【勉強会】ひとりおや家庭へのサポート~尼崎市議会議員 池田りな
こんにちは。尼崎市議会議員 池田りなです。参加した勉強会について書きます。
2024年8月22日(木)14時〜17時
テーマ:ひとりおや家庭へのサポート
講師:社会福祉士・保育士・防災士 こども家庭庁参与 辻 由起子氏
【概要】
辻氏は、内閣府子ども政策参与としてこども家庭庁の設立に関わり、現在はこども家庭庁参与としてご活躍されています。辻氏の「最近の若いお母さんたちは、カラコンやネイルが衣食住よりも優先されることが多く、見た目だけでは貧困かどうかが分からない」という発言が印象的でした。
勉強会で特筆すべき点を以下の3つにまとめます。
1点目は、直接子どもにではなく世帯単位で支援が行われていることです。また申請が必要な子どもであっても申請しないと支援が受けられない仕組みです。そのため、子どもに支給されたお金を親が使い込んでしまうケースもあります。特にコロナ禍では、一人暮らしで親に頼れない若者からの相談が急増しており、10代で家を追い出され、友達の家に泊まっている子どもや若者もいます。
また、ひとり親や非課税世帯が支援を受けるために設定された世帯収入の基準が低く設定されています。そのため、生活費や学費のために子どもが働くと世帯収入が増加し、支援が打ち切られてしまうことがあります。これにより、働けるひとり親の父親や母親も就労時間を短縮することが多くなっています。
辻氏は「18歳までの子ども支援には様々なメニューがあるが、19歳以降の子どもやその親への支援は不十分である。現在の子どもたちの困難は、親やさらにその上の世代から引き継がれているため、3世代にわたるソーシャルワークが必要である」と述べられていました。子どもの貧困を解決するためには、親の貧困解消が不可欠であると強調されました。
2点目は、子どもの権利についてです。「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」は、世界中の子どもたちが安全な環境で安心して生活できるように保護されるべき権利について定めた国際的な合意であり、批准国の政府にその実施を求める法的拘束力があります。
1989年11月20日の国連総会において全会一致で採択され、日本は1994年に批准しました。 しかし、日本の子どもたちが育つ権利は十分に守られていないことが多いと指摘されています。
子どもの権利の中で、辻氏はヤングケアラーについても言及されていました。ヤングケアラーは未成年のため、支援をしたくても親権者の同意が必要となることが課題です。 子ども家庭庁のヤングケアラーの事例には、親の精神的なサポートや感情面でのケアが必要であることが示されていますが、心理的虐待については記載がありません。
2024年6月5日には「ヤングケアラー」を国や自治体による支援の対象として対応を強化することが明記された子ども・若者育成支援推進法の改正法が可決、成立しました。
改正法では、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義し、国・自治体などが支援に努めるべき対象に加えたほか、年齢を明記しないことで18歳以上にも切れ目のない支援が継続できるようにすることとしています。
尼崎市では、ヤングケアラーに対する居場所事業を実施しています。
3点目は、親に頼れない子どもの居場所についてです。ユースセンターの紹介があり、両親がいても教育虐待を受けているためユースセンターが居場所となっている子どもたちもいるとのことです。青少年健全育成条例により未成年者を一時的に保護する場合、その未成年者を長期間預かることはできないという課題もあります。
また家に居場所がないなど困難を抱える子どもたちは、役所に頼るよりもSNSで頼れる大人を見つける方が早いです。そのため、危険な状況に巻き込まれる子どもたちも多くいます。また一時保護された子どもたちはスマホを没収されるため、それを嫌がって支援を受けたがらない子どももいます。
2022年11月から孤立する10代の支援を行なう認定NPO法人D×P(ディーピー)が、経済的困難など様々な境遇によって孤立しやすい若年層が自分の体と心を守れるようにサポートしています。
医療従事者が定期的に訪問し、若者たちとの対話を通じて身体的な不調をはじめ妊娠不安や性に関する悩みなどの話しづらい悩みに寄り添い、必要に応じて医療機関と連携できます。
このような若者が心や体について相談できる場であるユースクリニックは、スウェーデン発祥です。しかし、青少年健全育成条例により、未成年者を一時的に保護する場合、その未成年者を長期間預かることはできないという課題もあります。
認定NPO法人D×P(ディーピー)のホームページでは、以下のように述べられています。
4点目は、小学校での人権教育についてです。辻氏は「卵子と精子が受精した瞬間から命であり、究極の人権教育は命の尊厳に基づくべきだ」と述べました。辻氏が関わっている大阪市立田島南小学校(旧生野南小学校)と、昨年度から一貫校となった市立田島中学校で行われている「生きる」教育についても紹介がありました。
かつては年間100件を超えていた子ども同士の暴力が激減し、学力も向上したことで、全国から注目を集めている小学校です。学校で行われている「生きる教育」という独自の授業では、「自分の心と体」そして「人とのつながり方」を中心に教えています。
5点目は、SOSを求める子どもたちの支援方法についてです。「役所に頼るよりもSNSで支援を見つける方が早い」とされるため、危険な状況に巻き込まれる子どもたちも多くいます。一時保護された子どもたちはスマホを没収されるため、それを嫌がって支援を受けたがらない子どももいると聞きました。
最後に、現在の尼崎市でのひとり親支援の課題についてまとめます。現制度では、特定のカテゴリー(ひとり親・配偶者からDVを受けたと認定されている人など)に属さないと支援が受けられない状況があります。
支援が受けられないケースは、調停中や別居中のひとり親です。正式なひとり親とみなされず、支援が受けられないことです。保育園に入所する際は、「ひとり親の加点がないため、働かざるを得ない状況にあるにもかかわらず、保育園の待機児童となってしまうケースもあります。
配偶者からの心理的暴力や経済的暴力を受けている場合も支援が受けづらいです。身体的暴力の場合は、医師の診断書や警察の相談記録が証拠となりますが、心理的・経済的暴力ではそのような証拠が得られないことが多いです。
自治体から支給される子どもの手当に関しても課題が残っています。児童手当は世帯主に振り込まれるため、経済的虐待を受けていても父親から母親に振込先を変更することができません。さらに、離婚していないため、ひとり親として受けられるはずの児童扶養手当も受給できない状況があります
子どもへの手当が国の制度であるため、尼崎市だけで振込先を変更することはできないと担当課から回答を得ています。調停や別居中の場合、ひとり親とみなして保育園入所の加点をするかしないかは、自治体ごとに異なります。保育園の入所に関する要望は引き続き尼崎市に行っていきます。勉強会で学んだことを尼崎市政に活かしてまいります。
ひとり親家庭支援|尼崎市公式ホームページ (city.amagasaki.hyogo.jp)