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研修会報告 決算質疑特別研修 尼崎市議会議員 池田りな
こんにちは。尼崎市議会議員 池田りなです。研修会の報告をいたします。
【開催概要】
日時:2024年9月7日(土)10:00-16:30
主催:地方議員研究会
テーマ:決算質疑特別研修
講師:木村 亮太(元枚方市議会 議長)
【概要】
元枚方市議会議長であり、3期12年の経験を持つ木村亮太氏が使用していた質疑方法やテクニックについてお話を伺いました。
通常の決算質疑は、事業確認や前年度比較などが主な内容です。しかし、今回の講義では、こうした従来の方法から脱却し、目標や実績、そして成果を引き出しながら行政を動かし、議員としての責務を果たす方法が紹介されました。
具体的には、質疑のための着眼点、施策評価、総合戦略、事務事業シートからの質疑の作り方、さらには財政状況資料集や決算カードの見方についても学びました。
まず、決算質疑の概要について述べます。決算質疑の目的は、前年度の事業内容を確認し、財政の使い方が適切であったかを判断し、認定するかどうかを決定することです。前年度の事業効果を明らかにし、次年度以降に反映させることが求められます。以下に、議会の年間スケジュールを示します。
3月議会(予算審議)
新年度の事業や予算を決定
6月議会
次年度の事業と予算を少し検討し始める
9月議会(決算審議)
昨年度の事業と予算を振り返り、次年度の予算を本格的に検討
12月議会
来年度の事業と予算の議論が大詰め
3月議会(予算審議)
これまでの議論を踏まえて次年度事業・予算が提案・決定
市議会では、決算を審議するために決算特別委員会が設置されます。以下に、決算審査の流れを示します。
1. 市側から市議会議員への説明
市から市議会議員に対し、1年間でどの事業にいくらの予算が使われたかについて説明が行われます。
2. 決算特別委員会の設置と分科会審査
監査委員を除く全ての議員で構成された決算特別委員会が設置されます。この委員会は、常任委員会と同じ所管および議員構成の5つの分科会を設置し、年間を通じて同じ議員が決算や予算、その他の案件を審査します。各分科会では、市のお金の使い道が正当かどうかを確認します。
参照:H31_shigikaikousei.pdf (city.amagasaki.hyogo.jp)
3. 総括質疑
分科会での審査が終了した後、市議会議員全員が集まり、市に対して質問や要望を伝える機会が設けられます。
4. 意見表明
上記1~3を踏まえ、市議会議員がそれぞれどのように感じたかを市に対して意見として伝えます。これは各会派ごとに行われ、無所属議員には発言の機会がありません。
5. 採決
最後に、市議会議員全員で賛否を採決します。賛成が多数であれば、市のお金の使い方に問題がないと認められ、反対が多数であれば改善が必要であると判断されます。
参照:決算・予算の審査方法|尼崎市公式ホームページ (city.amagasaki.hyogo.jp)
次は、勉強会を踏まえて分科会と総括質疑で取り上げたファミリー世帯の定住・転入促進について述べます。本市では5歳未満の子がいる世帯をファミリー世帯と定義しています。令和5年のファミリー世帯の転出超過数は180世帯です。
参照 p10令和6年度 施策評価結果 (令和5年度決算)city.amagasaki.hyogo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/038/822/R6all_P1-26.pdf
今回の分科会と総括質疑の前は、担当の職員さんと話し合いを重ね、数字や他都市の調査も行い、質疑に臨むことができました。
本市ではファミリー世帯の定住・転入促進を最重要政策に位置付けています。令和5年度 包括外部監査の結果報告書においては以下のように述べられています。
