空飛ぶソーセージ
昔喫茶店でアルバイトをしていた。
今のようなスタバみたいにオシャレではなくサイフォンでコーヒーをたてる昔ながらの喫茶店。
お客様は常連さんしか来なくて暇。ホントに暇。お給料も安かったけどその分アットホームで年に2回お食事会があった。喫茶店の専務さん(マスターのことを専務さんと呼んでいた。ひまわりのワンピースが特徴)の親族がレストランをやっていてそこからのケータリング。暇なお店はとっとと閉めてケータリングの料理をお店に運ぶ手伝いをした。オードブルやハンバーグやポトフなど料理はどれもとてもおいしい。ブュッフェでよくある銀の大きな入れ物に料理が入っていてそれを運ぶ。
察しの通り(察してないかもしれないけど)料理がまあまあ重い。私はソーセージが入ったポトフを運んでいた。ポトフとは野菜やソーセージをスープで煮込んだもの。おいしい。
察しの通りそれを持ったまま転んだ。階段に気づかずに歩いてたから。
ソーセージは吹っ飛び、スープは絨毯に吸い込まれ、野菜は散り散りに。
私は真っ青。専務さんも真っ青。
後にいた友達大笑いしたいのをこらえてる。
その時の専務さんの行動が早かった。素早くソーセージを拾い「リンちゃん、洗って!」「はい」
ソーセージを水洗いし(もしかしたら野菜も水洗いしたかも)コンソメスープを素早く作り何事もなかったかのようにお店に並べた。
その後のお食事会のことを全く覚えてないのだけどたぶん自分がひっくり返したポトフは責任を持って率先して食べたと思う。
人間、穴があったら入りたい思い出は都合良く忘れるものだ。
なぜこれを書いたかというと、その友達の誕生日が近かったのでLINEしたら昔話に花が咲きこんなことを言ったからだ。
「あの喫茶店でのバイトそんなに長くやってないけどいろんな経験したよね。特にリンちゃんがポトフをぶちまけた事件は一生忘れんわー!」
一生の思い出になってくれて私もうれしい。