PlayStationと私の無限大
振り返ってみると、PlayStationとの出会いはもう20年くらい前になる。
最初はPS oneからスタートして、PS3は買っていないもののPS2、PSP、PS4とやり続けてきた。
それぞれ思い出はあるが、色濃く残っているのはやはり2と4だ。
『ゲームの思い出』と言われて想像するのは、その当時一番ハマってたゲームは何だとか、誰とやっていたとかであろう。
しかし、PlayStationはそれをさせてくれない。手に入れる前から既に物語は始まっているのだ。
2が流行っていた当時の私は中学生だった。ヤンキーから放課後の校門裏に来いだなんてありがちな呼び出しをくらったこともあった。
無視した。
家でゲームやってた方が遥かに生産的だから。メンタル強くて良かった。いや、そんなことは今どうでも良い。大切なのは2との思い出だ。
当時、めちゃくちゃ仲の良い友だちがいた。そんな友だちがある日私にこう言った。
先着50人でPS2が安く買えるらしい!
一緒に並んでくれ!
私は既に2を持っていたが、二つ返事でOKした。なんか楽しそうじゃん。
今の私なら開店2〜3時間前から並べば良いかくらいに思うだろう。
だがそこは中学生、体力が違う。
開店前どころか開店日前から準備は始まる。0時を回る頃には既に列に並んでいたように思う。
これだけ早く並べば余裕だろうと思っていたが、受け取った整理券は30番台だった。周りの気合も尋常じゃなかったのだ。
結局その友だちはお得に2を買うことができた。
当然、私は既に2を持っていたのでその整理券は使わなかった。
今思えば私が並んでいたせいで買えなかった人がいたかもしれない。ごめんね。今さら遅いけど。
それからの私と友だちとの会話は面白いゲームの話が中心になった。FF10やテイルズオブデスティニー2、ヴィーナス&ブレイブス…名作だらけだ。
そこからまた10年以上経った頃、私は社会人になっていた。
大学受験をきっかけにほとんどゲームをやらなくなっていたが、モンハンのPS4版が発売されると聞いたときには心踊った。モンハンもまた中高時代にどハマりしたゲームのひとつだからだ。
オンラインプレイで自宅にいながら友だちとゲームができる。協力プレイをするために誰かの家で集まらなければならなかった当たり前が変わった。
『一狩り行こうぜ』
いいぜ、やってやる。すぐにでも。最高だな。
そんな思い出の詰まったゲームが美しい映像とともにやってくる…期待しかないだろ?
モンハンをやるために4を買うと決意したが、今の5までとは言わないものの4を手に入れるのにも当時はそこそこ苦労をした。
都内の電気屋に手当たり次第に電話をして、
PS4の在庫はありますか!?
PS4の在庫は…!?
あ、ないっすか、そっすか…
を何度か繰り返した。
そして遂にビックカメラから出てきた私はスキップしていたかもしれない。童心に帰るとはあのことだったのだろう。
4を手に入れてからの日々はまさにモンハン漬けだった。学生時代には整えるのが難しかったネット環境だって今なら余裕だ。ゲームを趣味と呼べる生活が始まった。
どれくらいモンハン漬けだったかと言えば、上司から仕事の依頼があればクエスト受注の音楽が脳内再生するくらいには日常生活に支障をきたしていたし、極ベヒーモスを倒すために1日19時間プレイした時には本体がオーバーヒートしたりもした(本体の上に氷を乗せるという超古典的方法で静まった)。
極ベヒーモスをきっかけにFF14も始めた。これは歴代でも最高のRPGだ。人生のいろいろが詰まってる、もうひとつのリアルだ。
他にもいろんなゲームに手を出して、今じゃ苦手だったFPSも始めてしまった。当分抜け出せそうにない。これからきっと上手くなってみせる。
PlayStationには限界がないのか…?
と思った矢先、無限大とも思われたPS4にも終わりがやってくることになる。
定期的なネット情報のチェック、店舗への電話を経て…
今日、今この瞬間、在庫が…ある!
駆け出さずにはいられなかった。
定時を過ぎるとともに飛び出した。
目的地までの最短ルートは!?
きっと1時間ももたないだろう、時間との勝負だ。
電車から降りて風のように走り抜けたあの瞬間、ひょっとしたら私も限界を超えていたのかもしれない。いつもより速く走れた気がした。気持ちだけ身体から抜け出して、前のめりに突っ走っていってしまった気さえする。
やっと着いた。そこには在庫が…
あった!!!
今だ、今しかねぇ!!!
レジには既に並んでいる人が数名…
くっ、間に合うのか!?
どうなんだ!?
呼吸を整えつつ、ハラハラしながら自分の番が来るのを待つと、遂にその瞬間が訪れた。
ヨドバシカメラから出てきた私の手が震えていたのは、抱えた紙袋の重さからくるものでは決してない。
紙袋の中には大きな箱がひとつ。
そこには『PS5』の文字が刻まれていた。
また限界のない日々が始まる。美しい映像と、これから生まれる楽しい思い出とともに。
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