“市は、第6次総合計画における「まちづくり構想」において、いわゆるファミリー世帯の転出超過を市の克服すべき重要な課題として挙げており、近時、尼崎 市に隣接する大阪府において高校授業料無償化というファミリー世帯にとって魅力的な施策も打ち出される中で、将来の市の税収、活気にあふれたまちづくりの 観点等から、ファミリー世帯の転出を食い止め、転入を促すための施策について、 適正かつ効果的な事務執行が行われているかどうかを検討・検証することは有意義であると考えられる。”
子ども政策の自治体間競争は加速しています。近隣他都市が実施する、0歳から2歳児の保育料無償化、給食無償化、子ども医療費無償化などは、ファミリー世帯から魅力的であると分かっていますが、本市では財政上すぐに実施することはできません。
令和2年3月実施の「尼崎市ファミリー世帯に対するアンケート調査 報告書 」では「尼崎市外に移りたい」「戻りたくない」理由として上位に挙げられたのは、①治安・マナーが悪い、②親族 との距離が遠い、③子育て支援への不満、④学校教育への不満、⑤住宅の条件への不満、⑥通勤・通学の不便さへの不満、⑦自然環境を含めた環境面への不満、 ⑧尼崎に愛着がわかない等があげられています。
まず、私が所属する建設消防分科会では、治安やマナー改善に関して2点取り上げました。
1点目は、効果が視覚的にわかるマナー啓発活動についてです。本
市は令和6年度に、マナー改善を目的としたのぼりやティッシュ配
り、声優の声による啓発活動などを実施しました。年2階受動喫防止等ののぼりを195本設置しています。しかし、その効果が目に見えにくいため、私は市に対して、効果が目に見えてわかるマナー啓発活動を行うよう要望しました。
具体的な提案としては、毎月〇日を「尼崎クリーンデー」としてゴミ拾いを行うことや、犬の散歩をしている人々に「わんわんパトロール隊」としてパトロールを行ってもらう活動を挙げました。これにより、尼崎市のマナー改善の取り組みがメディアに取り上げられ、市内外に広く伝わることが期待されます。アイディア次第では、コストをかけずに行えるマナー啓発の手段は多くあります。イベントがどれだけメディアに取り上げられたかを効果測定の指標にすることもできます。
2点目は、ファミリー世帯の意見を取り入れて喫煙所の設置を決定することです。本市にファミリー世帯が住みたくない理由の一つに、たばこに関する問題が挙げられています。
現在、市内の13駅中〇駅に喫煙所が設置されていますが、全駅に設置されない理由として、市は町会などの地域住民からの反対を挙げています。
私は、本市がファミリー世帯を呼び込むことを最重要政策としているのであれば、ファミリー世帯の声を直接聞き、その意見を喫煙所の設置やたばこのマナー改善に反映すべきだと要望しました。市が補助金を提供している子育て団体が多数存在するため、そうした団体に協力を依頼すれば、意見を集めることが可能です。反対意見があったとしても、ファミリー世帯の意見を尊重して喫煙所を設置することができると考えます。
総括質疑では、ファミリー世帯に魅力的な教育環境の発信について2点取り上げました。1点目は、通勤に加えて通学の利便性の発信です。特別な教育施策を実施していくことは難しいですが、尼崎市には13の駅があり、神戸・大阪・京都・奈良への乗り換え不要で移動できる利便性があります。尼崎市の計画では主に通勤の利便性が強調されていますが、通学の利便性についてももっと発信すべきだと考えます。
令和6年5月1日時点で、私立小学校など尼崎市立小学校以外の小学校に通う児童は全体約2万人中約1.5%、私立中学校など尼崎市立中学校以外の中学 校に通う生徒は全体約1万400人中約10%です。私の元にも「私立中学受験を考えているので、中学受験をする児童が多い学校を教えてほしい」といった相 談をいただくことがあります。
また、他都市から尼崎市に引っ越してきた子育て世帯の中には、私立小学校への通学を目的とする家庭も少なくありません。これらの世帯は比較的所得が 高く、市税収入の増加にもつながります。
私から市に対して、公教育を推進する立場から、私立学校への通学の利便性を強調することは難しい点は理解しますが、ファミリー世帯への定住促進の一環として、私立学校への通学の利便性をより積極的にアピールすべきと提案をしました。市からは、通学の利便性もアピールしていくと答弁いただきました。
