【YOHAKU】刺激を求めては傷ついてしまう私の話
こんにちは、YOHAKUです。
HSPという言葉を耳にしたことはありますか?
HSP(エイチスピー/Highly Sensitive Person)は、非常に敏感で繊細な人のこと。5人に1人がHSPだとされていますが、そのうちの約30%、全人口の約6%がHSS型(エイチエスエス/High Sensation Seeking)のHSPだと言われています。別名「刺激追求型HSP」とも呼ばれ、傷つきやすい面を持ちながら、行動力もあるため周りに理解してもらいづらいのが特徴。(https://coelog.chuden.jp/child-rearing/high-sensation-seeking-hsp/より引用。)
今回は、コンテストに出場したことをきっかけに、そんなHSS型HSPである自分のことを発信し始めた1人の大学生に話を聞きました。
幼い頃から自分が明らかに少数派であると思ってきたという彼女は、
他者からの「気にしすぎ」という何気ない言葉や、
成長するとともに大きくなっていった自身の内にある二つの気質のギャップに長い間悩んできたといいます。
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「気にしすぎ」「神経質」と言われてきた
ープレゼンコンテストに出られながらHSPについて発信されていましたが、どういった経緯でお話しようと思われたんですか?
休学中に、友達にコンテストに誘われたんよね。それで出ることになって、その中で自分ができる話ってなんだろうと思ってHSPの話をすることにした。
(出場されていたプレゼンコンテストのHPはこちらです。https://bpf.tabippo.net/2022/)
HSP以外の人たちが圧倒的大多数だから何言っても無駄だろうなって気持ちはあった。
「気にしすぎ」とか「なんでそんな神経質なん」とかすごい言われてきて。
それで、私だけがこうなんじゃなくて人口のある程度の人間はこうなんだって知ってもらえたらって。
3次審査のWEB投票で、HSS型HSPの自分について発信してたら知らない人からも「自分もそうなんです」ってメッセージが意外と来たりして、
結果、言って良かったなって思ってます。
飛んで火に入る夏の虫
ー先日、HSS型HSPについてのnoteも投稿されていましたよね。引用されていた記事では、HSSが好奇心旺盛で行動力があるという特性、HSPが繊細で1人の時間を大事にする特性、2つが合わさるとアクセルとブレーキ両方がかかってる状態みたいになってしまうという説明がされていました。
(投稿されていたnoteはこちらのリンクからご覧になれます。https://note.com/nao_no_note_kamo/n/n0d69736a0395
note内で引用されていた記事もぜひ合わせてお読みください。
https://coelog.chuden.jp/child-rearing/high-sensation-seeking-hsp/)
あの記事はたまたまブレーキの表現をしてるけど、私にとっては「飛んで火に入る夏の虫」っていう表現が近いと思ってる。
火って虫には絶対危ないものなのに好奇心が止められなくて飛び込んでしまう、みたいな。
ー初めて自分がHSPかも、と思ったのはいつでしたか?
