常昼の島の天使 ⑨

私は絵筆を握っている
やまなしの前で魔法をかけてあげるために

絵筆を握って考える
いっそのこと島全体を海にしてしまおうか
ジャングルを跳ねるのは楽しかったけれど
固い大地を漂うことは出来ない
そうよ 私は森の女じゃないのよ

じゃぁ 私は海の女だったかしら
ぷかぷか海を漂ってきたけれど
私は海に沈もうとはしなかった
海にとって 私は異物で
ぷかぷかずっと浮いていた

自由でひとりで楽しくはあったわね
どこかで停滞するなんて真っ平
漂流するのが性に合ってる

だけど私の心には愛があって
寂しい時もあるし 誰かに尽くしたい時もある

生きるということは簡単じゃないのよ
結局私は海の女ではないし
やまなしの居場所は海ではない

クラムボンがやまなしを
海から拾って私にくれたのは 
やまなしを陸に返すためだったのかしら

あの時海にいたやまなしは 
私の身体と一つになった
常昼のジャングルの中 
やまなしの為の魔法を考える

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