海外旅行で好きな国を選べる贅沢さに気づいた|エストニア日記 #4
こんにちは、スロベニア🇸🇮にあるリュブリャナ大学でインダストリアルデザインコースに留学中で、現在はエストニア🇪🇪のタリンにある、エストニア芸術アカデミーに交換留学中のりんです。
突然ですがみなさん、「日本のパスポートが世界的に強い」というのはなんとなく聞いたことがあると思いますが、強いってどういうことかって知ってますか?
いやこれ私が無知だっただけで、常識なのかな?毎年いくつかの機関が出している、「パスポートランキング」というものをもとにしている言説なのだけど、
https://www.passportindex.org/byRank.php
正直、私は海外に来るまで「パスポートが強い」という意味を全然わかってなかった。単純に日本の信頼が厚くて、海外に行ったときに優しくしてもらえるとか、不法滞在を疑われづらいって意味かと思っていた。
でも実際には「パスポートが強い」が意味するのは、「短期ならビザなしで入国できる国の数が多い」ということ。
さらに正直言うと、ビザというものも留学するまであんまりどういうものかわかってもなかった。(海外渡航に対して無知すぎるな・・・)だから、杉原千畝がユダヤ人を救ったとこまでは知ってても、領事館代理として当時どうやってユダヤ人を救ったのかのかちゃんと理解してなかった。
留学するにあたって、スロベニアのビザ(滞在許可)を取らないといけないとなって初めて、ああ、海外に長い期間いるには、大学に受かるだけじゃだめで、その国自体からも来ていいですよという許可をもらわないといけないのか!と知った。
海外には留学以前にも7カ国くらい、旅行や出張で訪れたことはあったけど、アメリカのESTA以外は特にビザが要らなかったから、考えなくてよかったのだ。海外に来てから、こっちの友達と話していて、それがいかにありがたいことなのかがわかった。
あるとき、アジアの国出身で、エストニアの企業にスカウトされてタリンで働いている友達が、「エストニアの就労ビザ取ってからめっちゃヨーロッパ旅行してるわ〜」と言ってたのを聞いた。いやなんでわざわざ、「エストニアの就労ビザ取ってから」って言い方?「ヨーロッパに引っ越してきてから」って言えばいいじゃん?ってちょっと違和感があった。でも話題も続いていたし、なんとなくその場では聞けなかった。気になってあとから調べたら、その子の国はヨーロッパに1日旅行するだけでもビザを申請する必要がある国だった。
またあるときには、いろんな国の友達何人かと一緒に話しているなかで、卒業したらお互いの国に遊びに行こう〜みたいな話をしていて、「あ、でも私はAちゃんの国に行くにはビザいるな〜」という言葉に出会ったりもした。自分の国のパスポートだと、どこにはビザなしで行けて、どこにはビザがいるか、把握してるんだ。
他にもたとえば、ある国の人が日本に来ようとしたら、日本人の身元保証人を決めて、その人から指名で招待してもらう必要がある国とかもある。なかなかのおおごとだ。それを聞いたときに、これまでそんなことを知らなかった自分にちょっとショックを受けてしまった。。。
今になってやっと、大学生の卒業旅行くらいでも気軽に、えー海外行っちゃう?どこにする??なんて話せて、ほぼ世界中の国を旅行先の選択肢として見られることって、実は特権的なことだったんだと気づけた。これに関しては、過去数十年にわたって世界各国に対して確かな信頼を築いてきた先人たちには感謝しかない。いやまじ、すでに築かれている信頼を崩さないように、あとから来る日本人のためにもちゃんとしなきゃな・・・という気にさせられる日々だ。
パスポート強さランキングの昔から今までの変遷を過去まで辿ってみたかったのだけど、その観点での集計が始まったのは2006年で、Webで全部の国をランキング形式で遡れるのだと2016年からだった。
Henley Passport Index を見てみると、2016年の1位はドイツで、行ける国は172カ国。2024年の1位はシンガポールで195カ国。こうやって見ると、世界全体で渡航の自由度はここ数年の間でもかなり増しているのがわかる。
じゃあ、ビザフリーでいけるというのは、どういうことか。
自宅に人をあげることを想定するとわかりやすいと思う。気心知れた友達ならウェルカムだけど、見ず知らずの人は嫌だろう。プロフィールや、なんでうちに来たいのかも教えてほしいと思うんじゃないだろうか。
国の場合でも同じで、相手国があなたにビザなしで短期滞在していいですよって言ってくれているということは、あなたの国がその国と良い関係性を築いており、入国する一人ずつに審査をそんなに厳しくしなくても不法滞在していく可能性が低い = あなたの国の経済や治安が安定している、と見られているということ。そう思ってくれている国の数が多いということは、いわばその国の国際社会での信頼度が高いことだと言えるだろう。
ここまで書いてきて思ったのだが、それをわざわざランキングとして表す必要あるのだろうか??各国の人に対するバイアスの原因にならないか??せめて何カ国いけるかの集計だけで良くない???
私がたまたま日本に生まれたから、どこにでも気軽にいける権利に恵まれているだけで、私自身の信頼性なんてあってないようなものなのだし、逆もまた然りなのだ。パスポートランキングが低い国の人が一概に信頼できないわけではないのに、上から並べることでそう思わせる雰囲気を醸成するリスクを孕んでしまっていると思った。考えすぎだろうか。
これまでは、大して中身も知らずに、日本のパスポートは最強らしい!強いことは嬉しい!くらいにしか考えてなかったけど、それで喜ぶことになんの意味もなかったと、エストニアでのふとした会話をきっかけに気づけてよかった。特権性ってこわ〜〜〜。
この文章で、パスポートランキングとかその評価指標について初めて知る人もいるかもしれないし、逆に新たに偏見を醸成しちゃうかもとも思って、公開することを少しためらったけど、個人的には大きな心の地震で、そのハッとした気持ちのマグニチュードを共有できたらいいなと思って書いている。
すっごい関係ないけど、パスポートについて思うことをもう一つ。
紙の搭乗券って、絶対にパスポートサイズにしたほうがパスポートに収まって持ち運びやすいって飛行機乗るたび思うけど、なんであのサイズになっちゃったんだろうね。
では、今回も読んでくれてありがとうございます!
Photo by Jessica Newendyke