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試食販売員に花を


楽しかった仕事は突然消えた。

コロナが遠い中東の病気だと思われていたころ、私はスーパーで試食販売員の派遣アルバイトをしていた。ウインナーやお茶を少しずつ用意し、きてくれたお客様に渡す試食販売員の仕事はほとんど派遣会社から派遣されたアルバイトやパートの人が受け持っている(注1)。あのにこやかなおばちゃんたちは、ほとんど日給で雇われたパートさんである。そんな中で私は新人なりに天職だと思って働いていた。忙しいスーパーで商品の良い所や調理法をお客様と話すのはとても楽しかった。飛ぶように売れるのが嬉しかった。いまは、そんな仕事はない。

2020年4月、1度目の緊急事態宣言発令によってイ○ンが全国的に試食販売を中止した。イ○ンのようなショッピングモールでの試食販売は、一気に消えた。イ○ンが試食販売を中止したことで、メーカーさんも後に続いたのだろう、地方スーパーの現場も間を置かずに消えていった。最後まで残ったのは山の中の道の駅だった。

私の登録していた会社の試食販売員は基本的に試食販売専門の派遣だった。試食販売以外の仕事はほぼ紹介されない(注2)。今まで試食販売を専門にしてきた私達は、1度目の緊急事態宣言で一気に仕事がなくなった。大元の派遣会社も業務を縮小し、今はサイトの更新が止まっている。

もともと日給制の仕事とはいえ、仕事がなくなったことで今まで通りの生活はゆるやかにおびやかされた。私は試食販売の仕事がなくなった後、安定したアルバイトを探すことに追われた。緊急事態宣言で経営が厳しい中、飲食店の面接を10件ほど受け、なんとかファミレスに拾ってもらい暮らした。面接を受けている間は単発バイトで乗り切った。単発バイトには、仕事がなくなった人がたくさんいた。私はいつか試食販売員に戻れると思っていたが、会社が音沙汰ない今、戻れそうにない。今でもイ○ンの店内放送では「新型コロナウイルス拡大防止の取り組みとして~試食販売の中止、~」と流れている。

新型コロナ騒ぎの渦中で好きだった試食販売の仕事は消えた。試食販売以外にも、派遣切りされたり自営業が立ち行かなくなった人をたくさん見た。特にどうこうしてくれという気持ちはないですが、これを読んでくれた人に「確実にコロナのせいで仕事は消えている」ということを伝えたかったです。読んでくれてありがとうございました。試食販売員がまた花を持てますように。


注1)大きめのスーパーではスーパーの職員さんも試食販売を行っている

注2)週4フルタイムで精肉売り場といった仕事はコロナ禍以前にもときたまあった 今はない

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