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『星美くんのプロデュース』連作SS「心寧をキラキラSNS女子にしよう作戦(1/10)」

一話『SNS辛い』


「心寧ってSNSやってたっけ?」

 きっかけは、その何気ない一言だった。

「な、わ、わたしだって今どきの高校生ですし……! SNSくらいやってますけど……!?」
「へー、どんな投稿してるの?」
「…………してないですけど」
「え? あ、見る専門ってこと?」
「見…………もしない、ですけど」
「よくそれで『やってる』って言えたな……」

 呆れたように言うと、目の前の少女――心寧四夜はバツが悪そうに目を泳がせる。

「だ、だって、陽キャの人たちみたいに映えスポットとか遊びにとか行かないから投稿することないですし……かといって他の人たちの充実してる投稿を見てると自分がそれとは無縁な陰キャだってまざまざと思い知らされて辛くなってくるのでそっとアプリを閉じます……」
「もうアカウント消しなよ……」

 なんか勝手に一人で苦しくなっている心寧。お察しの通りの陰キャだが、そんな彼女と僕は現在とある契約を結んでいる。

 それは、彼女に僕――星美次郎が女装している、という秘密を守ってもらう代わりに、彼女が『可愛く』なれるようプロデュースする、というものだ。

「ぅぅ、でも、アカウントを消したらこの高度に情報化された社会で誰とも繋がる術がなくなるって考えると……」
「いやフォローもフォロワーもゼロじゃん。もともと繋がってないじゃん」
「んな、なんでそんなひどいことを……!?」

 思わず指摘すると彼女は声をぷるぷると震わせる。

「ごめんごめん。これから繋がる可能性はゼロじゃないもんね」
「そ、そうですよっ……」
「まぁ何も投稿しない限り、ほとんどゼロに近いけどね」
「フォローしたいのかとどめを刺したいのかどっちなんですかぁ!?」

 心寧が泣きそうな顔をして睨んできたので、彼女を宥めるべく提案をする。

「それじゃあ今度一緒に映える写真とか撮りに行く? そうすれば投稿できるでしょ」
「……い、いいんですか?」
「まぁこれも陰キャ改善の一環と考えればプロデュース契約の内だしね」
「つまり、わたしのことをキラキラSNS女子にしてくれるんですね……!」
「理想だけやたら高いのやめて?」




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