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星たちに慰められる夜

ずっと行ってみたかった「砂漠」へ行った。

空がとても広かった。砂漠と星空の組み合わせは、切ないくらい綺麗で素敵だった。もしここに住んでいたら、サボテンや星にたくさん慰められるのかなあ、なんて思った。

それから、ちょっぴり不安になった。夜空には星があまりにもたくさんあるから、あの中の星から空を見上げたら、地球もそのうちの一つにしかすぎなくて、見つけられないんじゃないかって。

そうしたらわたしは、故郷さえも見分けられないことや、どこに向かって手を振ったらいいのかわからないことを、寂しいと思うかしら。それとも、どこかにある遠い地球を想って、星空を丸ごと好きになるのかな———星の王子さまも同じようなことを言っていたなあ、とふと思い出した。

小さな王子さまは、こんな風に言っている。

「夜になったら、星を見てね。ぼくの星は小さすぎて、どこにあるのか教えられないけど。でもそのほうがいいんだ。ぼくの星は、夜空いっぱいの星のなかの、どれかひとつになるものね。そうしたらきみは、夜空ぜんぶの星を見るのが好きになるでしょ……ぜんぶの星が、きみの友達になるでしょ。今からきみに、贈り物をあげるね……」(サンテグジュペリ)

この本は、もう十回以上は読んでいるけれど、この台詞の意味を実感する日が来るとは思わなかった。

きっと一生のうちに訪れない「もしもこうなったら」について思いを巡らせては、勝手に寂しくなったり、切なくなったりする。それで、いつもなら誰かに話したくなって、眠れない夜に電話を掛ける。でも、その時はなんていったって砂漠にいたから、電波がない。代わりにわたしは、大切な誰かにそっと打ち明けたい言葉たちを、忘れないように心の中で何度も繰り返した。名残のオリオン座を横目に、踵を返し、車へ戻る。街に着いたら、大事にしまった言葉たちを星座みたいに並べてあの子に見てもらおう、と思いながら眠りについた。


参考文献:サン・テグジュペリ(2006)『星の王子さま』(河野万里子訳)新潮文庫。

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