捨てられた感情
わたしは、好きな人の好きな人に、驚くほど嫉妬をしない。むしろ、好きになってしまう。小学生のころから、ずっとこうだ。不思議な性格をしているなあと、自分でも思う。
好きな人の彼女になった人は、付き合う前からわたしも彼女を好きだったし
好きな人の片思いの相手は、本当にいい子だなあ、彼が好きになるのもわかるなあ、と彼と同じくらい好きになってしまう。
別に、大好きな人の好きな人を無条件で好きだと思うようにしているわけでもないけれど、どうしてだか、いつもこうなってしまう。
。o ○
この話をすると、「変わってるね」とか「いい人だね」と言われるけど、どうやら違うらしいと最近気が付いた。
わたしは、嫉妬という感情を、捨てたらしい。
嫉妬は苦しい。怒りや悲しみよりも、嫌な感じの苦しさがある。誰かへの嫉妬心は、結局、自分が自分であることへの嫌気みたいなものを表しているような気がして、やるせなくなる。だって、わたしはわたしであることを、やめられないんだもの。
例えば、彼のことをこんな風に寂しい顔にさせたり、笑顔にさせたりできるなんて、あの子にしかできない。なんて素敵なことなんだろう———そんな風には思う。
でも、わたしはこの気持ちを、ただ心の底から「いいなあ」「素敵だなあ」と思うところで、無意識にとどめている。羨ましいな、わたしにもできたらいいのに、あの子と何が違うんだろう、どうしたらいいんだろう———そんなことを考え出すと、わたしじゃダメなんだって、痛感させられる。少しでも嫉妬に似た感情を抱くと、何もできないわたしという存在にがっかりしてしまう。そしてそれは、とても苦しい。
だから多分、嫉妬が嫌いすぎて、嫉妬することを辞めてしまった。
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