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夕暮れ時の透明人間

もうすぐ終わってしまう留学を、時々「夢なのかもしれない」と本気で思う。もしくは、今こうやって「留学」という形で区切られているから一層強く感じるだけで、実際は、人生最後の日には「一生」丸ごと夢みたいに感じるのかな。それとも、さすがに八十年は、長いのかしら。

———という前置き。

以下、授業へ向かう十分くらいの道のりで書いたメモです。

。o ○

西に傾いた太陽の光が反射して、車がぴかぴか光っている

本当に夢の中にいるみたい———

時々、思うんだ。わたしは今、夢の中でこの道を歩いているんじゃないかって

もうすぐ覚めてしまう夢

いつもの日常に「おはよう」と言ったら、この世界はだんだん溶けていってしまう

初めは覚えていても、そのうち思い出せなくなってしまう


この木の形とか

影の感じ

下り坂とリュックの重さのバランス

川の音と笑い声

階段の下から見上げる景色



夕暮れ時は、透明人間の気分になる

わたしが存在しているのか、わからなくなる

どこか不思議の世界、夢の世界にお邪魔しているだけの、みんなには見えない、透明人間

そんな世界を気に入って、思ったより少し長く住みついている、別世界から来たわたし


この土地にどんなに愛着を抱いても、自分の本当の居場所はどこか遠くにあるんだと、胸の奥で感じているから、こんなことを思うのかしら

それともこれは、夕暮れ時の魔法なのかな


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