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成田空港での体験談(2021年8月)

*以下、太文字がファクト系の重要な?情報。他は全部、長めの心の声です。

2021年8月5日17:10、成田についた飛行機の中でシートベルトサインが消えた。機内はガラガラなので皆ゆったり準備している様子だ。アナウンスが流れてきて、まずオリンピック関係者が降りて、その後にオリンピック関係者じゃない人たちが、16人ずつ機内から出て良いとのこと。搭乗者は合計で52人らしいからすぐに降りることはできた。(ちなみに行きのフライトは20人だった。これで飛行機飛ばすって。。飛ばさないわけにいかないのはわかるんだけど。。)

成田空港内に入ると、外国人(おそらくオリンピック関係者系)が小さな集団になって空港のいろんなところで待たされている。空港独特のながーい歩く歩道の両サイドに、番号の貼られた簡易な椅子が置かれている。前を歩いていた人たちが座り始めたので、自分も椅子の一つに座った。みんなキョロキョロしながらとりあえず座る。そのまま30分が経過。待ち時間の途中で、待っていた人の中で日本人らしき男性Aが日本語で女性スタッフと話している。
A 「どれくらい待ちますか?」
スタッフ(恭しく傅いて)「今日はスムーズなので早いと思います…3・4時間かかることもあるので、今日はスムーズだと思います…」
A「一番早くてどれくらいですか?
スタッフ「2時間くらいかと
他の人「2時間ですか?」
A「前に来た時は1時間半くらいでしたからきっとすぐ」
スタッフ「すみません、1時間は難しいと思います
以上、
全て日本語でなされた会話のせいか、他の乗客達はそれを不安そうに見ている。近くにいた外国人家族に通訳しておいた。お節介かもしれないし、なんとなく出しゃばるようでちょっと恥ずかしい。けど、外国に行ったときに現地の言葉がわからなかったり聞き取りが不安だったりして、困ってきた経験が多々ある。そういう時助けてくれたお節介な現地の人がどれだけありがたかったか。自分の母国語の国では困っている人の助けになりたい。

スタッフは忙しいような忙しくないような不思議な動きをして行ったり来たりしている。私がスタッフの女性に「これは何を待っているんですか?」と聞くと、私の前にも恭しく傅いて「書類確認です」とのこと。そのためにこんな待つの? 待っている間にも書類を確認される。でも全員じゃない。なんでランダム…?そのうちの一人の外国人の男性が(多分アメリカ軍の海兵さん)持参した書類にPCRテストの日にちの記載はあるが、時間が書いていないことが判明したらしく、スタッフがわらわら来て何かやっている。その男性は日本語がわからない様子で、本人はボンヤリしているだけで、スタッフだけがバタバタしている。その男性が、隣の席のおそらく他人の男性に英語で「なにが起こってるのかわからないけど、問題ないよ。自分はワクチン2回うっているからね。問題ない。すぐに落ち着くと思う」と言った。

また移動するように言われて行った先には同じように椅子がある。またなんの説明もなく座らされる。移動中に看板があり、「検査前30分は飲食しないでください」と書いてあった。ちょっとイラっときた。もう飛行機を降りてからゆうに30分は経ってる。

歩く歩道のサイドで待たされる我々の真ん中を、外国人の集団がズンズン歩いていった。さっきの男性Aの近くにいた男性Bがスタッフに「これ私たちが待たされてるのってオリンピック関係者が優先されているからですか?」と聞いた。スタッフが「申し訳ございません。皆様にお待ちいただいております」と繰り返している。

さっきの外国人の集団がオリンピック関係者なのかについては定かではないが、待っている側は全員そういう印象を受けているだろう。心象が悪い。なんに対する心象だろう。オリンピック?日本?(ヨーロッパにいた時、現地の人たちとオリンピックの話になると、「日本はなんでオリンピックを辞める努力をしないんだ?安全じゃなさろうなのに、選手たくさん呼び寄せて、迷惑わよ」みたいに言われるとことがあった。私は、日本が世界にオリンピックを押し付けられた感覚があったからすごくムッといたけれど、彼らの方が怒る理由もだんだんわかってきた。これについてはまた違うところで書こうと思う。)

ひたすら座って検査を待たされる我々の列。列の後ろの方で日本語で怒っている声が聞こえてきた。「陰性証明書持ってるんですよ?」とか「これで徹底してるつもりならなんで…」とか聞こえてくる。私がその様子を見ていると、真後ろの外国人男性を目があった。英語で「なにか後ろで問題が起きてるの?」と聞かれた。「いや、たぶん彼女は日本の対応に苦情を言ってるっぽい。待っていれば大丈夫だよ。」と伝えた。

