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その役割を期待するのは間違い

【文字数:約1,000文字】

※ 愚痴です。



 時事ネタを取り上げるNHKの「クローズアップ現代」にて、地方から女性が流失している、という特集があった。

 地方創生を掲げた2014年から10年が経ち、取り組みが効果を上げているかと思いきや、まったく役に立っていないそうな。

 それをみた私は、そりゃそうだろうな、と思った。


 番組の始めに紹介される富山県を旅したとき、とある店で話した女性が私に「うらやましい」と言った。

 なんでも義母の当たりがキツくてしんどいらしく、周辺に田んぼが広がるのどかな風景にも、厳しい冬のような冷たさがあると知る。

 もちろんすべての人がそうではないだろうけれど、もしも生まれ育った場所がしんどいと感じるなら、せめて自由を得られる首都圏などに出ようと考えるのは、いたって普通の感覚だ。

 私の両親だって地方から出てきた側だし、地元に残った親族との価値観にふれると、おもわず顔に出てしまいそうになる。

 とくに顕著なのは「女性は結婚して子供を産むのが普通」だとされている空気だ。


 私は戸籍上の性別が男性なので他人事かと思いきやそうではなく、男は男で「結婚して家庭を持って一人前」と見られる。

 九州の人で結婚してたけど離婚したとかで、親族の集まりに行くと自分だけ独り身でしんどい、と話していたのを今でも覚えている。

 けっこう顔もいいのにナゼだろうと思いつつ、男ならこうあるべき、みたいな呪いにかかっていたのかもしれない。

 DVから離婚した人たちのインタビューを読むと、明らかにおかしいのに本人は気づいてないようで、生まれ育った家族や土地の祝福、あるいは呪いの存在を考えるには十分だ。


 家族に女の姉妹がいる私はまだマシで、リアルな声を多少なりとも聞けている。

 子供が欲しいわけじゃないのに毎月しんどくなって、女だから身の危険にあっていると知れば、怒るのと同時に申し訳なさを覚えるし、そうした男を生み出す教育不足に絶望する。

 若者と呼ばれていた頃、さも得意げに「オレ、経験ありなんで」と話す男を前にして、いいね、と笑顔で返しながら内心では吐き気を覚えていた。

 お前は一緒に育った家族がある日、襲われる痛みと苦しみを知っているのか?

 本音を隠して黙認する時点で、私もまた同類なのかもしれないが。


 もはや期待されない年齢になり、生物としての不甲斐なさを感じつつも、気分的には楽になったような気もする。

 先の姉妹も年内には手術をして、病変する可能性を消すために子宮を取るらしい。

 もしも手術に立ち合うことになったら、私は「おつかれさま」と言いたい。



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りんどん
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