングなんてただの殴り合いでしょ」という風に思っている人、それから、、、、、、まあ希望としては全員に読んで欲しいと思っています。

今後どのように記事を書いていくかですが、手本にしたいのはボクシング評論家でマッチメーカーでもあり、トレーナーやマネージャーとしても実績のあるジョー小泉氏の『ボクシングは科学だ』(1986年ベースボールマガジン社)です。
小泉氏は神戸大工学部を卒業して三菱重工業で義手の研究をしていたエンジニアで、ボクシング界には珍しいインテリと言って良いでしょう。この著作で小泉氏は、例えば「顎へのパンチはなぜ効くのか?」という課題を設け、頭の付け根・顎・脳が、それぞれ支点・力点・作用点となって働くテコの原理が働き、頭部を直接叩くよりも顎を打つ方が効率よく脳を揺らすことが出来ることを解説しています。
さすがの「科学的解説」っぷりと言えるのではないしょうか。

この『ボクシングは科学だ』を読んだ高校生当時の僕は衝撃を受けたものでした。
とはいえ、小泉氏も著作の中でこのような解説に終始しているわけではありません。
小泉氏は、タイトルに用いた「科学」という言葉の意味について「コツ」くらいに思ってもらえれば良いと書いてていたと記憶しています(僕が持っていた『ボクシングは科学だ』はジムの後輩に貸したまま25年以上返ってきていません)。

一般的に「コツ」とは物事の要点を捉えることとされています。
そこでこの『拳闘の寺』でも、「こうしたらこうなる」あるいは「こうなるのはこうしているせいだ」というように物事を思い通りに運ぶ為の「コツ」について解説し、さらにボクシングをする上で重要な「考え方」についても考察していきたいと思っています。

また『拳闘の寺』を読む上で(特に)ボクサーや指導者の方に注意して欲しいことが二つあります。

一つは、ボクシングもまた他の多くのことと同様「積み重ね」だということです。
例えば、筋肉を付けることもそうでしょう。
筋肉はウェイトトレーニングをはじめたからといってすぐに大きくなるわけではありません。トレーニングを殆どやったことがない人ならば、最初の1ヶ月程度は神経系の抑制が解放されるのみで、3ヶ月程みっちりと各部位のトレーニングを行い、必要な栄養と休息を取り、そうしてようやく「ちょっと身体つきが変わってきたかな?」という程度かと思います。
その後もさらに筋量を増し、筋肉を大きしたいのなら、知識も努力も時間も、そして多くの場合お金も必要になります。
そうして少しずつ、薄皮一枚程度を積み重ね、やがて大きな筋肉となるわけです。
ボクシングもそうです。
足の位置、バランス、姿勢、手の位置、つまり構えることを覚え、次にジャブ、前に出るステップと後ろに退くステップ、次は利き腕のストレートの練習に移行するのが一般的でしょうか。
そしてジャブもストレートも顔面にもボディーにも打てるようになったら、次はジャブとストレートを手と肘で受ける防御を覚え、、、、そうして知識や技術を一つ一つ積み重ね、さらなる技術と知識を身に付けていくことになるでしょう。
そこには、気が遠くなる程の積み重ねの作業があります。
しかしその積み重ねの作業に人生の全てを使う事は出来ないでしょうし、ボクサーのキャリアは多くの場合とても短いです。
だからこそ、知識や技術はより効率よく手に入れる必要があります。
この『拳闘の寺』は、効率よく技術や知識を手に入れる為に使って欲しいと思っています。ただし、そこで気を付けて欲しいのは、選手にはそれぞれ個人の特性があるということです。

二つ目は、選手にはそれぞれ個性があるということ。
我々外野は「○○選手は××が出来ない」と簡単に言いがちです。
しかしそれはその選手の特性によるものかも知れません。それでもその技術等を身に付けたい、あるいは身に付け流必要がある場合は、場合によっては数年単位の長期スパンで計画を立てる、その都度修正していくような粘り強い対応が必要が必要と思います。
それは選手のキャリアによっては無駄になるかもしれませんし、それが致命的な欠陥になる場合は早急に何か別の対応策を考える必要があるでしょう。

以上の二つを踏まえると、計画をもって練習、指導をすることの重要性が分かると思います。
ボクシングキャリアやその選手の特性、志向を基礎にして、それぞれに見合った「正しい積み重ね方」があるということについて考えてみて下さい。
特に、それは導入教育の段階では重要な問題となることでしょう。指導者の方には、選手の可能性を最大限に考えて導入教育を施して欲しいと思います。

今後、この『拳闘の寺』で記事を書く際には、僕自身この2点に注意していきたいと思います。

それから、以前にはエンソフというオピニオンサイトで日本プロボクシング界の業界批判を行った「ボクシングを打ち倒す者」という連載を持たせて頂いていました。拙文ですが、こちらの方も読んで頂ければ幸いです。

どうぞよろしくお願いします。

山口倫太郎


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