前の席の方の人たちがまた立ってどこかに歩いていく。続いていくとついに、検査場っぽいところに着いた。書類確認のブースが並んでいる。私は比較的列の前の方に並んでいた。後ろを振り返ると、一番後ろに赤ちゃんと女の子を連れた女性が憔悴した顔で赤ちゃんをおぶって立っていた。その女性に、順番を交換すると申し出た。女性に感謝されながら後ろに並んだ。すると列の他の人たちから、何度も私に前に行くようにと言ってくれた。でも断った。ああいうのをご好意に甘えた方が良いのかもな…。でも彼らの大半が快く入れてくれたとしても、不快に思う人も中にはいるだろう。それに2人の子連れのお母さんと変わった分、私の後に並んだ人たちはプラス2人分は待たされているのだし…。

書類確認が終わると、またどこかへ向かえと指示された。「どこへ?」と聞くと「矢印に沿ってるいてください」とのこと。しばらく歩く。検査会場に案内される。スタッフの方に「過去30分以内に飲食はされましたか?」と聞かれる。「いや、30分以上待ってるんで」と苦笑して答えた。聞いた人は「ですよねー」みたいなことを言いながら私から目を逸らした。個別のブースに行って、唾液を指定の容器に入れるように言われる。子供連れの男性が子供に唾液をいれるように指示しているが子供がなかなかうまくできないみたいでどんどん他の人たちに追い越されている。さっき、子連れの親子に順番を譲ったが、きっとこういうプロセスをやってる間に、彼らはどんどんまた遅れて、順番を譲った意味がなくなってくのかも…と思った。

検査会場から次の会場に移動する。空港って広いなぁ。移動中に謎の大空間でたくさんの人が一定間隔で椅子に座っているのが見えた。検査の結果を待っているのか?でもなんかこう…すごく皆イラついて見えるし、不自然なくらい荷物を持っていない。それに全員外国人らしき男性ってどういうこと?普通女性とか日本人とか子供とか混ざってるよね?もしかして軍人?不思議に思いながら横目で見つつ次の場所へ向かった。

個別のブースに案内されて、成田から宿までの交通手段の確認、バスやタクシーや電車がダメなことの説明、入国してから14日間公共交通機関に乗ることの禁止、同期間は自主隔離しろとかの注意などを受ける。アプリのインストールの確認、Bluetoothがオンかどうかなど細かく設定してくれる。私はいわれるままにスマホを操作する。いろいろ説明してくれているが、早いし、何言ってんのか把握しにくい。把握しにくい理由は、私が機械が得意じゃないというのもあるが、指示をしてくれる人の多くが日本語が第一言語じゃない人たちで、日本語も英語も独特の発音だからかなり説明がわかりにくいのだ。例えばBluetoothの発音が独特で、こんなの年配の人ぜったいわかんないだろうな…いや、Bluetooth自体がわからないか…。多分最後にアプリの設定を変えないでくださいと言われた。「私の携帯電話けっこうもう寿命で電源が切れるんで心配なんですが…」と言ったが、意味が伝わらなかったらしく、次のブースで返してください、と言われながら充電器を渡された。

次の何かのブースに行くと、また日本語が第一言語じゃないスタッフの女性が、私が渡した書類を見ながら、「緊急連絡先は?」と聞いてきた。あれ?書類に事前に緊急連絡先記入しなかったっけ?と思ったが、「うーん、緊急連絡先ないんですけど(実家は電話回線やめるところで、両親は携帯に出ないし、友達の番号を書くのは気が引ける)」と曖昧に答えたら、「かかってくることはないから、どこでもいい」と言われて、「じゃあ実家ですかね(電話かかんないけど、かかってこないならいいよね。)」と答えた。しかしその後、自宅の番号は聞かれなかった。不思議に思ってブースを後にしたが、書類を返してもらってから気がついた。私は緊急連絡先の番号はやっぱり記入していて、あのスタッフの女性は、この番号がどこの番号かを確認していたのだ。記入してあるの実家じゃないんだけど…うーん、、でもどうせ「かかってくることはない」ならいいか。でもだったら記入する意味と、この待ち時間の意味もないよね…。人間にとって一番苦しいことはハードな労働よりも、無意味なことをさせられることだという話を、心理学かなにかの授業で聞いたことがある。それな、と思いながら、スタッフの人に充電器を返した。

次の会場に行く間の道に、さっきのアメリカ軍の海兵さんが一人で立たされていた。彼は唖然としたような顔をしていて、すれ違いざまに独り言でthis is bs, I don’t believe thisなどと独りごちるのが聞こえた。スタッフが彼をどこかに連れていく。…まさか、え、まさかだよね?いや、軍隊の人だし、きっと拘束時間が伸びるだけだろう。まさか帰国させられるなんてことはないだろう。きっと…。不思議に思いながら横目で見つつ次の場所へ向かった。

