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「室井慎次 敗れざる者/生き続ける者」が厳しかったという話

「室井慎次 敗れざる者/生き続ける者」、見ました。

いや~~~~~~~~~厳しかった


まずはいいところ

いや、良かったところもあるんですよ? 室井さんを始め、踊るシリーズに登場していたキャラクター達が相応に年を取って顔を見せるんですが、その説得力がなかなか良い。

あらすじ:踊る大捜査線公式サイトより https://odoru.com/

まずは劇場版第一作の犯人、小泉今日子演じる日向真奈美の娘、日向杏。
「これアイツの娘です」と言われて「そうかも」と思わせる妖しい目力がスゴイ。まぁこんな褒められ方しても役者の子は嬉しいか分かりませんが……
それでも、この子を見つけて連れてくれるキャスティング力はさすが大手テレビ局という感じはあります。

そして新城さん。室井さんに調査協力をお願いしに来るんですが、早期退職した室井さんが、本来引退前の華として収まるはずだった秋田県本部長に玉突き式に放り込まれて恨み骨髄という感じ。一旦は協力を拒否した室井さんに(不当)逮捕をチラつかせてでも協力させようとする態度は、仲間ではあるけど仲良しではない、という感じで解釈一致。

もう一つ、これはサプライズゲストだと思ったのが、湾岸署の立ち番をしていて室井さんと「本庁できりたんぽ鍋でもつっつぐか」と約束をした彼!
僕の相貌認識能力がショボいせいもあると思うのですが、留置所の看守として登場し、顔見知りらしいけど誰だ…?と思っていたら「まだきりたんぽ鍋は食べてなかったな」というセリフで全てが繋がって息を呑みました。

おや…?

とまぁ、キャラ解釈としては悪くなかった。
真矢ミキ、じゃねえや、沖田さんもちょくちょく出てくるし、青島やすみれさんのその後もチラッと語られたりして、オールスターモノとしてはそこそこの出来だったと思います。

室井さんとの交流を経て加害者/被害者家族の子供が毒親の洗脳から抜けたり健やかに成長していくのも、そんなに簡単にいくかなぁ…?と思わないでもないですが、まぁこの映画を見に来ている人のほとんどは多かれ少なかれ室井慎次という男の言葉、生き様に心を動かされたことがあるから見に来ているわけで、ケチをつけるのは野暮というものです。
高校生くらいのときに見たら僕もケッってなってたかもですが、30超えて一生独身も確定しつつある状況で、独身男性が養子を取って幸せになっている姿を見せられるのは、どちらかというとアニメの最終回前、敵の手によって何不自由ない幸せな幻覚を見せられて違和感を感じながらも抜け出す気を起こせない、みたいな奇妙な感覚がありました。

なので個別の問題が解決されていく過程についていちいちケチつけるつもりはないのですが、なんかこう……それぞれが全然関連してないんですよね。

たとえば誰もが認める傑作「踊る大捜査線 THE MOVIE2」なんかだと、大筋に役員連続殺人事件があって、青島とすみれさんがそれぞれ吸血鬼婦女暴行犯と家族のスリグループを追っている。署長の不倫事件なんかもある。
これら「小さな」事件にかかずらって本筋の事件の操作が阻まれたりするのが「踊る」シリーズ定番のネタです。
が、それが後半、スリグループの子供が殺人事件の犯人に人質に取られ、犯人の隠れ家を探す流れで署長の不倫相手がバレることで小ネタが本筋に合流していく。本筋が小ネタの答えになる。劇場版ならではの面白さです。
一方で吸血鬼みたいに、アッサリ捕まっちゃうヤツもいる。その「ズラし」も面白い(これも「それで今回魚住係長は健康診断じゃなくて献血の話してたのか…」というネタがオチるようになってるんですが)。

それが今回の二部作には全くと言っていいほど無かった! それぞれのネタはエモいんだけど、全く絡み合わない!
もっと養子同士がケンカとかすると思うじゃないですか。もっと地元の人との揉め事が本筋に絡んでくると思うじゃないですか。

全ッ然ないの。

それぞれは確かに良い話なんだけど、フワッと個別に処理されて終わってしまう。

そしてレインボーブリッジ封鎖(出来なかったが…)事件の犯人仲間割れ殺人事件も、室井さんの証言と犯人への説得?によって解決、室井さんと新城さんが語り合う。
そこで新城さんが、室井さんの目指していた現場と上層部のスムーズな連携を、まずは秋田県警で実現してみせると言う。成功すれば全国へ発信し、いずれは警視庁にも……
そう!室井さんの志は皆の心のなかに生き続けている!「室井慎次 生き続ける者」完!

