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『理念と経営』2025年2月号の読みどころ


丸亀製麵の競争戦略がわかる巻頭対談

こんにちは。『理念と経営』編集長の前原です。
2月号の読みどころを紹介します。

『理念と経営』2025年2月号

まずは小誌の看板である「巻頭対談」です。

今回は、株式会社トリドールホールディングスの粟田(あわた)貴也社長をお招きしました。トリドールは、あの「丸亀製麺」の会社ですね。

対談は、渋谷駅からほど近いトリドール本社にて

うどんチェーンの会社なのになぜ「トリドール」なのかというと、創業当時は焼き鳥屋さんから始まったからなのですね。

うどんチェーンはほかにもたくさんありますが、その中でトリドールがなぜ圧倒的な競争力を保っているのか? その秘密を、対談相手の楠木建先生(一橋ビジネススクール特任教授)が解き明かしてくださっています。

名著『ストーリーとしての競争戦略』で知られる楠木先生は、日本における「競争戦略論」の第一人者ですから、そのへんはお手のものなのですね。

くわしくは対談をお読みいただきたいのですが、一点だけご紹介します。

飲食店チェーンが成功すると、そのやり方を真似した別のチェーンがすぐ出てきます。つまり、ブルーオーシャンがすぐにレッドオーシャンになってしまうわけです。

ところが、丸亀製麵の場合、各店舗で「手づくり・できたて」のうどんを提供するというコンセプトなので、他社がおいそれと真似できないんですね。

粟田さんはそのことを、「丸亀製麵を一店出店するのは、ミニ工場を造るようなものなのです」と表現しています。

他社が真似のできないやり方を続けていることが「模倣障壁」となり、トリドールの強さになっているんですね。

そのように、競争戦略の観点から見ても、大変面白い対談になっています。

知恵と工夫で大企業に勝った中小企業

次に、特集1「小よく大を制す――尖って勝った中小企業」です。

「柔よく剛を制す」ならぬ「小よく大を制す」――つまり、経営資源の乏しい中小企業でありながら、知恵と工夫で大企業に勝った事例を集めました。

そのうちの1社が、学校教材や教育玩具を作っているアーテック。社員300名ほどの会社ですが、世界的玩具メーカー「レゴ」に勝ったことで有名になりました。

右上の写真がアーテックロボ。ブロックで形を作り、プログラムで動かす

アーテックが作ったプログラミング教材「アーテックロボ」は、モンゴルの小学校の国定教材に採用されました。レゴなどの大企業が競合相手になったのですが、アーテックが勝ったのです。

サッカーで言う「ジャイアントキリング」ですね。それがなぜできたのかという舞台裏がわかる記事になっています。

会社を変えた、かけがえのない出会い

次に特集2ですが、今回のテーマは「経営の転機――あの出会いが、私を変えた」です。

経営者が過去を振り返ったとき、「あの出会いがなかったら、いまのうちの会社はない」という運命的な出会いがあるものです。
そのような、かけがえのない出会いをめぐる物語を3つ集めています。

1人の人との出会いもあれば、「掃除に学ぶ会」との出合いで経営者として目覚めたという事例もあります。
また、倒産を経験して多くの人が去っていくなか、変わらぬつきあいをして支えてくれた人たちとの出会いもあります。

登場する事例の1つを紹介しましょう。
靴メーカー・インターナショナルシューズの3代目・上田誠一郎さんを取材しています。

爽やかな笑顔の上田誠一郎専務

インターナショナルシューズは、主要取引先が経営破綻したことで危機に陥りました。そんな苦しいときに、テレビの『カンブリア宮殿』で、ファッションブランド「ファクトリエ」の山田敏夫社長を知ります。

上田さんはファクトリエの例を見て、「自分が本当にやりたいのはこういうビジネスだ!」と感じました。それは、全国の優れた工場と消費者を直接つなぐビジネスでした。

そして上田さんは、『カンブリア宮殿』の放映翌日、アポも取らないまま大阪から上京し、山田さんに会いに行きました。

そこからつきあいが始まり、ファクトリエとインターナショナルシューズはコラボをしていきます。
そして、コラボの成功を機に、インターナショナルシューズはスニーカーの自社ブランドを立ち上げ、成功するのです。

テレビを観た翌日に、アポもないまま会いに行く――この「即断即決の行動力」がスゴイですね。

運命的な出会いは、ただ漫然と待っていてはダメで、自分から求めないといけない……そんなことも感じさせる良記事です。

お笑いにもごみ清掃にも本気で取り組む

次に、ヒューマンドキュメンタリーのページ「人とこの世界」です。
今回は、お笑い芸人「マシンガンズ」の滝沢秀一さんを取材しました。

ごみや環境の問題について講演する機会も多い滝沢さん

滝沢さんはお笑い芸人になって28年目ですが、ごみ清掃員として働き始めて14年目になります。「二足のわらじ」でやってきた方なんですね。

最初は、お笑い芸人の仕事だけでは食べていけないので、生活のためにごみ清掃員をしていました。

ごみ清掃員の仕事はつらくて、「いつかまた、お笑いだけで食えるようになってやる」と思いつつ、我慢して働いていたそうです。

しかし、3年目にある転機が訪れます。「日本一のごみ清掃員になろう」と決意して、お笑いもごみ清掃もどちらも本気で取り組むことにするんですね。そこから、清掃員としての仕事に対する取り組み方も変わっていきました。

それから10年以上が経ったいま、滝沢さんは「ごみ研究家」としても知られるようになり、ごみに関する著作もたくさん出しています。

このインタビュー記事は、「エッセンシャルワーカー」の尊さを知ることができますし、仕事との向き合い方についても考えさせられます。

「最期の旅」をサポートするスタートアップ

最後に、「スタートアップ物語」を紹介します。

さまざまなスタートアップ企業を取材するページですが、『理念と経営』の場合、単に「成功したスタートアップ」というだけでは取り上げません。

社会のため、世のため人のためになるような、ソーシャルビジネスの側面を持つスタートアップを選んで取り上げているのです。

今回取り上げた「トラベルドクター」もしかり。
同社は、医師の伊藤怜哉さんが立ち上げたスタートアップです。

伊藤さんは大学病院勤務を経てトラベルドクターを起業

人生の最期に、「思い出のあの場所にもう一度行きたい」と思う人は多いでしょう。しかし、終末期や難病の患者さんの場合、実際には行けないことが多いはずです。

トラベルドクターは、「人生の最期に、あの場所に行きたい」という願いを叶える会社なんですね。
そのために、医師や看護師、理学療法士などがチームを組んで、患者さんが安心して旅行できる体制を整えます。

つまり、医療と旅行を融合させたスタートアップなのです。

創業からの5年間で、伊藤さんは約200人の患者さんの旅をサポートしてきたそうです。
そこから生まれた感動的なエピソードが、記事の中にいくつも盛り込まれています。

……以上、2月号の主な読みどころを紹介しました。
ほかにもいい記事満載ですので、ぜひお読みください。それでは、また来月お会いしましょう。

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