年間720時間の人はダテじゃない

【文字数:約1,500文字】
お題:#創作大賞感想

 開催中の創作大賞2023の中で#エッセイ部門に投稿されている記事を眺めていると、見覚えのある5文字のクリエイター名を見つけた。

 家電メーカーのSHARP公式が投稿していることに驚きつつ、応募要項には「プロ・アマチュア問わず」と書かれているので、それ自体は問題ないのだろう。

 もし仮に受賞となったら大人の事情でゴニョゴニョしそうだけど、ひとまず記事に目を通してみると異様に長い。

 画面右のスクロールバーがシャープだねと、自然と眼差しが鋭くなる。ちなみに現在の企業スローガンは「Be Original.」とのこと。

 まさか#エッセイ部門の応募要項をわざと外すことで、「失敗しちゃった~メンゴメンゴ!」と逃げ道を作っておく作戦かと思い、失礼ながら文字数を調べてみた。

 結果は上限となる1万字にすこし届かないくらいで、某・noteに出てくる人が笑っている姿を想像する。

「計画どおり……!!」


 公式による本気のガチ投稿であるならば、わりと硬めなタイトルになると思いきや、『通勤電車で年720時間 アニメに費やす』では何についての記事か予想しにくい。

 もしやBlu-rayレコーダーを紹介するのかという予想は外れ、COCORO VOICEココロボイスというサービスについて書かれている。

 記事を書いた中の人がそのサービスを担当しており、タイトルにある年720時間は「アニメを学ぶ貴重な時間」だそうな。

 それとCOCORO VOICEに何の関係があるのかといえば、元記事にある次の説明ですべてを理解した。

COCORO VOICEとは、ウォーターオーブン「ヘルシオ」や水なし自動調理鍋「ホットクック」、「プラズマクラスター加湿空気清浄機」がしゃべる音声を、人気の声優さんやアニメ・ゲームのキャラクター、英語、方言など、好きな音声に変えられるサービスです。

 公私混同ではなく顧客を学び、理解しようとするから年720時間が必要なのであり、決して通勤時の暇つぶしではないようだ。


 記事を読んでいくとCOCORO VOICEの前身になるものがあったそうで、このときから開発に関わって今に到る経緯は、ゆるんだ空気に良い意味での緊張感を与えてくれる。

 さながら文章清浄機の役割を果たし、タイトルこそ柔らかいながら真剣に取り組んでいることが理解できた。

 いつぞやの話では、ほぼ徹夜でアニメ『ゆるキャン△』の1シーズンを観終えたそうで、俗に「完走」と呼ばれる荒行をする者に悪い人間はいないはずだ。

 きっと身延山久遠寺で修行したのと同じ徳が積めるに違いない。もちろんウソやで~。

 さらに記事を読んでいくと、ユーザーからの声が紹介されている。

 某・メーカーが商品にない色を欲しいという声を聞き、発売を決めた話があったけれど、そうした応答は別のユーザーからしても良い印象を持つ。

 すべての声に耳を傾けるのは難しく、できること、できないことがある。

 ただ、数値化できない期待感は今の時代だと大きな価値を生み出し、その実例が記事にて紹介されているので、興味のある方は元記事をチェックして欲しい。


 ほぼ1万字の記事とはいえ、読み終えるまでに長さをあまり感じないし、なんとなくSHARPという会社が好きになる。

 企業公式によるSNSは未読のままにする場合が多く、存在を忘れてしまうことさえある。

 そんな中で「おもしろそう」と期待感を持たせるのは、なかなかマネのできる芸当ではなく、書き込みから炎上するリスクと隣り合わせだ。

 まるで薄氷を踏むような感覚だろうとは思いつつ、記事を書いた中の人が今日も健やかに、通勤電車でスマホの画面に光を灯してくれればと願っている。



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りんどん
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