2020.07.19 FC町田ゼルビア vs 水戸ホーリーホック
再開からメンバーを固定したツケを払わされた試合となりました。
再開に向けた日程が発表された時点で過密日程だということはわかっていました。そのため、メンバーを固定し続けた監督や中3日で公式戦があるのにその間にTMを組んだ強化部などに敗戦の責任の所在を探してしまうところですが、このレビューではそういうことは置いておいて、「なぜ負けたのか」についてピッチ上の事象を通じて言及できればなと思います。
スタメン
町田
4-4-2
前節ジョンが負傷したため、平戸が左SH、裕希さんと晴山君が2トップを形成。晴山君はU-19代表候補合宿帰り。
水戸
4-4-2
前節から6人を変更
ゼルビアはなぜ何もできなかったのか:攻撃編
これは試合を通して言えることなのですが、水戸はゼルビアをよく研究してきたなと思いました。
では水戸はどのような対策をしてきたのか。
まずは攻撃が上手くいかなかった理由を読み解ければと思います。
この試合で攻撃が上手くいかなかった理由はビルドアップを妨害されたことに尽きると思います。
普段のゼルビアであれば、最終ラインからSBやCH(SBも必ずCHを経由)を経由してSHやFWに繋いでいくといった感じで、必ずCHの海舟や髙江を経由してボールを前に進めていました。
ですが水戸はこのCH2人をビルドアップに関わらせないことを徹底していました。どこにボールが入っても、CHへのパスコースを遮断し、ビルドアップを窒息させていました。
具体的に見ていくと、水本・深津のどちらかがボールを持っているときはFWの2人がCHを挟むような形で、もしパスが入ったとしても自由にさせない距離に必ず立ち、中央へのパスコースを遮断していました。(下図参照)
CHにパスを出せない。じゃあサイドから前に行こう。といった感じでCBはSBにパスを入れます。SBにボールが入ると相手SHが前を向かせないようなプレスに来ます。でも中央の髙江や海舟が空くよね。と思い中央を向くのですが、相手CHが素早く中央へのパスコースを遮断してきます。結局CBにボールを戻すしかなく、ビルドアップはやり直しになります。(下図参照)
ただし、SHが内側に絞って、ハーフスペースで受けた時はそこそこ進めることが出来ていたので、SHのハーフスペース受けをもっと再現性高くできればよかったのかなと思います。
その際、SBからCBへのやり直しのパスが少しズレたところを水戸のFWは見逃しません。パスがズレると分かるや否やすぐにプレスに来て、ボールを奪おうとしてきます。プレスへの耐性のないゼルビアのCBは前線へ大きくボールを蹴ることで、場面をリセットするとともに、自らボールを手放してしまいました。
でもポポヴィッチ監督も無策ではなく、プレッシングを回避する手段として、ハーフタイムにステファンとマソビッチを投入します。ですが、後半開始早々のステファンの負傷によって、このプランは崩壊してしまいます。
安藤を代わりに入れるわけですが、安藤を入れることで結局前半と変わらないような内容になってしましました。
全体的には水戸の選手の出足の速さが目立つような感じでした。ゼルビアのビルドアップの仕組み、どの選手がプレス耐性がないのかをよく理解した水戸のプレッシングとブロック守備でした。
ゼルビアはなぜ何もできなかったのか:守備編
高い位置でボールを奪ってから縦に速く攻める。これが今季のゼルビアの生命線ですが、高い位置でボールを奪うことができなかった。それはなぜか。
また水戸はゼルビアのお気持ちプレスをよく理解なさっていて、高齢CBの守備範囲が狭いことも分かっているなという感じでした。
これも細かく見ていきますが、水戸がボールを前に進めるのに2パターン用意したことがゼルビアにとっては痛かったです。
1つ目は丁寧に繋ぐパターン。これもゼルビアの同数プレスに対して上手くかわす策が仕込まれていました。それは同数の最終ラインに対し、出口は必ず数的優位にするという形です。
最終ラインが3人なら出口は4or5人。4人なら出口は3or4人といったように、ゼルビアの6人のプレス隊に対して、ビルドアップに最大8人を割くことで、ゼルビアの高い位置で奪ってからのカウンターを発動させないように、同数プレスを無効化させていました。(下図参照)
そして2パターン目がシンプルにロングボールで前で競らせて、セカンドボールを回収するパターン。完全に同数プレスを無効化するとともに、出足が早いCHによるセカンドボールの回収など上手く回っていました。
セカンドボールを上手く回収することで、疑似カウンターを創り出してネガトラに欠陥のあるゼルビアを上手く突いてきた感じでした。ロングボールからの流れではありませんが、ネガトラの欠陥を突いてきたというのは、まさに1・2失点目がそれに当たると思います。
また、ロングボールを送ることでの水戸へのメリットはネガトラにもありました。ロングボールを処理するのは主にCBで、同時にこのCBが攻撃の始まりになるわけです。このCBに対してFWがプレッシャーをかけに行くことで、自由にボールを繋がせないというのを徹底していました。
さらにさっきも述べたように前進に2パターン用意したことで、ゼルビアの前線の選手は奪いに行きたい。だけど後ろの選手はロングボールも警戒しなければならない。とチームの中で意思統一が出来ず、全体的に間延びしてしまい、水戸に自由にパスを受けさせるスペースを与えてしまいました。
これがゼルビアの攻撃が上手く回らなくなった原因でもあります。いい守備からの攻撃というサイクルが機能していたのは水戸で、ゼルビアのやりたいことを完全にやりたいことを水戸にやられてしまった試合でした。
スモールチームであることの悩み
ここ2試合セットプレーからの失点が続いていて、新潟の2点目のマイケル、水戸の3点目のンドカが決めたシーン。共通点がありますが皆さんわかりますか?
答えはどちらも海舟がマークしていたということです。別に海舟を責めるつもりはありません。なぜならこれはチームとしての問題だからです。
新潟のマイケルが185cm、水戸のンドカが181cmで佐野海舟が176cmとミスマッチことは明らかです。それでも海舟がマークに付かざるを得ないのです。
GKを除いたスタメンの平均身長で比較するとゼルビアは175cm。一方で水戸は177.7cm。180cm台の選手はゼルビアが2人で水戸は4人です。失点時は187cmのマソビッチが出ていたことを考慮しても3人です。これでチームで3番目に背の高い海舟が180cm台の相手選手へマークを付かざるを得ないことは明らかになりました。
なかなか厳しい状況です。184cmのジョンが欠場中ので、ただセットプレーの守備のためだけにスタートからマソビッチを出すと、プレスの強度が落ちたりとトレードオフなので難しいです。
皆さんもスタメン発表時に身長も気にしてみると気づきがあって面白いかもしれませんよ。
試合結果
水戸 4ー0 町田
得点者:10’山口一真
27’山谷侑士
63’ンドカ ボニフェイス
93’松崎快
さいごに
これからのシーズンを戦い抜くためのツケを払ったというような試合になりましたね。ちょっと怖いのは水戸に対町田の対策を見つけられてしまった感があるので、特に栃木のような塩試合マン相手に崩せるか、栃木のカウンターに耐えられるか気になります。
それにしても小田のボールウォッチャー癖、スライディング癖と水本の年齢による劣化からなのか、1対1の時に間合いを詰められていないのが気になります。俊敏性で衰えが来ていることを自覚していて、抜かれるのが怖いと思うとああいう対応になりがちなのですが、2失点に絡んでしまっているので、対応を改善してほしいです。
今節もお読みいただきありがとうございました。