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短編小説:宵闇の喫茶店(中編)



夕焼け黄金の檸檬ゼリーと薄明紅茶


ここは「宵闇の喫茶店」。深夜の25時にならないと開かない秘密の喫茶店。
店主は『月』という30代の男性。
営業時間は深夜25時〜朝の6時。夜明けまで営業しています。
この喫茶店では『夜』にまつわる色々な食材を使って様々なお茶や料理、デザートが出てきます。

ーカラン、コロンー
今日もお客様がいらしたようです。
本日のお客様は数時間前に告白をしてフラれてしまった男性。
これは苦い思い出になる、そう自嘲気味に笑っていらっしゃいました。
苦い…そうだ。今日ちょうどいい物を仕入れました。
今日仕入れたのは『黄昏檸檬』。黄昏時の空色に染まった檸檬です。
少し苦味が強いのですが、きちんと中に甘みがあり、とても美味しいのです。ということで今日はこれを使って美味しいゼリーを作っていきましょう。まずはゼリーを固める用のゼラチンを水でふやかしておきます。
檸檬の果汁を絞るのですが、2枚ほど輪切りの状態で残しておきます。
鍋に檸檬の果汁を入れ沸騰寸前まで温めます。沸騰寸前まで温め終わったら粗熱を取り、優しく炭酸水を入れ、先ほどふやかしておいたゼラチンを加えて溶かします。

黄昏檸檬を使うと着色料を使わずに綺麗な夕方の空のような橙色と赤色の混じった色合いになるのです。
そうしましたら、透明なカップに入れ、2時間ほど冷やしておきましょう。
今日は一緒に薄明紅茶を入れましょう。薄明紅茶は煮出すととてもきれいな青から橙のグラデーションの紅茶が入るのです。
紅茶を煮出して入れる時はきれいな水で入れるのが良いので、少しお高い『聖水』を使いましょう。聖水を手鍋に入れ、沸騰させます。火を止めた後に茶葉を正確に測量し、鍋に入れます。茶葉を入れたらすぐに蓋をして蒸らします。紅茶を蒸らしつつゼリーが固まるのを待ちましょう。とても良い香りがしてきましたね。数十分後…紅茶が入りました。ゼリーは…うん。良い感じに固まっていますね。

ゼリーを皿に出し、ゼリーの角にレモンの輪切りを差し込み、上にアイスを乗せたらゼリーは完成です。
紅茶もティーカップに入れ、二つともお客様にお出しします。
「大変お待たせいたしました。こちら『夕焼け黄金の檸檬ゼリー』と『薄明紅茶』です。ごゆっくりどうぞ」
今回のコンセプトは苦くもあり、甘酸っぱくもある思い出。
苦みが強いですが内側にはきちんと甘みがある、そんなことをイメージしてみました。
「今の自分の気持ちを再現したようだったよ」
お客様はそう言いつつお会計を済ましおかえりになられました。
私も食べますかね。夕焼け黄金の檸檬ゼリー。
皆さんにも苦い思い出や甘酸っぱい思い出はありますか?

宵闇の喫茶店、店主の月でした。ぜひ、うちに来てくださいね、それでは。







夜星のベリータルトと黄昏レモンティー


ここは「宵闇の喫茶店」。深夜の25時にならないと開かない秘密の喫茶店。
店主は『月』という30代の男性。
営業時間は深夜25時〜朝の6時。夜明けまで営業しています。
この喫茶店では『夜』にまつわる色々な食材を使って様々なお茶や料理、デザートが出てきます。

ーカラン、コロンー
本日は定休日。私のとっておきのお菓子を作るためにお店に来ました。
本日は『夜星のベリー』と呼ばれるブルーベリーを仕入れましたので、こちらを使ってブルーベリータルトを作ろうと思います。
『夜星のベリー』というのは普通のブルーベリーとあまり見た目は変わらないのですが、何よりも違うのは輝きでしょうか。夜星のベリーはその名の通り、星のようにきらめいているとてもきれいなブルーベリーです。普通のブルーベリーと比べて少し甘みが強く、ケーキやタルトにもってこいなんだとか。まずはタルト生地を作りましょう。
強力粉、小麦粉をボウルに篩入れ、すでに切られているサイコロバターを入れ手で揉んでなじませます。別のボウルに水、砂糖、卵黄を入れて混ぜる。これを先ほどの小麦粉たちの中に入れ、よく混ぜる。バターが見えなくなり生地がまとまったらラップに包んで一晩ほど寝かせるのですが、時飛ばしの冷蔵庫に入れて一晩分寝かせましょう。

時飛ばしの冷蔵庫は指定した時まで中のものの時間を飛ばす力を持っています。一晩分寝かしたら冷えたままの生地に打ち粉をしてめん棒で縦横裏表向きを変えながら少しずつ伸ばします。この作業は生地が冷えている時にやる方が良いです。ある程度伸ばしたら、タルト型より一回り大きくなるようにし、2mmほどの厚さにします。そうしたらタルト型にタルト生地を乗せましょう。型の底の角から指で押さえ一周して生地を敷きます。最後にめん棒で型からあふれている余分な生地を落とします。そこにフォークで穴をあけ、冷蔵庫で冷やします。次に、カップなどの耐熱容器に牛乳とバニラビーンズを入れ、電子レンジで温めます。耐熱容器に小麦粉と砂糖を入れて混ぜます。卵黄と先ほど温めておいた牛乳を入れ、混ぜます。500Wのレンジで1分温めて、混ぜるのを三回繰り返します。
熱いうちにバターを入れ溶かし、乾くのを防ぐためラップをぴったり被せて冷まします。

冷めたら星印のラム酒を入れ、混ぜます。これを適当に②と呼びます。次に別のボウルにバターと砂糖を入れヘラで混ぜます。白くなったら卵黄を入れて混ぜます。次に強力粉とアーモンドプードルを入れて混ぜます。これを適当に③と呼びます。タルト生地に③のクリームを入れます。表面を平らにし、170度に予熱したオーブンで20〜30分焼き上げます。焼き上がったら生地を冷まし、②を塗ります。そうしたら上側に夜星のベリーを敷き詰め、上に星砂糖を振ります。星砂糖はキラキラ輝いている砂糖です。
そうしましたらタルトの方は完成なのですが、少しこのタルトは甘すぎるので紅茶を入れましょう。黄昏のレモンティーを入れましょう。黄昏檸檬は苦味の強い檸檬ですね。以前、ゼリーにしました。
その黄昏レモンティーを入れまして、完成です。

「お待たせしました『夜星のベリータルト』と『黄昏レモンティー』です。ごゆっくりお召し上がりください。」
ベリータルトを口に入れると、口の中に甘みと微かな酸味が口の中に広がります。タルトを一口食べた後にレモンティーを一口飲むと先ほどの口に残る甘さをきれいさっぱり流し込んでくれます。そうすることによって何度も甘さを感じることができるのです。

皆さんも甘いものが食べたくなったらうちにいらしてくださいね。25時からですけど。

宵闇の喫茶店、店主の月でした。ぜひ、うちに来てくださいね、それでは。





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