Podcast News-ニューヨークタイムズが力を注ぐ音声コンテンツ事業
こんにちは。アライ@翻訳です。
(音声版でも配信しています。リンクはこちら)
さて、今回はPodcast Newsのご紹介です。
Podcast Newsとは
ポッドキャスト関連のニュースをお伝えする記事です。海外の記事からポッドキャスト大国であるアメリカの動向や世界のポッドキャスト事情など、国内外幅広い情報をまとめています。
以前の記事はこちらのマガジンよりご覧ください。
今やアメリカ国内でニュース系ポッドキャストのランキングでは1位常連のThe Daily。New York Timesが2017年から配信しているニュース番組です。ポッドキャストのヘビーリスナーでなくとも、タイトルを聴いたことある、と言う方もいるのではないでしょうか。
そんなNY Timesから7月末に大きなニュースが飛び込んできました。
Serial Productionという人気ポッドキャスティング会社の買収です。
1.Serial Productionとは
この会社、「Serial(シリアル)」という史上一番ダウンロード(8000万回以上)されたと言われている報道ジャーナリズム系のポッドキャストの制作会社なんです。
シーズン1では1999年にアメリカで起こった女子高生殺人事件を掘り起こし、有罪判決を受けた女子高生の元カレの司法判断にまで影響を与えたのでは?と言われるほど話題になりました。
この番組の制作者であるジャーナリストSarah Koenig(サラ・ケーニッヒ)の警察のレベルを超える調査能力と根気強いジャーナリズム精神が詰まった一本で、True Crimeというポッドキャストのジャンルを、この番組が作り上げたとも言っても過言ではありません。
この制作会社、今までに3シーズンほどリリースしていますが、どれも1つの事件を1シーズン丸ごと使って徹底調査して報道していくタイプなので、ヒト・モノ・カネがものすごくかかるんです。
2.買収それぞれの狙い
今回の買収はSerial Production側にとって、リソースのあるNew York Timesと協力することで番組制作のスピードアップや、NY Timesの読者やリスナーをSerial側へ誘導する狙いがあるようです。
また、近年オーディオコンテンツに力を注いでいるNew York Times側からすると、自社コンテンツの中に人気ジャーナリズム系の制作者が加わることで、更なる内容の充実だけでなく、ニュースメディアによる読者の囲い込み競争に、オーディオという面から頭一つ抜き出る事が出来るのではないでしょうか。
3.買収後、リリース一本目のポッドキャスト
そして、買収後1本目のポッドキャストが早速リリースされました。タイトルは「Nice White Parents」。
早速、ロゴにもNY TimesとSerial Productionの両方が表示されています。
この番組、予告編が一足先にリリースされていたんですが、その時点で本編を聴いてもいない人たちから、タイトルだけで賛否両論な意見であふれかえっていたようです。
訳すと「素敵な白人の親たち」。ニューヨークのブルックリン地区に実在する公立学校とその教育システムに、人種や権力が及ぼす影響に迫ったノンフィクションの番組です。白人の大人たちが持つ権力と影響力、そしてそれにかき回される他の人種の子どもや親たち。
教育を受ける権利は貧富の差にかかわらず平等にあるべきという大前提がありつつも、学校経営としての需要と供給のバランスに人種が影響している事実など、アメリカの持つ根深い問題に教育と言う角度から問題提起する番組です。
全5話でまとめられたエピソードは、一つ一つが重く、まさにSerial Productionの骨頂とも言える番組構成が味わえます。
4.音声コンテンツ+の流れ
現在NY Timesは20を超えるポッドキャスト番組をすでにリリースしていますが、今回の買収以外にも、長文記事を音声コンテンツに変えるスタートアップAudm(オードゥム)を今年3月に買収するなど、新聞社として抱える豊富な文字コンテンツ生かし、効率よく音声コンテンツを制作する動きも出てきています。
また一方でSpotifyは、ビデオポッドキャストの機能を発表し、オーディオだけでなく動画コンテンツにも手を伸ばし始めています。
メディア業界の中で、「音声だけ、動画だけ、文字だけ」という単独のコンテンツだけに特化するだけでは既に生き残りが難しく、人間の持つあらゆる五感に対応できるコンテンツをいかに効率よく発信するかが1つの流れになっているように思われます。
その中でも、Serial Productionの買収は、質の良いコンテンツをいかに早く効率よく配信していくか、という点で、両者に利点が大きい買収だったと思われます。
5.最後に
今回のPodcast News、いかがだったでしょうか。
個人や非営利団体も多いポッドキャストのクリエイターは、コンテンツの質と配信頻度の維持に常に頭を抱えています。そんな中、今回のニュースは独立系ポッドキャスターにとって、一つの生き残りの術を見せられたショッキングなニュースだったと思います。
今後も、様々な買収や会社間の協力体制など、注目なポッドキャスト業界のニュースを紹介していきたいと思います。
それでは、次回のnoteで。