大学2年生の冬のこと。
私にすごくそっくりな友達がいて、同じようなことで同じような時期に悩んだことがあって。その子がインスタのHSPに関する投稿を見つけて「私たちってこれじゃない?」ってなったのが最初だった。
その子も好奇心旺盛な分飽き性でサークルとかは続かなくて、けど期間が決まってる課外活動とかインターンには飛び込んでいくから周りから見たら行動力あってすごいねってよく言われてるのよ。
社交的な人だなって思われてるけど実際はストレスもすごく感じていて、飛び込む前はものすごく憂鬱で。
自分では石橋をめちゃくちゃ叩いて走って渡るみたいなイメージやの。
今回のコンテスト参加もそうで、3次審査はウェブ投票があるって分かってて怖かったのに飛び込んじゃった。
だから本当は2次審査で落ちるつもりだったしすごく嫌だったけど、何かが変わるかなって半分やけになって出た。コンテストみたいな場なら公的に自分のことを発信できるから。
周囲ができること「ただ知っていてくれたら」
ーコンテストでご自身のことを発信されていますが、自分の深い部分を話すのって怖い、勇気のいることですよね。
知っててくれたら良いと思うと同時に、辛くなったときもあった。
年末年始、キャンピングカーで富士山に行って年越ししたのよ。
すごい楽しかったんやけど、24時間人と一緒で結構限界がきてて。
途中で仮眠取るわって言って1人の時間を取ってたりとかしててんけど、私がたまに1人で寝てるのを心配してるって言われて。
一緒に行った友達に、帰りの車の中で「どういうふうに俺は接したらいい?」って聞かれたことがあって。
そのときは「ただ知っててくれたらいい」って言った。
それが正しかったのかなって今でも考えるけど、知っててほしいっていうのは私にとってかなり重要なことなんよね。
その年越しの富士山の旅行から帰ってきたあとに初めて過呼吸になった。
翌日の朝、コンテストの関係で知り合ったHSS型HSPの方とZOOMで話してたんだけど、
その方が別の場所でしたプレゼン動画を見せてもらったらHSP特有の暗い部分が全面に出ていて。
そこで初めて自分の暗い部分を客観的に見た気がした。
私って多分一生このままなんだって思ったら急に不安になって呼吸がおかしくなっちゃった。
私ってこのまま一生この落差を抱えて生きないといけないのかって。
ー「私はどうしたらいい?」って質問をされたら今はどんな答え方をしますか?
「知っててほしい」って思ってるのは、今もそう。特別何かしてほしいってことはない。
でも、大多数の感覚で発言されるのは嫌かな。
「気にしすぎやねん」って言われるのも、「だからあなたがおかしいよ」って言われてる気持ちになって嫌だった。
私は自分のことが大好きだけど、自信があるかって言われると自信はない。
日本はみんな一緒がいいって傾向があると思うから、それを言葉で突きつけられている気になる。
「細かいところまで気にするねんな」くらいやったらそれはそこで終わるねんけど、
「気にしすぎ」とかそういう言い方されると、よくない意味で違うよねって言われてる気がする。
だから、23年間神経質になりすぎないようにどうすればいいかって考え続けたけど、変えられなくて苦しかった。
今はそんな自分を受け入れてる。
でもやっぱり当たり前を押し付けられるのはすごく嫌だなぁ。
少数派はそういう人が多いんじゃないかな。
あと、HSS型HSPって人と接するときに上手く境界線が引けないっていう特性があって。
HSSが「人と関わりたい」って部分、HSPが「1人でいたい」「他人から離れたい」って部分で矛盾してるのよね。
またそれを人に説明するのも難しくて。
富士山のときみたいに1人になりたいときもみんなのことは大好きだし、
単純に疲れたなってだけやからネガティブに受け止められると悲しいかも。
幼い頃から少数派だと感じていた
ー普通にしてるだけなのに「気にしすぎ」って言葉をこれまで何度もかけられてきたのかって思うと......、私だったらしんどいなと思います。
普通にしてるけど、自分が明らかに少数派っていうのは小さいころからずっと思ってきたから、自分が多分悪いんだろうなってずっと思ってた。
なんでみんなみたいにできへんねんやろうって言う気持ちがずっとあって。
言語化はできてなかったけど、
小学1、 2年生の頃って人の目を気にするって今ほどないから生まれつきの気質が出やすいと思うんやけど、大人数でなんかするっていうのがほんまにできひんくて。
人に見られているって言うのがすごく嫌だった。
授業中に漢字ドリルやってたりすると、見られへんように腕で隠したりしてて、
そしたら先生に「隠さなくていいよ」って言われるけど、じゃあ見ないでほしいって思ってた。
授業参観のとき、私が休み時間に1人で本読んでるのを見て、親が「友達おらんのかと思った」って心配したらしい。
私は友達はいるにはいたけど後ろに知らない大人たちが並んでるのがプレッシャーで。
常に背中見られてる感じがしてすごい緊張感があった。
これは私特有かもやけど、後ろに人がいっぱいいるのが嫌っていう性質もあるんよ。
イヤホンしてたら周りのことが気にならへんくなるねんけど、
エレベーターとか駅のホームはすごく嫌で、何もなく待ってる間は苦痛。
これ、そうじゃない人とか分からん人はそうなんや〜って反応になるけど、分かるって言う人も意外といた。
もちろん程度はあるし、人それぞれやけど、背中が警戒しちゃう場所って言うのはすごく分かるって。
ある程度年を重ねていくとHSSの部分が出てきて自分から話しかけに行くようになったから、後ろに誰かいるのが嫌な子だとは気づかれてなかったと思う。
二面性の話も、インスタのDMですごく分かるって人が多くて。
意外といるのかもと思った。
ー5人に1人って言われてるんでしたっけ?
