西遊記の記憶
そういえばいつから本が好きだったんだっけ。
そんなことを考えつつ音楽を聴いていた。
ランダム再生で流れてきたのはMONKEY MAJIK
のAround The Worldである。
昔SMAPの香取慎吾が主演で西遊記のドラマをやっていたが、その時の主題歌がこれ。
https://youtu.be/1RnBDQJyQdI
それで思い出したのだけれど、どうも僕の読書に対する情熱のルーツは小学校の時に見た西遊記のドラマにあるようだ。
香取くんのドラマにハマっていた当時の僕は、最終回を迎えて、深刻な西遊記ロスを経験した。そんな僕が書籍版の西遊記を読み始めたのは極めて自然なことだったのだろう。見終わったアニメの原作漫画に手を出すような感覚である。
都合のいいことに西遊記の本は我が家の書棚にも含まれていた。
『少年少女世界の文学』という講談社から出版されている文学全集の中に西遊記が収録されていたのだ。
この全集は何でも私が生まれた時に両親が揃えてくれたのだという。自分で本を手に取る機会を用意することで、強制せずとも自発的に本を読む人間に育てばよいという教育方針なのであった。
もっとも、この方針は一度失敗している。小学校1年生の時に全集の中のピノキオを読もうとしたのだが、結局、分厚く挿絵の少ない本を前にして無事挫折を経験したのである。
しかし、今回はページをめくる手が止まらなかった。その日のうちに西遊記を読み終え、勢い余って全集に含まれていた三国志や水滸伝まで読破してしまったのには我ながら驚いた。
とまれ、当時のマイブームはやはり西遊記であった。家の本では飽きたらず、図書館に行っては西遊記と名のつくの本を片っ端から借りて読み倒して行った。
しまいには祖母が読んでいた毎日新聞の小説欄に西遊記が連載されていることを知り、祖母にせがんで切り抜きを作ってもらった。それくらい好きだったのだ。ちなみにこの新聞版の西遊記は書籍として出版されている。僕の知っている西遊記の中で1番美しい西遊記だと思うので是非御一読いただきたいところだ。作者は平岩弓枝さんである。
小中を卒業し、高校に入ってからも、西遊記は好きだった。高校時代の西遊記の記憶といえば何と言っても中島敦の『悟浄出世』と『悟浄歎異』。主人公は元捲簾大将にして今は流砂河の妖怪、悩める哲学者沙悟浄だ。これは短編なのですぐ読める。気になる方は青空文庫を探せばすぐ見つかるはずだ。
そして、大人になった今でも西遊記は僕の人生に立ち現れてくるのだからこれはもはや運命なのかもしれない。僕は仏教が好きなのだが、たまたま唯識三十頌という仏教の唯識思想を要約した偈頌の解説書を読んでいた時に衝撃の事実を知った。唯識三十頌を漢訳した人物、彼こそが西遊記の主人公 玄奘三蔵に他ならないのだと。
そんな訳で僕の人生の中では香取くんと読書と唯識思想が西遊記によって繋がっているというよく分からないことになっている。結果的に唯識思想に出会ってるのだから1種の仏縁なのだろう。
また今度唯識思想についてのnoteを書こうと思いつつ、今回はここまで。
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