ラグジュアリーブランドのSTP戦略
こんにちは、国武凜です。
今回はいつもと趣旨を変えて、だいぶ前に大学の授業のため作成したレポートをまんまここに出してやろうかなと思います。それでは、いってらっしゃい!!
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ラグジュアリーブランドのSTP戦略
私はラグジュアリーブランドの代表と言っても過言ではないブランド『Cartier(カルティエ)』の製品『トリニティイヤリング()』を例に挙げ、このブランドがどのようなSTP戦略を基にどういったマーケティングミックスを展開しているのか、またそこから導く自分なりの考えを書いていく。
カルティエが展開しているマーケティング・ミックスを記す前に、このブランドがどういったブランドなのか、どこの位置にいて他のブランドとどう違うのかの前提を明確にしておきたい。まずカルティエはいわゆる『ラグジュアリーブランド』という位置にポジションを据えている。ラグジュアリーブランドはこのほかにも『シャネル』や『ルイビトン』などが挙げられる。しかしファッション業界にはこれに似たようなブランドポジションとして『プレミアムブランド』というものがある。この二つの違いはなんなのか、ここを明確にすることでカルティエが行っているマーケティング・ミックスやSTP戦略が見えてくる。この二つの違いを端的に表すと、
・ラグジュアリー…絶対的な価値。意味。値段はブランド自身が決める。
・プレミアム…相対的な価値。機能。値段は顧客が決める。
といった感じである。上記に記載した『意味と機能』について、ナレッジキュレーターである山口周さんが、2020年に上梓された著書「ビジネスの未来(☆2)」の中でこう語っている。『縦軸に機能(役に立つ・立たない)を、横軸に意味(自分にとって価値のある・ない)としたマトリクスに1.日本車2.ベンツ3.スーパーカーをそれぞれ位置づけると、1は機能としては素晴らしいが意味はないため左上に、2は機能も最高でまた「俺ベンツ乗ってるんだ」とその人にとって価値あるもののため意味もそこに存在することから右上に、3は時速350kmを走ることは法律上できないため機能としては最悪だが意味があるため右下に位置する。そして、それぞれの値段は高い順に3⇨2⇨1となる。』と仰っている。
つまり、その人にとってそれに対する憧れや夢、そして利益率共に機能よりも意味が勝る、ということである。ラグジュアリーブランドはまさにその人にとって価値あるものであり、ただの白Tにそのブランド名が乗っかるだけで値段が一気に高騰するためここでの3に値する、つまりラグジュアリーブランドは意味なのだ。これらを踏まえた上で、次にカルティエが展開しているマーケティング・ミックスに触れていく。
カルティエが展開しているマーケティング・ミックスをそれぞれ要素別に分析してくと、
Product…絶対的・高い品質。他にはないデザインと素材を用いているため、カルティエでなければならない理由がそこにできる。
Price…絶対的な価格。価格は顧客が決めるのではなくカルティエ自身が決めている。例えいくら高かろうと相対評価されることはなく、むしろ高いということがカルティエをより魅了的にさせている。実際にここで例をあげている製品『トリニティイヤリング』の値段は290,400円である。また、値引きやクーポン等はデメリットしかないため必ずしない。
Place…チャネルの段階も幅(チャネルメンバー)もかなりコントロールしている。アマゾンや楽天等で販売したりしない。これは、カルティエが提供しているものが製品ではなくその先にある世界観や夢であるためである。つまり、製品志向(製品を売ることのみの製品中心的な考え方)ではなく市場志向(顧客の生活を豊かにする顧客中心の考え方)ということであると考えられる(☆3)。
Promotion…シャネルやランボルギーニ、フェラーリやスターバックスのように、テレビCMは打たない。なぜならそもそものターゲットが富裕層であり、富裕層はテレビCMを打つほどの人数はいないからである。むしろ狙うはパブリシティ(メディアに取り上げられること)である(☆4)。供給量に関してもかなりコントロールしている。あえて『買いたい、けど買えない!』という人を増やすことでラグジュアリーブランドを構築する際の計算式『認知度―普及度』の値を大きくする(☆5)。
ここまでカルティエが展開しているであろうマーケティング・ミックスを明確にした。次に、このマーケティング・ミックスの軸となるSTP戦略を明らかにしていく。
上記のマーケティング・ミックスは、どのようなSTP戦略を基に展開されているのか、上記で示した『ラグジュアリーとプレミアムの違い』も前提に踏まえた上でそれぞれ要素別に分析・思考すると、
1.Segmentation…デモグラフィック(特に年収)とサイコグラフィック(どのようなデザインが好きか等)を主にセグメンテーションを行なっている。
2.Targeting…上記のセグメンテーションを基に、ターゲット層を『高品質でカルティエの世界観に共感する、カルティエの商品を買える人(いわゆる富裕層)』に設定している。
3.Positioning…カルティエはあくまで『プレミアム』ではなく『ラグジュアリー』。つまり相対的ではなく絶対的なブランドなのである。そのため、他のブランドとの相対的な位置関係であるポジショニングは設定していない。むしろ設定していないということがカルティエ等ラグジュアリーブランドのポジションなのかもしれない。
となる。非常に興味深いのが3番のPositioningの『ラグジュアリーブランドの性質上、ポジショニングという相対的な考え方を用いてはいけない』というところである。確かにラグジュアリーブランド特有の、従来のマーケティング戦略とは全く真逆の戦略であるが、果たしてこの考え方はラグジュアリーブランドのみ適用できるものなのだろうか。
最後に、ここまで『カルティエ』を例にそれが展開するマーケティングミックス・STP戦略を基に自分が今考えていることを記す。世界では貧富の格差が問題になっている。『ジニ係数』という貧富の格差を示す数値を見ればそれは日本も例外ではない。お金持ちはよりお金持ちになり、低所得者層が中間所得者層の流れ込みにより人数を増している現状で、今まで各業界が行ってきたマーケティング・ミックス戦略の先に顧客はいるのだろうか。今まで日本人が見向きもしなかった『富裕層』という人たちの存在を、この『ラグジュアリーブランド戦略』を基にターゲットとして視野に入れていくが求められるのもそう遅くはないと、自分は考える。
参考文献
☆2『ビジネスの未来』
☆3『要約と感想:100円のコーラを1000円で売る方法』
https://lost-man.com/sell-%E2%80%8B%E2%80%8Bcola-high/
☆4『ラグジュアリー戦略』
☆5『永久保存版:西野亮廣の「生き残るためのVIP戦略」を全編公開します』
https://www.youtube.com/watch?v=hFV5qZyKZPo
[関連記事]
・「ラグジュアリーたらしめるもの」
https://note.com/rin1028k/n/ndbad516e1230
・「夢をつくるものは何か」
https://note.com/rin1028k/n/nb8b58fccd524
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