#31 私の両親への挨拶・当日① 【マッチングアプリで出会ったモラハラ婚約者と別れた話】
自分の見た目に完璧を求めすぎる
11月最終週の日曜日。
私の両親にわんこくんを紹介する日だ。
ADHDの彼は遅刻魔。さすがに今日は遅刻できないので、私は昨夜のうちに出発時刻を宣言した(こっそり30分余裕をもたせた)。
ちなみに、彼の家には、遅刻対策として5分早い時計と20分早い時計が置いてあり、そのせいで私が混乱して時間を間違えることが多かった。笑
さすがのわんこくんも、この日はきっちり起きてスーツを着た。ジャケットにスーツベスト、水色のシャツ、紺色のネクタイ。スーツに合わせるにはちょっと可愛いAラインのコート。
そして、鏡の前で身だしなみチェック開始。彼は普段からよく鏡を見る。人からどう見えるかをかなり気にするのだ。この日は、「おれって頭大きくない?服は変じゃない?前髪はどう?」と何度も同じことを聞かれ、「かっこいいよ。頭が大きいのは脳みそがたくさん詰まっているからよ!!」と何度も答えた。5サイクル目でいい加減うんざりして、「まだ続くの?w」とツッコんだらしょげてしまった。すまん。
身だしなみチェックに時間がかかったので、多めに見積もった30分は意味がなくなり、私たちは彼が選んだ無駄に大きな手土産(日本酒一升瓶、桐箱入りカステラ)をかかえて足早に駅に向かった。マジおっも…。
本当に私を守りたいの?
無事、予定通りの電車に乗れた。わんこくんの家から私の実家までは、都内から乗り換えなしで1時間。下り電車の座席は4割しか埋まっておらず、私たちはあっさり座ることができた。
彼は、手土産の大きな紙袋2つを自分の膝の上で抱えていた。こんなに空いているんだから、隣の席に置いちゃえばいいのに。
次の駅で数名が乗って来た。ガラ空きなのに、一人の中年男性がなぜか彼の隣に座った。
え、なんでそこに座るの!?こんなに空いているのに間を空けないの?私はちょっとおかしな人なんじゃないかと警戒したが、わんこくんはドヤ顔で私にこう言った。
ちっげーーだろ。パーソナルスペースの感覚がバグったおじさんがたまたま隣に座っただけで、人助けした感を出されましても。笑
いつもは私をUberの配達員に近づけさせないくらい他人を警戒するのに、今回は行動が逆だ。一升瓶を隣の席に置くことで壁を作り、他人から私を守ろうとする方がいつものわんこくんらしいのになぁ。
私を守りたいのではなく、マイルールを押し通したいだけ
わんこくんの公共マナーにはやりすぎなところがあった。
例えば、新幹線や飛行機で、前の席の人が彼に声をかけずに背もたれを倒したら、「倒すなら、声をかけてくれますか?」と物申すのだそう。初めて聞いたときは衝撃を受けた。それ、結構ヤバい奴じゃん!
どういうつもりなのと言われて「確かに、どういうつもりなんだ?」となってしまい、黙り込む私。でも、少なくとも「断りを入れろ」という意味ではないと思う。会釈してからゆっくり下げるとか、なんかこう、色々あるじゃん。私は「とにかく、私と一緒にいるときにはやらないで」と言った。彼は嫌そうな顔はしていなかったけど、納得していないように見えた。
他にもこんなことがあった。付き合い始めの頃、電車の中でわんこくんが体を強張らせ、それはそれは険しい顔で車内の一点を睨みつけていた。
うんこでも漏れそうなのか?
私がボケーっとしすぎなのか。わんこくんの警戒心が強すぎるのか。確かに動きがおかしな人ではあったけど、あんなに睨みつけなくてもよくない?
そもそも、君って「リスク回避する男」なんじゃなかったの?座席に手土産を置かなかった件と背もたれの件は、リスク回避どころか、逆にトラブルを引き起こしかねない。リスク回避って、起きうる可能性を事前に想定・対処することなのに。普段言っていることと、実際のふるまいに整合性がなくて戸惑う。
たぶん、彼の行動は私を守るのが目的なんじゃない。彼には居心地がいいと感じるマイルールがあって、そこから外れた行動ができないんだと思う。
マイルールがあるのはいいけど、言行が不一致だったり、人の気持ちを考えて妥協することができないのは良くないよ?わんこくん。
―― 私のメンタル崩壊まで、あと140日 ――
(この日は、次の話に続きます)
りん