ともならない。だいたい、今作でそのプランが検証されていたような描写もないし。

そんなワケで、二作目の体感一時間過ぎたあたりで、いろんな問題が解決はしてるっぽいんだけど、「えっ、結局この話、どこにオチるの?」という不安がジワジワと心を支配していきます。

そして危険な領域へと突入する…

さて大オチは室井さんの小さい方の養子、リクくんの本当の親(犯罪者)が出所し、子供を返す返さないの話になるところから。
入所前はリクくんに暴力を振るっていたクズ親のようですが、反省しているようだし、本当の親に返すのがよかろう……ということで返す流れになるのですが、「子供居たら生活保護っていくらくらい貰えるんですが?」などと反省していないっぽい。
案の定リクくんは暴力を振るわれ、引き取られて一晩で室井さんの家に逃げ帰ってきます。

RTAか?

だいたいその親の出所が匂わされたのが第一作ラストなので、そこから二時間近く引っ張って、連れて行かれてから特にドラマもなしにボロボロのリクくんが玄関前に倒れてるのスピード感むちゃくちゃすぎるだろ。

さてクズ親、当然のようにリクくんを取り返しに来ます。玄関先にあったナタを持って大暴れ!というところに養子の一人が猟銃をぶっ放しクズ親は戦意喪失。
しかしその銃声に驚いたのか、室井家の愛犬、シンペイが吹雪の中行方不明になってしまう……
「風呂を沸かしておいてくれ」と言い残して犬を探しに行く室井さん。雪をかき分け、吹雪の中に消えていきます。うんうん、大切な家族だもんね。

しかし事態は急変。本格的な捜索隊が室井家の前に詰めかける!
えっ、犬のためにこれだけの捜索隊を?!室井さんの人徳だなぁ…と思っていたら、どうも室井さんが二重遭難したらしい……

えっ?!秋田犬のために?!

いや、僕は犬大好きです。犬が死ぬ映画はあまり見たくありません。ぜひとも無事で居てほしい。

でも室井さんは三人の養子を抱える身ですよ?!
流石に行方不明の犬と比べ物にならなくないですか?!

そんでもって、遭難したのは秋田犬です。

秋田犬なんだから秋田の雪山でも当分は死にゃしねえよ!!!!!!!

チワワじゃないんだぞ。

秋田犬会館さんのアカウントがおすすめです。もこもこかわいいね!これなら雪山でも多少は安心だ。

さて。
無線が飛び交い、室井さんの発見報告が。
「行方不明の男性を発見! 心肺停止しています! しかし…秋田犬が離れません!秋田犬が…離れませぇん!」

ちょっとギャグっぽいセリフ。あ、なぁんだ。これはMOVIE1からの死ぬ死ぬネタだな…と思っていたら喪章をつけた新城さんが室井さんの家に……

本当に死んだんだ……

ちなみになんか秋田犬は勝手に帰ってきてました。

かくして室井慎次というキャラクターは死に、もう我々の前に姿を表すことはなくなったわけです。

いやいいんですよ。こっからまた続編なんて野暮だから。
死にネタは安易っちゃ安易ですが、ここまで付き合った室井さんが死ぬようなことになれば誰もが涙を禁じ得ない。長年のシリーズの特権とも言えるでしょう。

だからって策もなく秋田犬を探すために吹雪の山の中に勝手に突っ込んでいって死ぬんですか???!?!?!?!?!!

俺達が憧れ続けた室井慎次という男が???!!?


忍耐力の限界へ

マジか……と呆然となりながら後日談的なスタッフロールを眺め、Cパート。

なんとね。


青島が、織田裕二が出てくるんですよ!!!!!!!

お前、今更そんなので俺が喜ぶと思うなよ!!!!!!!!!!


ファンサービスとしてはかなり良い、室井さんが馬鹿みたいな理由で死ぬことを以外を除いては…… 最悪の形での証明です。
マジでバッグをスクリーンに投げつけなかった俺を褒めて欲しい。

そういう映画でした。以上。

なんか続ける気らしいですけど、関係者は速やかに筆を折ってください。

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