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古いラジオで新しいVTuberを知る

【文字数:約3,000文字】
お題 : #好きな番組


 NHK-FMにて、毎週日曜のPM10:40~11:30に「ぶいあーる!〜VTuberの音楽Radio〜」というラジオ番組が放送されている。

 そもそも私は「VTuber」という存在をたいして知らず、仮想のアバターを使ってなんやかんや喋る人たち、みたいな解像度の極めて低い認識だった。

 言ってしまえば謎の多い存在であるVTuberが地上波の、しかもNHKでラジオ番組を担当すると知り、怖いもの見たさ、正しくは聴きたさでチェックし始めた。

 結果として今現在、毎週欠かさず聴く番組となっている。


 VTuberの主戦場はYouTubeを主とした動画サイトであり、最大の特徴あるいは武器となる映像がないラジオは、活動する場所として意味が薄いのではないか。

 そのように始めは思っていたのだけれど、番組を聴き続けて約半年が経ち、「むしろ意味は超ある」という結論になった。

 その理由は4つあって、先に並べると下記の通りだ。

  1.  VTuberを知らない人間にも受け取りやすい

  2.  相方にあたるMCとのやり取りが楽しい

  3.  ラジオだからこそ聴ける話がある

  4.  場所を選ばずに聴ける

 上記で示した項目について、次より順に解説していく。


  1.  VTuberを知らない人間にも受け取りやすい

 これは私自身のことでもあり、気まぐれに番組表を眺めていたのがきっかけとなり、MCを務める「星街すいせい※」の存在を知った。

※ 以下、本人希望の「すいちゃん」と尊敬を込めて表記する

 実は以前、声帯の手術をするというニュースから、ぼんやり名前くらいは見た気がしており、大変だなぁ、と思ってすぐに忘れていた。

 聴き始めてすぐの放送回だったかで、すいちゃんが「高い声が喉の負担になっていた」という話をしており、先のニュースがそこでつながった。

 どこか他人事でしかなかった事象が、すぐ近くに迫ってきたような感覚とすれば伝わるだろうか。

 だから私にとってすいちゃんは、最大の武器となる喉の手術をしてでも活動を続けようとする、めちゃくちゃに熱い情熱の持ち主なのだ。

 それまでは趣味で稼ぎたい夢追い人だと、VTuberおよびYouTuberを嫉妬に羨望という負の感情で観ていたのが、彼らもまた創作者、クリエイターなのだと尊敬するようになった。

 もちろんそれは私の場合であって、たまたま軽率に番組を聴いて興味を持ち、そこから沼にハマる人がいればと願っている。


2. 相方にあたるMCとのやり取りが楽しい

 すいちゃんをきっかけにして動画も観るようになったけれど、基本的にVTuberは1人で話している場面が多いことに気づく。

 自身のチャンネル以外のVTuberと出演するのは「コラボ」と呼ばれるそうで、雑談や企画もの、ゲームでの対戦といった際に行われる。

 VTuberの側から視聴者を認識するのは文字によるコメントであり、視聴者数が多ければ大量のコメントは流れてしまい、認識するのが難しくなる。

 中には心ないコメントをする輩もいるわけで、私が観測した狭い範囲においても良くない視聴者がいた。

 これは私の勝手な推測だけれども、画面に映る相手が1人でなく複数人であれば、そうしたコメントを控えようとするのではないだろうか。

 もちろん自衛策としてでなく、単純に同じ場所というか画面内でのやり取りを観るのは楽しく、それはラジオにおいても同様だ。 

 リアルタイムで話しているからこそ引き出される話や、ふんふん、といった何気ないあいづち、その場のノリで変わったキャラを演じたりと、人間によって人間は輝きを増す。

 ゲストがいれば相手の話を広げて魅力を伝え、リスナーからのメールに面白おかしく、あるいは真剣に答えているのは、どこかの噺家にも匹敵するのではないかと思っている。


3. ラジオだからこそ聴ける話がある

 これは2.とも重なる部分なのだけれど、コメントでない相手が実体ありきで話す内容は、かなり踏み込んだ話が出てくる。

 すいちゃんはYouTubeのチャンネル登録者数が200万人を超えており、先日9/30、10/1には九州の熊本で行われた「阿蘇ロックフェス」に出演した。

 しかし、私のような「VTuberとは何ぞや?」という人間にすら認識できるようになる前は当然、下積みとなる時代があった。

 この曲で再生数が爆発的に増えない、いわゆる「バズる」ことがなければ引退を考えていた、という話があって、それ自体は別の機会においても話していたらしい。

 先日、同じ事務所「ホロライブ」に所属するAZKiさんがゲスト出演して、すいちゃんと先輩後輩のような関係だからなのか、あのライブのときは、とか、あのとき辞めることを考えていた、とかの話が出てきた。

 どこかで同じ話をしている可能性もあるけれど、たぶん2人の間柄だからこそ出た話であるような。

 そうした話はVTuberに関わらず、今に到る苦労話として嫌いな人は少ないのではないだろうか。

 たとえば芸人さんの下積み時代の話で、バイト先の店長に「出世払いでいいよ」と奢ってもらった話とかを聴いたら、私は高確率で泣くだろう。

 他には長く活動しているVTuber同士で、音楽に対する拘りポイントやVTuberという存在についてなど、最前線にいるからこその話も興味深い。

 ちなみに、阿蘇ロックフェスのライブレポートはコチラが ↓ 詳しくてオススメです。


4. 場所を選ばずに聴ける

 私自身の都合により動画を観る時間があまり取れないのだけど、ラジオなら移動中などに聴きやすい。

 Bluetoothのイヤフォンも十分すぎるほど普及した感があり、コードに引っかかって外れる煩わしさも減った。

 リアルタイムで聴けなくても聴き逃し配信があるのは助かるし、だれかにオススメするのも簡単で、音声のみだから興味を持ってもらいやすい。

 噺家のように「あのね、面白いラジオ番組があるんですけどね」を枕にして、MCの正体を教えずに興味を持たせれば、めでたくリスナーの出来上がり。

 動画だとPCやスマホを占有するし、やっぱり見た目に対する忌避感というのは避けがたく、なかなかどーしてハードルが高い。

 ラジオであればラジカセ、あるいはポケットラジオでも聴けるわけで、もしかしたら高齢者のリスナーがいたりするかもしれない。


 以上、4点が「ぶいあーる!〜VTuberの音楽Radio〜」を好きな理由だ。

 そもそもラジオを聴く習慣があったのが大きいとはいえ、聴き続けるまでには自分なりのチェックポイントがあり、それを満たしているから今に到るわけで。

 私は同番組をきっかけに楽曲への興味が出て、錆びついていた音楽用の耳がふたたび動きだした。

 歳を取ると同じ曲を聴き続けてしまいがちで、それ自体は好きなものを大切にする姿勢として素晴らしいと思う。

 ただ、音楽を生き物として捉えた場合、進化を続けた現在を知らないで済ませてしまうのは、何だかもったいないような気もする。

 実体のあるCDではなく、純粋な楽曲であればwebを介して世界に届く。

 レコード、カセットテープ、CDといった記録媒体は、遠く広く曲を届けるために作られた。

 世界がwebによって同期する今現在、楽曲はもちろん、Virtualな存在でさえも生命として捉えることが可能だ。

 もはや沈む夕陽のような人間を、それらの一端につなげてくれた同番組に、私は深く感謝している。




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りんどん
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