「あまり外に出たくない」「自分の世界を守りたい」っていう性質があるHSPの人が5人に1人で、
その性質があるのに色々やっちゃう私みたいなHSS型の人は100人に6人とか。
傍から見るとすごくアクティブで社交的なのに、突然暗くなったり、些細なことをいつまでも引きずってしまう。
HSS型はこのギャップがしんどい。
自己開示して良かったこと
ー自己開示はできるようにならなきゃいけないわけでは決してないですが、お話を聞いていて生きづらさをある程度乗り越えて肯定するために自己開示は1つ有効なのかなと思いました。
私自身も就活の自己分析の一環で他者に自己開示をしたことで、自己嫌悪しすぎないようになれた経験があって……。どう思いますか?
それは私も最近めっちゃ感じてる。
隠さないで良くなった。
就活で個人的な身近な関係に開示したっていうのとは範囲が違うとは思うねんけど、楽になったかな。
意外とみんな人のことそこまで気にしてないっていうか、受け入れてくれるんよね。
「HSPじゃなくても、投稿を見て救われた人いると思うよ」って友達が言ってくれたり。
他にも自分こういう病気で勇気もらったとか言ってくれてる人もいて。
そういう人に元気を分けるって意味でも、自分を出すことで人間関係が楽になるって意味でも、自己開示して良かったって思ってる。
「二面性って性格悪いって思われへんかな。言っていいんかな」っていうのはずっとあってんけど、
プライベートな場面で分かってもらえへんことが多くて限界来てたから、膿が出てすっきりしたって感じかな。
膿の出し方が極端なのも私なんやろな〜って。笑
いきなりコンテスト出て、知らん人からDM来てっていう。
対処療法があるわけではないから難しい
ー当事者の人で昔からずっと違和感あったけど、現在発信されている内容のおかげで納得できたっていう人がいるかもしれませんね。
病気じゃないから、難しいなって思ってて。
対処療法があるわけじゃないし、人によって程度の強さも違う。
自分が発信していることが当てはまって助かった人がいたらそれはありがたいなって思う。
もしかしたらほかにもっと当てはまる何かがあるかもしれないけど、一個概念知ればもっと色々調べようって思えると思うし。
私の発信で誰かの自己理解を手助けできたんやったら良かったと思う。
両方の気質が自分の武器
ーお話を聞かせていただいて、これはこういう気質でとか、これは人前用の自分でって、自分のことを言語化して説明されているのがすごいなと思います。
3次審査でようやくこうなれたんやけど、コンテスト期間中サポートしてくれるメンターのおかげっていうのはすごく大きいかも。
その子がみんなに見せてるのとは違う顔があるんやろなって気づいてくれてた。
ウェブ投票中ってすごい攻撃的になったりしちゃうねんけど、逆に打たれ弱すぎるときもあったりして。どの面もあっさり受け止めてくれるからすごく助かってた。
あと、就活も自分の特徴があったから上手くいったってことが分かって。
例えば、グループディスカッションのとき、HSPの自分がすごく深くものを考えるねんけど、HSSの自分が「こんなこと言っていいのかな」とか思いながら結局言っちゃうんよね。
コンサルだけは上手くいったから、逆にこれは私の強みだって思えるようになったかな。
「それが武器です」って。
激務って分かってるけど、これも飛んで火に入る夏の虫。
世間の言う自己分析は人口6%には当てはまってない
ー22卒での就活はあまり自分にマッチしなかった感じがありましたか?
