トーマスハーンズ【ヒットマン】スタイルの技術と構造、クロスラインコンビネーションとその効果について

第一回となる今回は『トーマスハーンズ【ヒットマン】スタイルの技術と構造』と題して、ハーンズの技術・戦術分析を行ないたいと思います。
また、ハーンズのフリッカージャブと右クロスという定番のコンビネーションブローと同様の効果を得ることができる、クロスラインコンビネーションについて、フリオセサールチャベスやヘナロエルナンデスなどメキシカンの例を用いて説明したいと思います。

トーマスハーンズと言えば“ヒットマン”のニックネームで知られ、ライバルのシュガーレイレナード、マービンハグラー、ロベルトデュランと共にファンの耳目をヘビー級から中量級に向けさせた、5階級を制覇した名王者です。

主に80年代に活躍したボクサーなので、ファンやボクサーでも比較的最近ボクシングを見るようになった方は知らない方も多いでしょう。最初にタイトルをとったのは65キロ程度のウェルター級でありながら、185センチの長身と2メートルの長いリーチを誇ります。
彼は出身地のアメリカ、ミシガン州デトロイトにちなみ、モーターシティーコブラとも呼ばれたそうです。
長身痩躯にギラリと光る鋭い目付きで獲物を見据え、ダラリと下げた左手から繰り出されるフリッカージャブを放ちながら距離をコントロールし、タイミングを見つけると間髪いれず打ち下ろすような鋭い右を放ちます。このパンチをまともに食らえば、相手は倒れ込んでピクリともしません。
まさに猛毒の牙を持つコブラさながらです。

ジェームズシュラ―戦


知らない方には、漫画「はじめの一歩」の間柴了のモデルになったボクサーと言った方が良いかもしれません。また「はじめの一歩」だけではなく、僕の知る限りほぼあらゆるボクシング漫画で登場人物のモデルになっています。
ハーンズがボクシングファンに如何に強烈な印象を残したのかが分かりますね。

圧倒的な攻撃力を誇るハーンズですが、そのパンチテクニックの全体像についていうとパンチの≪角度≫に非常に気を配っていたボクサーと言う事が出来るかと思います。
今回は、主にハーンズのフリッカージャブとオーバーハンドライトと呼ばれるフック気味に打ちおろす右ストレートについて、それらが相手の視野の外、或いは正確な認識が難しい視野の限界ギリギリを狙って打ち込まれていた事を解説します。
今回注目するのは以下の3点です。

①フリッカージャブ、オーバーハンドライト、左アッパーのボディーブローといった個々の技術について。
②①から、そしてハーンズのジャブ、右ストレートといったコンビネーションブローが、そのフレームの大きさを利用して対戦相手の視角野に揺さぶりをかける中・長距クロスラインコンビネーションとして機能している点について。
③クロスラインコンビネーションの実践について。

③については、ハーンズではなく、フリオセサールチャベス、ヘナロエルナンデスのコンビネーションブローから解説します。ハーンズのスタイルが体格に依存したものであることは一目瞭然ですが、ハーンズのような体格ではなくとも同様の効果を得ることは可能であることを解説します。

以降有料です。興味のある方は是非ご一読を。

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