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短編小説:宵闇の喫茶店(後編)



満月夜のあんみつと雪隠れの抹茶


ここは「宵闇の喫茶店」。深夜の25時にならないと開かない秘密の喫茶店。
店主は『月』という30代の男性。
営業時間は深夜25時〜朝の6時。夜明けまで営業しています。
この喫茶店では『夜』にまつわる色々な食材を使って様々なお茶や料理、デザートが出てきます。

ーカラン、コロンー
今日もお客様がいらしたようです。
本日のお客様は東国の和魂種の狐人。どうやらこんなところまでやってきたはいいものの故郷の味が恋しくなったご様子。私も東国の味は大好きです。
特に抹茶が…そんな話はさておき今日は月玉のあんみつを作っていきましょう。
まずは鍋に水と粉寒天を入れて火にかけます。
しっかりと沸騰して粉寒天が溶けたらタッパーに入れて冷蔵庫で冷やし固めます。次に白玉を作ります。今回作る白玉は普通の白玉ではなく『月玉』を作ります。月玉は普通の白玉粉ではなく『月玉粉』を使って作ります。
月玉粉は月で育てられた白玉粉のことで少し黄色い色をしています。うちで使っている月玉粉は月から直輸入しています。ボウルに月玉粉を入れ、水を少しずつ入れつつ練っていきます。耳たぶくらいの硬さになってまとまったらOK。

お好みで着色もいいですが、今回の月玉は元の黄色い色を大事にしたいので着色はなしで作ります。大体、一口くらいの大きさに分けて丸めます。中央を少しくぼませて、沸騰したお湯で茹でます。白玉が浮かんできたらそこから2〜3分ほど茹でます。そうしたら冷水にあげて冷やします。綺麗な黄色ですね。冷蔵庫に入れていた寒天が固まりました。容器と寒天の間に包丁を入れ、スーっとすると簡単に取れます。寒天も好みの大きさに切り分け、次は餡子を作ります。
今回は『小夜豆(さよまめ)』という小豆を使って餡子を作ります。
この豆を使って餡子を作ると黒みの強い餡子が出来上がります。
まずは小豆を水で洗います。東国には小豆洗いなる妖怪がいると聞いたことがあるのですがどういうことなのでしょうか。
鍋に小豆と三倍の水を入れ中火にかけます。煮立ったら10〜15分ほど煮ます。まずは小豆をゆでこぼす、渋きりという作業からスタート。

小豆を水からゆでるのですが、渋みを除くのが目的なので、下ゆでとは異なります。水が少ないと渋みがきれないなので、量はたっぷり入れるようにしてください。長時間煮るわけではないので、この段階ではぐつぐつ煮てしまって大丈夫です。たっぷりの水を注いで煮るので、豆の量に対して体積に余裕のある鍋を選ぶようにしてください。
ゆで汁の色が変わったら小豆をざるにあげ水を切ります。
水を入れ替え再び小豆が柔らかくまるまで30分ほど煮込みます。この最中アクを取るのを忘れずに。30分経ったら小豆が柔らかくなったか確認します。一番力の入りにくい親指と小指で潰して抵抗なく潰れるくらいが目安。
弱めの中火にかけ砂糖を二回に分けて入れます。ふつふつとした状態を維持しながら時々混ぜつつ30分ほど煮ます。煮汁がほぼなくなったら完成。あとは塩で味を整えましょう。

次は抹茶を淹れましょう。今回使うのは『雪隠れの抹茶』という少し高価な抹茶。まずは茶碗に抹茶を2g入れます。これは目安。70〜80度ほどに冷ましたお湯を少量茶碗に注ぎダマにならないように茶せんで混ぜます。さらにお湯を入れ手首を前後に動かして最初は小刻みに、次は表面を整えるように混ぜます。泡が細かいほど口当たりが滑らかで美味しくなるので頑張りましょう。これで抹茶は完成です。
あとは器に月玉、餡子、夜蜜などを盛り付けあんみつも完成です。
「お待たせいたしました。『満月夜のあんみつ』と『雪隠れの抹茶』です。ごゆっくりお召し上がりください」
狐のお客様は丁寧な仕草であんみつを食べ抹茶を飲み帰り際に
「また故郷の味が恋しくなったら来るね」
と言いながらお帰りになられました。
皆様にも忘れならない故郷の味などありますか?

宵闇の喫茶店、店主の月でした。ぜひ皆さんもうちに来てくださいね、それでは





夜渡りのフレンチトーストと夜星のレアチーズケーキ


ここは「宵闇の喫茶店」。深夜の25時にならないと開かない秘密の喫茶店。
店主は『月』という30代の男性。
営業時間は深夜25時〜朝の6時。夜明けまで営業しています。
この喫茶店では『夜』にまつわる色々な食材を使って様々なお茶や料理、デザートが出てきます。

本日は開店前にフレンチトーストとレアチーズケーキが食べたくなったので作ろうと思います。
本日仕入れたのは『夢牛乳(むぎゅうにゅう)』という少々特殊な牛乳です。普通の牛乳とは違い、色が炭のような色をしています。
コクがあり、とても滑らかでお菓子作りにとても重宝する牛乳です。
そんな夢鳥からとれる『夢卵』。夢鳥は、満月の24時にちょうど泣く鳥らしいです。食べると思い出したい夢が思い出せるとかなんとか。

夢卵、夢牛乳、星砂糖、バニラエッセンスを入れパンを浸す卵液を作ります。砂糖の量はお好みで。卵液ができたら耳を切って半分にした食パンを浸します。おぉ、パンが黒くなっていく。500wの電子レンジで片面を一分温め、ひっくり返してもう一分温めます。こうすることによって早く卵液がパンに染み込むのです。もし卵液が余ったらパンの耳を浸して有効活用してください。フライパンにバターを乗せ弱火で溶かします。パンを入れ蓋をして5分間蒸し焼きにします。弱火でふわふわにするのがコツです。
表面がきつね色になったら裏返してもう5分。蓋をするのを忘れずに。
出来上がりましたら星砂糖の粉、食べる直前に夢牛乳のアイスを乗せて完成です。

次にレアチーズケーキを作ります。
まずは粉ゼラチンと水を混ぜておきます。ビスケットをフリーザーバッグに入れ砕きます。溶かした無塩バターを入れて混ぜます。
これをケーキ型にまんべんなく敷き、冷蔵庫で冷やしておきます。
クリームチーズ、生クリーム、プレーンヨーグルト、砂糖、レモン汁を入れて混ぜます。混ぜ終わったら最初に混ぜておいたゼラチン液を入れて混ぜます。ケーキ型に流し込んで二時間以上冷やして完成です。冷やしている間にこの前の夜星のベリーの余りでブルーベリージャムを作りましょうかね。鍋にブルーベリーと砂糖を入れ中火でにかけ木べらで焦げないように混ぜます。水分が出てきたらレモン汁を入れ8分ほど煮ます。
冷えたレアチーズケーキにブルーベリージャムを乗せて
「『夢渡りのフレンチトースト』と『夜星のレアチーズケーキ』の完成です。最後にフレンチトーストの上に夢牛乳のアイスを乗せて、いただきます。」
とても美味しいですね。せっかくなので薄明紅茶も淹れましょうかね。きっと合うはず。
このレアチーズケーキメニューに追加しましょうかね。
――カラン―コロン――
おや、今日もお客様が来たようですね。

ということで宵闇の喫茶店、店主の月でした。
それでは皆様良い夢を。


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