就活が上手くいかなかったって言うのは、自己分析が1番上手くいかなくて。
人から「営業が向いてそう」って言われるのと、自分で思うのが全然一致せんくて。
営業向いてそうって言われても「わたし自分から売り込むの無理だし」とか。
けどその後気づいたのが、世間の言う自己分析って人口の6%には当てはまってないってこと。
そもそも二面性があるからHSS型HSPの私は「どっちの自分で就活したらいいの?」って。
そのことをちゃんと自覚してなくて、ふわっとした理解やったから結局迷走したって感じだった。
最終的には、居場所を選べるところにしようって思ったのと、
転職しやすいしプロジェクトによって関わる人が違うし、勉強でいろんなことに手を出すけどそれが仕事として必要だし、
あとこれはHSP関係ないけど、負けず嫌いで自我が強い性格も外資コンサルにマッチしてるって考えた。
ー世間の言う自己分析が、6%のHSS型HSPの人には当てはまってないって後から気づいた。これは、HSS型HSPの人に限らず、どのマイノリティにもありえそうな経験ですよね。
少数派の存在をないことにされてるんやろうなって思った。大多数に合わせた方がやりやすいっていうのもあるし。
ただ、自分を知るっていうのが大事だなって実感した。
「生まれつきそんな人もいるんだな」って知っててほしい
ー読む人に伝えたいことはありますか?
まず、あんまり1つの話に囚われすぎずにこんな人もいるんだなって思ってもらえたら。
当事者の人には「知ってたらちょっと楽になる」ってくらいの気持ちで、自分を知るっていう意味で知ってほしい。
ーご自身も同じHSS型HSPの人のブログとかを読んでいましたか?
うん。やっぱり当てはまるなって思うところもあるけど、一部違うなってところもあるから、全部が当てはまるわけじゃない。
「ホラー映画怖いのに見ちゃう」みたいなのが書いてあったことがあったんだけど、私は怖いから見ないんよね。
あと、実際にウェブ投票中に応援してくれてる子から「その発信の仕方やと曖昧な理解が広まっちゃう」とか「逆に病気の人への差別につながるんじゃないか」ってコメントをもらったこともあって。
言葉にはけっこう気をつけてたつもりやねんけど、やっぱりそういうふうに言われることもあって。
私は専門家じゃないし、あくまで私個人のことを発信してたから全ての人に配慮するのはどうしても限界がある。
そういう意味でもやっぱり、読む人にはあんまり囚われすぎないで受け取ってもらえたら。
そして、当事者じゃない人には「生まれつきそんな人もいるんだな」って知っててほしい。
知ってるのと知らないのとで対応が全然違うっていうのは感じてて。
あともう一個読む人に伝えたいとしたら、人は案外自分のことは気にしてないってこと。
自分について知ってもらうことが怖いってなったときでも、割と多くの人が受け入れてくれるし、そうじゃない人は大体無関心やし。
嫌って離れていく人ってほんまに少数やから、みんな無関心か応援してくれるかの二択。
逆にそこで離れていく人はもう離れておいた方がお互いのため、って今は思う。
私の発信で、自分のことを知って楽に生きられる人が少しでも増えたら良いなと思っています。
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今回は、HSS型HSPである自分のことを発信し始めた1人の大学生に話を聞きました。
自分の気質について武器だと言い、自分を自分らしいと笑う姿にインタビューをしているこちらが勇気づけられました。
誰かの何気ない言葉に支えられることがあるように、誰かの何気ない言葉に暗い気持ちになることがあります。
「ちょっと気にしすぎなんじゃない?」頭によぎっても口にするかどうかや、伝え方を考えてみる。
その一呼吸分の余白が持てるようになりたいと思いました。
でも、それを常に完璧にするのは難しいことです。
どうしても知らないうちに傷つけてしまうこともあると思います。
事情を少しでも知っているのと知らないのとで、思いやりを持てるか持てないかが変わる。
私たちYOAHAKUはそう考えています。
この記事が読んでくださった方にとって、やさしい余白が広がるきっかけとなれば幸いです。
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YOHAKUは、誰もがそっと抱えているけれど、他人から見えづらい事情にスポットを当てて、それが読んだ人の優しい想像力の余白となることを目指しています。
植木凜・小林華・沖中優麻
文責:植木凜