研究室。真っ白な文章作成画面をただぼんやりと見つめている。 カーソルが点滅するのを、その淡々とした動きを、表情のない瞳で見つめ続けている。 ────私たちはこれと同じようなことをしている。 何となく思いながら、人差し指でキーに触れた。ぽんと改行され、カーソルが一行分下がる。 そしてそれはまた一定の間隔で点滅をはじめる。 「…………」 改行。改行改行改行。真っ白な画面は長く伸びていく。 そうして最終行にはいつも、無機質に点滅するカーソルだけが残る。 気持ちがいいだけ。何
《 登場人物 》 男 女 ◯ふたりの家 (昼) 美容室から帰ってきた女を見て、激しく動揺する男 男 切ったの。 女 うん。 男 染めたの。 女 うん。 男 何でだよおおー。 女 いいじゃん! かわいいじゃん! 男 不良ー! 女 ええ……すごい偏見だな。 そんなに好きなの? 黒髪ロング。 男 大好き…… 女 へー。好きなのは黒髪ロングで、私じゃなかったわけだ。 男 そういうわけじゃ……黒髪ロングのおまえが好きだっ
雨が降ってるなあ。 そう呟き、ごろんと、博士が寝返りをうつ。 私はええとだけ答えて、本のページを捲った。 確かにひどい雨だ。昼間だというのに外は薄暗い。 窓へ乱暴に叩きつけてくる雨音が、緩やかな憂鬱を誘う。 「早くやんでくれるといいんだけど」 ごろん。 何度目かの寝返りをうつと、博士はベッドの上で大きく伸びをした。 「ね」 呼び掛けられて顔を上げる。 博士は寝転んだまま、しかし瞳だけはじっと私のほうを見ていた。 気だるげな博士の艶っぽさといったら。 どきりとして
《 登場人物 》 男 (彼くん):プロニートでプロのヒモ 女:男を養う彼女 ◯ 女の家 リビング (朝) 女 今日はなーんの日っ? 男 うっ。 女 なーんの日っ? 男 え、えーと……今日は……ねぇー…… 男M きた! 強制イベント『今日は何の日』……! 恋愛命の彼女が初年度に設定した、ありとあらゆる記念日……その数は百とも二百とも言われている。 交際二年目突入の今、その記念日どもが、俺に襲いかかっていた。 数日おきに発
彼の研究室はいつでも散乱状態で、何か他の生物の巣のようだ。 その散らかり様といったら、最早清々しいほど。 書き損じるたびに丸めてぽいぽい投げ捨てるので無数の紙の塊が足元を覆っているし、それに紛れてインクの切れたペンや携帯栄養食品の空箱も転がっている。 それらを足で退かせば、どの装置のものともつかない本数の配線が床を這っていることにも気が付く。 棚に収まりきらなかった本たちは部屋のいたるところで見上げるような塔を作っていて、とにかく足の踏み場がほとんどないのだ。 この有
《 登場人物 》 男 女 ◯ 男の部屋 (夜) ふたりで宅飲みをしている 男 おまえぜんぜん飲まないね。ジュースばっか。 女 知ってるでしょ? あんまり強くないからさ。 酔わなくても楽しいよ。 男 昔はしょっちゅう酔っぱらって俺のベッド勝手に使ってたくせに。 女 今はそんなことしないじゃん。 何、床で寝させたの根に持ってたの? 男 そんなんじゃないけど……そろそろ大人の飲み方覚えりゃいいのに。 どこ行ってもジュースとお茶だけ
《 登場人物 》 男 (15) 高校生 女 (15) 高校生 ◯ 通学路 (夕方) 下校中、並んで歩くふたり 女 終わったー! 男 んー! すげー解放感! 女 だねー。 男 授業はまだあるけど、お互い志望校合格したし。 ひと安心だな。 女 うん。残りの時間、いっぱい思い出づくりしなくっちゃね。 あ、卒業旅行したいなぁ! どこがいいだろ。温泉かなぁ、ランドかなぁ。 男 バイト探すところからだぞ。間に合うか? 女 そっか
noteはじめました 茜咲 凜 (あかさか りん)、フリーランスの声優です🎙️⭐ 幼女~成人女性はもちろん、マスコットキャラクター(人外) も得意です ナレーションは、ポップ系、キャラクター系、ほんわかほのぼの系が大得意 ホームページにボイスサンプルがございます 早々に載せちゃう 聴いていただけると嬉しいです お探しの声やお芝居に合うものがあれば、ぜひ茜咲にお任せください😊💪 ……と、声優としての軽い軽い自己紹介をしましたが、 ここには、趣味で書いたボイスドラマ用の短編