私は泣ける場所をさがしていた
私は、あの日、泣ける場所をさがしていた。
月曜日の夕方5時半過ぎ。
仕事が終わり駅に向かう人たちの中で、とぼとぼと自分の足元を見ながら私は歩いていた。
手には、小さな黒いバッグと深緑色の紙袋のほかに、ぬるい350mlの缶ビールとお茶が入った小さなビニール袋を持っていた。
ビニール袋が指に食い込んで、やけに重く感じた。
飲み物が揺れて、カサカサとビニールがこすれる音がした。
夏至を少し過ぎた、梅雨の合間のよく晴れた夕方は、大きな建物の間から強くまぶしい西日があたり、喪服の中