次は健康カードの確認(いや、毎回同じセットになった書類の束を見せているから、ここまでのステップで何が確認されて、これからまだ何を確認されるのかわからない)。これが終わると、次は座席番号をもらう列に並ぶ。座席でテスト結果がくるまで待てとのこと。看板に「より正確な検査結果を得るため、一度のテストで確認が難しかった人は、再度検査をしていただきますのでご協力ください。It may take 2 or more hours(さらに2時間以上の時間がかかる場合があります)」などと書いてある。不穏。…水が飲みたい。

たぶん20~30分待った時点で、音声アナウンスで自分の番号を呼ばれて違う階に行った。行った先で、「陰性でした」と言われてちょっと特別な感じの紙の陰性証明書を渡された。皆、白けた様子で陰性証明書を受け取っていたが、近くにいた外国人の男の子が「陰性って何?」と親に聞いて、「日本に入れるってこと」と親が答えて、子供が「陰性やったー!」と言った。その男の子のティーンエイジャーくらいのお姉ちゃんらしき女の子が「陰性にきまってんじゃん、バカじゃないの」と弟に言った。親は黙っていた。

誘導スタッフに今度はバスに乗せられる。この時、「え??」と思ったのは、私が順番を譲ったお母さんと子供たちがバスに乗れなかったことだ。まだバスぜんぜん人が座れるのに。窓の外を見ている乗客の多くが同情した様子で親子を見ている。たぶんこの中にはここが英語圏だったら、「待ってやれよ」と運転手に言う人がいただろう。私は日本語話者だから、運転手に言おうかと思ったが、躊躇した。だって絶対に親子がこっちに向かってきているのは運転手からも誘導スタッフからも見えている。コロナ対策で人数制限があるのかもしれない?もしかしたら2人の子供連れで赤ちゃん泣いてて大変だからショートカットでいける車とかに乗せてくれるのかもしれない?不思議に思いながら横目で見つつ発車するバスに揺られた。バスが出発するのを見て、急ぎ足だったお母さんが止まったのが見えた。聞こえないけど赤ちゃんが泣いているのは見えた。

飛行機を降りてからずっと、気持ち悪い不思議と疑問の感覚が続いている。何度も「この人たちは待たされているけれど、きっとちょっとの間だろう」、「なんかあの人、個別に連れて行かれているけれど、きっと他に検査が必要なんだろう、まさか入国拒否じゃないだろう」、「あの親子には他のオプションが用意されているんだろう」とかポジティブな想像ばかりしている。なんか第二次世界大戦の強制収容所の話を思い出す。「まさかそこまで悪いことはしないだろう」と思っている間に恐ろしいことが起きているって話。

バスが出ると外は真っ暗だった。空港内をぐるぐるバスでどこかに連れていかれる。これで出られるのだろうか。着いた建物に入ってまた矢印に誘導されて歩いていく。途中でエスカレーターがあって、そのエスカレーターに沿った壁に大きなマリオのイラストがあって「ようこそ!!Welcome!!」と書いてある。思わず小さく失笑した瞬間、隣の他人も同じタイミングで笑った。目があって少し笑った。なんか妙な連帯感。エスカレータで下がっていくと、壁に描かれたピーチ姫とかクッパ大魔王とかがいろんな言語で「ようこそ!」と言っている。ニンテンドーもこんな瞬間に見られてるって知ったら、ここにマリオとか飾らないんじゃないかな。。

ついに入国のスタンプを押されるところまで来た。記念に押してもらった。そしてついに荷物のあるベルトコンベアまで来た。荷物は当然ながら全部もう到着していて整列させられていた。それを持って出ていく。

出口を出ると、日本人に迎えられているっぽい外国人の人が大きなため息を吐きながら喋っているのが聞こえた。「待たせたね…。まさか3時間以上かかるとは思わなかったんだ」*2021年6月から帰国後3日間のホテル待機は無くなったので、普通に家には帰れる。

成田での拘束時間中の3時間半ほどの間、ずっと誰にも突っ込めなかったけど(だってこんな末端でバタバタ働かされている人たちに言っても意味がない。)最後に書きたい。どうして、PCR検査をしていない人がたくさんいて、ワクチン摂取も進んでいない日本において、PCR検査で陰性が証明されている我々(海外から日本に飛行機で入る側)の方が、公共機関にのっちゃダメで、14日間自主隔離しなきゃなんだよ!?どう考えても我々の方がコロナじゃないだろ!?あと、入国時にダブル検査すること自体は否定はしないよ。でもヨーロッパではドライブスルー的にささっとて嘘T受けて結果ももらえるのに慣れている人たちにとって、これに3時間以上もかかるって、、海外から来た人たちの日本の印象が悪すぎるよ。あと子供がいる乗客への配慮なんとかするべきだよ。このシステム考えた人たちの中に子供の世話の経験者とか想像力がある人がいなかったんだろうな。

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