短編 氷の上に咲く花の中に住んでいる人達の話
氷の上に咲く花の中に、住んでいる人達と出会った。
それは、ある冬のことだった。
春には海を渡ろうと思って、旅の足を早めていた。炭鉱の街の酒場で、湖を渡るといい、と港から出稼ぎに来た男に教わった。船があるのか?、と尋ねると、そうではない、と言う。行ってみれば分かる、行ってみるといい、旅の人ならきっと気に入る。無精髭に発泡酒の泡をたっぷりつけて、男は笑った。朝日に照らされた湖を見ながら、私はあの時の発泡酒の泡を思い出している。
凍った湖の上に、白くてふわふわの丸いものが浮かんでい