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クソ上司とキムチカルビ丼

私のクソ上司は牛丼に取り憑かれている。

「早い!安い!旨い!」の三拍子は、昭和を生き抜いたサラリーマンの代名詞と言っても過言ではないらしい。

取引先への訪問に駆り出された時の昼食は、こちらの要望すら気に掛けず、決まって牛丼屋さんに吸い込まれてゆく。

私は、一応女子なんだけどな…

クソ上司のお気に入りは、キムチカルビ丼と卵、味噌汁のコンボらしい。

あれだけ牛丼を語っておきながら注文したのはキムチカルビ丼だった。まさかの意外性に驚いている。

そういえば、ギャル曽根ちゃんも、キムチカルビ丼が好きだって紹介していた。

敢えて別皿で注文して、まずキムチとカルビの肉汁だけを、ご飯にかけて均等に混ぜ合わせる。キムチが結構辛いらしく、ご飯に混ぜて合わせることでマイルドになるらしい。そして最後にカルビを乗せて食べると美味しいってね。

という豆知識をクソ上司に披露しようと思ったが、きっとクソ上司にはクソ上司なりの食べ方があるだろうから余計なことは言わないようにしている。

私は、ハンバーグ定食にしようか迷ったが、オーソドックスな牛丼、卵、お味噌汁を注文した。

「牛丼を食べる前に卵を掻き混ぜる」これはきっと、誰しもが行うルーティンだと牛丼初心者の私は理解しているつもりだ。

けどクソ上司は違ったのだ!

卵を掻き混ぜることなく、そのままどんぶりへ投下しているではないか!

これが足繁く通う人の食べ方なのか!

もしかして、これが伝説の「月見キムチカルビ丼」なのか?!

あのギャル曽根ちゃんも、そんな食べ方していなかったのに!

思わず周りを見渡したが、卵ダイレクト派は確認できる範囲ではいなかった。

思い切ってクソ上司に聞いてみることにした。

「なんで卵を掻き混ぜないんですか?もしかして、美味しい食べ方とか?… 」

するとクソ上司から帰ってきた回答は、

「そりゃ、もったいないからだろ。混ぜると小皿に卵が残っちまうからな。混ぜないと、ほら、全く残ってないだろ?なっ!」

と、卵の入っていた小皿を、顔ギリギリまで近づけられた瞬間…

「このクソ上司、家では良き夫であり、良き父親なんだろうな。」と、ふと思った昼下がりだった。

おしまい。


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RiNA@ものかきのまねごと
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