mikan

ただいま今までのnoteを移行中

mikan

ただいま今までのnoteを移行中

最近の記事

彼と過ごした2周目の季節

彼がお店を閉めてから、1年が過ぎた。 今年もまた街路樹のイチョウが黄色く染まる。 なんだかんだいいながら、ひっそり、誰にも気付かれないように、付かず離れずで私たちは側にいる。 ピアスの穴が安定してきたのと一緒で 私たちの関係性も安定したように感じる。 「うまく利用したらいい」 最近彼の口から聞かなくなったのは、私の迷いが彼に伝わらなくなったからだろうか。 それとも言葉の通り、うまく割り切って利用しているからだろうか。 なにはともあれすっかり私の心の隙間に、彼が住み着いて

    • 白衣の戦友

      彼女と出会ったのは7年前のことだ。 病院の正面玄関に彼女はいた。 艶のある黒い髪のボブカット。 大きな瞳でばっちりメイク。 高身長でスタイルが良く、白衣を着こなすその姿はモデルのようだった。 手にはキティーちゃんのバインダー。 オーラのある新人とすれ違った。 とても綺麗な女性で私は目を奪われた。 彼女が入職してから数ヶ月が経った頃、私は異動で彼女の病棟に配属された。 あいも変わらずオーラのある女性で、ユーモアもばっちり。 仲良くなるのは時間はいらなかった。 彼女は私の10

      • 夫を捨てた日。

        夫と別居した。 原因はお金と、考え方、意見の食い違い。 好きじゃない人と一緒に暮らしててもしんどいし 子供を連れて家を出た。 遅かれ早かれこの人とは離婚するだろうなと薄々は気づいていたけど こんなにはやく決断する日が来るとは思いもよらなかった。 前から思ってたけど、話し合いをしても話が噛み合わない。 考え方がまったく合わない。 「分かった」と言っていたことも、納得してないから時間が立つと事実を曲げられ私のせいにされる。 向き合って話し合うほど嫌いになりそうで ずっと向き合う

        • 最後に

          みんなでいる時間が好きだった。 私の友達と彼と遊ぶ時間が楽しかった。 私たちの関係は伏せて、その時間だけは友達。 だから楽しい。 彼女たちの前では私は女ではなく友達なんだ。 女のコミュニティーの掟。 確信は言わない。認めない。怪しいよねーと言われてもはぐらかす。 じゃないと核心を突く言葉をかけるとそれはいずれ武器に変わる。 私は心の奥では誰も信じていない。裏切られて傷つけられてきた経験が多すぎた。 私はこのままがよかった。このまま泳いでいたかった。私があれだけ辞めて欲しいと訴

          居酒屋で過ごした時間

          お店の入口を開けると、そこは居酒屋。 お客さんの声が響く。 私は振り返らず、二階にある事務所に入る。 事務所はエアコンが利かない。 暑いから扇風機を回して、テーブルに向かう。 教材を開いて、問題を解いた。 事務所の窓からは銀杏の木が見えた。 緑色の銀杏の葉っぱ。 この木が紅葉する前に、お店は閉業する。 あと1ヶ月。ここにいられるのもあと1ヶ月。 私は事務所タバコを吸いながら、お客さんの笑い声を聞く。 事務所は私にとって居心地が良かった。 飲みに外に出ることがなくなった私には

          居酒屋で過ごした時間

          趣味が繋げてくれたこと

          子供が生まれてカメラを始めた。 撮影したものをインスタであげて楽しんでいた。 時々セルフィーで子どもと私が一緒に写ったものを投稿するようになったときに、1通のDMが届いた。 【とても綺麗ですね。撮影させてください。】 女性からだった。彼岸花で撮影させてほしいという内容だった 相手のインスタをみると家族写真が沢山載っていた。たまに友人を被写体に撮影しているようだった。 そして、彼岸花がきれいに咲く公園で初めて彼女に会った。 黄色いエスニックの服を着た小さな女性がそこにいた

          趣味が繋げてくれたこと

          ピアスの意味

          「痛いけど我慢な。」 バチンと耳元で音が鳴る。 ピアスの穴が塞がったから、また同じ穴に針を刺して開けてもらった。 一回開けた穴だから針は貫通しない。無理やり針をねじ込む。痛いけど我慢。痛みは罪悪感をかき消してくれる気がした。 その日、フロントガラスの外は雨が降っていた。 私にとってこのピアスには深い意味がある。 誰にも言わない、だけど消えない、ふたりだけの秘密を刻む。 おしゃれでピアスをつけるたびに、何歳になってもあなたのことを思い出すの。 死ぬまで秘密で、墓場に持ってい

          ピアスの意味

          後悔ないと彼は言うけれど

          「死んでもいい。後悔ない。」 よく彼はそう言った。十分人生楽しんだって。彼は当時33歳だったと思う。親友が亡くなって、自分も死んでもいいんだってよくそう言っていた。楽しいこともやりきったと。私からしたらなんでやりきったと言い切れるのか分からなかった。彼の人生の諦めのようなものを感じた。当時私は18歳。高校卒業してすぐの私は世間知らずでわからないことだらけで彼を怒らせてばかりだった。その分たくさんのものを吸収させてもらった。新しい世界を見させてくれた。経験させてくれた。いつも

