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りすのしっぽが掴めない

りすの痕跡を追っているのに、ちっともしっぽが掴めない。


青森の給食で食べたそれは、りすのパッケージが可愛らしいデザインの、ババロアだった。

みんなが「ココアババロア」と呼んでいたので、それが商品名だったのだろうか。


ココアババロアが出る日は戦争だ。
とくに、わたしのトレイからを奪い取ろうとする男子から、守りきる必要があった。

普段は食べるのが遅いわたしだけど、いつもより高速で給食をかき込む。

ココア風味なのかチョコ風味なのか、蓋を開けると甘い匂いが鼻をくすぐる。確か、半分に折り曲げて使う紙スプーンのようなものがついていて、それはちょっと、頼りない。

まわりはプッチンプリンよりは硬めの感触。恐らく冷凍してあったものを提供されているのだろう。
中央部分は溶けるのが遅いのか、しゃりしゃり感が少し残っていて、それがまたおいしい。

でも、わたしの記憶は確かなものなのだろうか。
あまりにも解像度の低い記憶で、思い違いはあるかもしれない。

もう一度あれが食べたくなって、検索した。
すると、わたしと同じようにりすのしっぽを追っている人が何人か見つかった。Yahoo知恵袋で。Xで。りすの捜索願いが出されている。

皆、一様に同じことを書いている。

「ネットで調べても、なんの情報もない」

わかる。りすの、あのパッケージが見当たらない。

ココアババロアと検索ボックスに入力すると、給食 青森というキーワードが予測変換に出される。何人もの人が、りすの行方を追っている。


いつだったか、わたしはココアババロアを自作した。りすが見つからないなら、作ってしまえばいいと思ったのだ。

まずは、ゼラチンを25cc(面倒なら大さじ2)の水でふやかしておく。

牛乳は250cc使う。
まず、耐熱容器に牛乳の半分を入れる。レンジで1~2分ほど加熱して熱々にしたら、冷たいままの、残りの牛乳を追加。
すると、50~60℃くらいのゼラチンが溶けやすい温度になる。
ココア粉末(大さじ2)や砂糖(大さじ1)、オリーブ油(小さじ2)も加えてよく混ぜる。

甘さ控えめにつくっている。オリーブオイルを入れるのは、以前、アイスを手作りするときに、生クリームがなければオリーブオイルを足すと濃厚になると見たことから。

まったく同じものは作れないけれど、なんとなく、りすに近づけた気がする。


これはこれでおいしいけれど、本物のココアババロアが食べたい。青森の給食で出ていた、りすのパッケージのココアババロア。どこに消えたのか足取りを知っている人は、ぜひ、教えてほしい。

(回収日外の #なんのはなしですか


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三條 凛花 │  "時間が貯まる"ノート本著者
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