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『星美くんのプロデュース』連作SS「心寧をキラキラSNS女子にしよう作戦(2/10)」
二話『原宿・ANANOKUMA CAFE』
「というわけで、『心寧をキラキラSNS女子にしよう作戦』のために原宿に来ました!」
「……星美くんって、女装するとテンション上がりますよね」
「心寧はなんかテンション低くない?」
映えスポット巡り、ということでせっかく可愛い格好をしてテンション上げてきたのに、当の心寧はいまいち冴えない顔をしている。
「だって、わたしみたいな陰キャが今から世の陽キャたちの真似事をする、って考えると……」
「――それじゃあ早速行こっか! 一か所目は可愛い感じのカフェだよ!」
うじうじし出すと止まらない陰キャの手を引きずって目的地へと向かった。
「――ここが目的地、『ANANOKUMA CAFE』です!」
じゃん、と掌で示した先には、グリーンの塗装が目にも鮮やかなこじんまりとしたお店。
「テイクアウト専門で、お菓子とかドリンクとかが買えるんだけど、その渡し方が面白いんだよ!」
「……ホントにここ映えるんですか? なんか奥の壁とか穴空いてるんですけど……ヤバいお客さんとかいるのでは……?」
「そういうデザイン! ちゃんと可愛いお店だから!」
先に機械でドリンクを注文し、お店の壁をぶち壊すモンスター客の存在に怯える心寧の背を押して壁の前に立つ。すると――
「……! わぁっ」
小動物のようにきょろきょろと周囲を警戒していた心寧の目の前、――壁に空いた穴の向こうから、ふわふわもふもふとした何かが出てきた。
「ぬいぐるみ……? あ、クマ、ですか……!?」
「正解! ここは着ぐるみのクマの手が商品を渡してくれるカフェなんだよ! 握手とかもできるんだって! ほら、写真撮ってあげるから受け取って」
穴から伸びるもふもふのクマの手からドリンクを受け取った心寧が、もう片方の手で恐る恐るクマの手に触れると、彼女の手をクマの手がぎゅっと握り返す。
「ぅへへ、ふわふわです……」
クマの手と戯れる心寧の締まりのない笑顔を無事写真に収め、ボクらはお店を後にした。
「いいお店でしたね……!」
「でしょ?」
「はい……! 生身の人と顔を合わせなくて済むので……!」
「理由が陰キャ過ぎる!」