          後悔ないと彼は言うけれど

          セクシャルマイノリティーの認知

          小学生の時は性別も、障害もなにもかもかまわずみんな仲良しだった。 女の子になりたい男の子の幼馴染とは仲が良かったし、べつに女でも男でも気にもならなかった。 私のワンピースを着て、くるくる回る姿が楽しそうだったのを覚えいる。 知的障害がある友達に対しても何も思わなかった。それがその子だから別に意識したこともなかった。仲が良い友だち。ただそれだけでよかった。 そして私は双子。そっくりな片割れがいる。双子だからって一緒にされるのは嫌だった。 私は私。誰でもない。片割れと別人格と

          セクシャルマイノリティーの認知

          坂の町で過ごした他愛のない時間

          大津駅を降りる。ふたりで手をつないで話しながら帰路につく。帰り道の坂を登ると琵琶湖が見えた。住宅地から見える青い琵琶湖が綺麗で別世界の景色に見えた。 それ以来坂の町に住みたいと思っていた。坂の上からみるあの景色が忘れてられなかった。 そして今、坂の町に住んでいる。琵琶湖はないけど坂を登ると高いところから町を見下ろせる。特に夕日が綺麗で、赤が空を染める。私が住む町が幻想的な景色になる 隣にあのときの彼はいないけど、坂の上から景色をみると思い出す。あの青い琵琶湖を。 坂の

          坂の町で過ごした他愛のない時間

          「りな」になった日

          喧嘩して、家出した。 みんなしてお金お金お金。 もう疲れたよ。 冷たくされて、心の拠り所も失って、絶望していた。 お金を要求されて出せない私には価値はない。 だからその日、「りな」になって、知らない人とベッドにいた。 ハゲでチビでデブで、静かなおじさんに体を売った。 知らないやつのちんこをしゃぶった。それっぽい演技をしておじさんの自尊心を満たしてあげた。 抜いたあと、添い寝して優しい言葉をたくさんかけてあげた。おじさんはみんな寂しがり屋ばかりだ。 言わなくてもわかる。私がお

          「りな」になった日

          97歳のおばあちゃんと山王祭とこどもたち

          「今日は山王祭りだね。私も子供の頃行ってたのよ。」 朝食を配膳してたときに97歳のおばあちゃんが私にそういった。今日は5月31日。市内では大きなお祭りが開かれる日だ。97歳のおばあちゃんが子供の頃だから、90年前からあったのだろうか。97歳だから戦前戦後のお祭り模様もみてるだろう。あの大空襲だってみてるはず。8月1日神通川の向こう岸全てが、空襲で燃えた。熱くて川に逃げ込んでも川も熱くて、死体が沢山流れていた。死んだ私のじいちゃんが教えてくれた。もちろんお祭りが開かれるあの町も

          97歳のおばあちゃんと山王祭とこどもたち

          薬物依存

          テレビで薬物依存症の特集をやってた。 仕事で受けたパワハラとストレスが引き金でODを始めた。仕事終わりに市販薬を3瓶、店のトイレで酒で流して飲んで、フラフラになって帰れなくなったりしたとうエピソード語っていた。 たぶん市販薬でその副作用はブロンのことだろう。ODでブロンは流行ってたし、もうちょっと上級者はフスコデをODする。 今どきのODは抗精神病薬じゃなくて咳止めの副作用を利用してODするんだなと最近知った。 薬物依存の子は、適応障害の鬱病でその後退職した。 その子が言っ

          薬物依存

          insid you

          Where you're going  まだ明けない夜は愛想を尽かして 期待はもうしない  あなたはもういない milet/insid you 今日はこれをリピートして聞いている。あなたの内側をみて、私の内側を見せた。私はあなたの内側を見て、聞いて、解釈してきたつもり。どんな心境かなとか真意とか本質とか見えてきたからこそきっと今、分岐点なきがする。私があなたを傷つけるか否かの。 私は誰かに身も心も委ねたかったのかもしれない。甘えたかったんだ。今まで沢山我慢して我慢して我慢

          見透かされて、落ちてゆく

          「死ぬほど首を絞めてあげようか」 ああ、また見透かされた。 私が考える行為をするぐらいなら、死なない程度にギリギリまで首を絞めてあげてそれで満足するなら付き合ってあげるよって意味だと私は解釈した。 ああ、気づかれたくなかったな。 そこを許したら、心を許したら、見透かされた部分を委ねたとしたらきっと落ちるところまで、道連れになる。 そうやって私を見透かしてくると心が苦しくなるんだ。 その優しさと、察しのよさに甘えすぎるぐらいならひとりでいい。

          見透かされて、落ちてゆく

          疲れたときの雨宿り。ある男性との出会い

          あじさいが見頃を迎えた頃、私は一人の男性に出会った。私はカメラマンをしていて、その日は雨の中物撮りをする予定だった。DMで撮影風景を見たいとコンタクトしてきたので撮影場所まできてもらった。彼は趣味がカメラではなく、ただ傘を差しながら私の姿を見ていた。何をしに来たのかなと、不思議だった。表情もあまり優れない様子。「平日なのに仕事は?今日は有給?」そう聞くと彼は「仕事に疲れて休んだんだ。」と答えた。 話を聞くと彼は既婚者で子供がいた。春から部署が変わって仕事に慣れないなか、毎日

          疲れたときの雨宿り。ある男性との出会い