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午前0時、駅まで来てよ

何のフレーズだったか忘れたが、ふと思い浮かんだ。そしてたまたま読み返していた自分のセクレポに午前6時の文字。

あの頃は夜通しSEXして朝帰りすることが日常茶飯事だった。今となっては抱いた男の名前と顔はほとんど忘れた。というか覚えるには多すぎた。だけど「新宿で出会った映像系男子のイチモツはこんなで…」となぜか彼らの息子のことはよく覚えている。

そんな私のSEX史上1位2位を争うほどの息子を持った男との情事は「こんなものか」と思うほど呆気なく終わった。

彼との、俗に言う”都合のいい関係”は3年ほど続いただろうか。出会いはマッチングアプリで、最初に会った時は「思ったよりかっこよくないな」という印象だったので、まさか彼とこんなに長く続くとは思っていなかった。会えば会うほど味が出ると言うか、写真よりキラキラ感が薄かっただけでよく見ればタイプの顔だったし、何よりSEXのフィット感がたまらなく好きだった。

お互いしたい時に連絡し合いどちらかの家で営むのがお決まりになっていたが、次第に私の欲求や都合はスルーされ彼のしたいペースや予定に結果的に合わせられていくことに違和感を覚えるようになった。心の中では「なんで私がしたいときには断られるのに自分(彼)がしたい時は何がなんでも通すのか!」と憤りながらも身体の相性が良すぎたのと顔が好きだったのとでなかなか切れずにいたある日、ついにその時がやってきた。

彼は飲みに行って酔うと私に電話をかけてくる癖があった。(翌日には話した内容はおろか電話をかけたことさえも本人は覚えていない)その日も24時近くに電話をかけてきた。

彼「今から行っていい?」
私「飲んでるから足ないじゃん」
彼「大丈夫。酔ってないし行けるよ」
私「飲酒運転するつもり?」
彼「大丈夫だって。そんなに言うなら駅まできてよ。何なら俺ん家来てよ〜?」

そのとき私の中で何かがプツンと切れた。とても鮮やかに。なぜこのタイミングだったのかは今でも分からない。「いい加減にして」と言い残し電話を切った私に「駅まできてよ」等のLINEが次々と届いたが全部スルーした。翌朝、謝罪とお詫びに何でも言うことを聞くという旨の連絡が来たけれどそっとブロックした。暗闇でも性感帯や身体の隅々まで特徴が分かるくらい何度も抱き合ったのに、彼とはボタン1つで終わる程度の関係だったことを改めて気付かされた。

都合のいいSEXを望んで始めた関係だったのに、気づけば相手のペースにのまれ彼の容姿と息子に沼ってた自分がいた。定期的にSEXできる良竿の男を失ったからなのか、それともちょっとでも好意を持っていた男を失ったからなのか少しだけ泣いた。悲しみとも寂しさとも切なさともつかない涙だった。

いつか「駅まで来てよ」と遠慮なく言い合える相手に巡り合えることを願う午前1時。

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