2点目は、ファミリー世帯に特化した本市の子育て情報の発信についてです。現在「尼崎市 子育て」と検索すると、尼崎市のホームページ・いくしあ(子どもの育ち支援センター)・AMANISM・あまがさき子ども・子育てアクションプラン・あまっこいきいきナビが1ページ目に表示されます。
「明石市 子育て」「神戸市 子育て」と検索すると市が作成したファミリー世帯向けの情報発信ページが表示されます。これらのサイトでは、妊娠出産期から18 歳までの子育て情報が掲載されています。
令和4年度から総額1587万円をかけて「AMANISM」という定住・転入促進情報発信サイトAMANISMが運営されています。私はこのサイトが定住・転入促進に寄与したとは考えていないため、市に対して具体的な効果と課題を聞きました。
市からは、令和5年度のアクセス件数は年間で約16万 5千件となっており、定住・転入を考えるきっかけとして、一定の効果があるものと見込んでいると答弁がありました。市をあげて、このAMANISMサイトを運営しているのであれば、引っ越してきた世帯にアンケートを取ってこのサイトが効果があるのかないのか検証すべきと提案しました。
次にファミリー世帯に発信する情報の内容についてです。教育環
境について、 公立小中学校の全国学力テストが平均以上であるこ
とを訴えるだけでは、ファミリー世帯の定住や転入促進に対しては十分でありません。
保護者から要望の高い子育て環境は、学力に加えて子どもが生きる力を身につけることです。生きる力を身につけるには、学力以外に多世代と関わり多様な経験を積むことが必要だと考えます。
「尼崎は情がありおせっかいなまち」と表現されますが、令和6年9月30日時点、市内には子ども食堂が47箇所、子 どもの居場所44箇所、子育てサークル16個 があります。地域の大人たちが子ども たちの成長を温かく見守ってくれるのが尼崎市の良さであり魅力です。
すべての公立学校で同じ取り組みを行うことは難しいですが、本市では 学校 や地域で生きる力が身につく、特色のある教育が実施されています。 学校では、農業体験や専門学生による動物愛護の授業、プロスポーツ選手 が スポーツを教える特色ある授業などが行われています。尼崎市内の各学校 では当たり前のように実施されていますが、地域の力を活かした取り組みが散りばめられています。これらの取り組みはそれぞれの学校の保護者しか知りません。
地域では、生涯学習プラザなどで尼崎市が後援する民間団体による特色ある教育を受ける機会が毎週のようにあります。 例えば、2024年夏には、小学生 対象にキッズマネーステーション親子講座「日本のお金・世界のお金」や高校生 を対象に日本政策金融公庫と尼崎信用金庫の方が講師のビジネススクールも 開催されました。既に尼崎市では、地域の力を活かした特色ある教育が行われていますが市内外のファミリー世帯に十分伝わっていないのが現状です。
私から市に対して、学力が平均以上であることに加えて、既にある尼崎市の魅 力的な子育て環境を市内外に発信すべきと提案しました。市からは、学力以外にも特色のある授業や地域の子どもの見守りの取り組みなど本市の魅力的な子育て環境についてAMANISM・市報・様々なメディアで発信していくと答弁いただきました。
最後に決算質疑に限らず当局から「検討します」「調査研究します」といった答弁、議員の意図する質問と当局の答弁がかみ合っていないことが非常に多いです。そこを実施すると答弁してもらうためにはこちらがどういう質問をするかで変わってくるとも改めて気づきました。勉強会で学んだ内容を尼崎市政に活かしてまいります。
参照
監査結果等(令和5年度)
https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/shisei/kansa_joho/114kansa/1033779/1036904.html
添付資料
令和6年度施策評価結果(令和5年度決算)の公表 p86-87 p114