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TV放映で海外ミステリードラマを楽しむ人たちへ 2024
最初に4つのお断り
・記事タイトルの「人たちへ」とは、ネット配信の動画を鑑賞するタイプ以外の人たちを主に指しています。
・私は、WOWOW やスカパー、huluやnetflixなどの有料動画配信サービスには加入せず、地デジ・BSでテレビ放映されたものだけを視聴しています。
・韓国や中国などのアジア系ドラマはほとんど見ていません。
・アメリカのドラマは、俳優に魅力がないか、謀略系アクションが多いかで、ほとんど心に残らないです。
余談1:無料お試しキャンペーン
昔、テレビの有料放送スカパーの「無料お試しキャンペーン1週間」をやってみました。どんでもない量の映画・ドラマ・ドキュメントが毎日24時間ずっと流れていて、予約録画も相当な数に膨れ上がり、あとで録画した番組を見ることを半ば諦めるくらいでした。
結局、「録ること」が目的になって、「ゆっくり愉しむ余裕」がなくなったので、自分にとって有料チャンネルは危険だと感じました。
余談2: note フォロー50:フォロワー50 が理想?
「愉しむ余裕」という点では、この note にも似た問題点があります。スキをもらうと相手の記事も最新から過去までチェックしてスキをする記事を選びます。私にとって、その過程は大きな愉しみなのですが、スキやフォローの数が多くなると、数時間近く相手の記事をチェックして読むことに追われてしまい、ちょっと気持ちの余裕がなくなることもあります。
時おり、フォロー2:フォロワー400 など、凄い開きのある方をお見かけします。一方で、フォロー200:フォロワー200 のように、双方向で同数比率を求めているであろう方もお見かけします。
私個人としては、双方向でフォロー50:フォロワー50ぐらいが理想的な比率で、特にフォロー数50ぐらいが、余裕をもって相手の記事を読むための限度数かなと、最近、思うようになっています。
ここから本題です
まず、テレビ史に残る名作ドラマを紹介
1980年以降では、名優ジェレミー・ブレットの「シャーロックホームズの冒険」(1984-1994)と、デヴィッド・スーシェの「名探偵ポアロ」(1989 - 2013)が、海外名作ミステリードラマの二大金字塔でしょう。
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他に印象に残るのは、名女優ヘレン・ミレンが女警部を演じた「第一容疑者」(1991-20006)、巨体のロビー・コルトレインが演じた「心理探偵フィッツ」(1993-1995)は、今見てもその魅力は衰えず楽しめます。なお、これらはすべてイギリス制作であり、NHKが放映していたものです。
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では、2024年3月現在までに見た中から、制作年度の古い順に、
イギリス制作ドラマから紹介
刑事ルーサー : 原題:Luther
2010-2019 5seasons 全20話
イギリス制作 TV放映局:NHK
刑事ルーサーは、異常心理の連続殺人鬼たちを時には違法な手口で追い詰めますが、身近な者たちの裏切りや死を招き、自らも心に大きな痛手を負いつつ、困難な事件を解決へ導く型破りな刑事です。サイコ・サスペンスとアクションの要素もあり、いまのロンドンを舞台に、イギリスのダークな世相が活写されていてとても面白かったです。
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連続TVドラマ「成功」の必須要因は、何よりもまず脚本であり配役です。
仮面をかぶって凶行を繰り返し、最後には児童14人を皆殺しにしようとする話「彼は日の出なり」、犯罪被害に遭った妻を持つ夫が世の犯罪者たちを処刑してゆく話「ケイトリンに捧ぐ」、サイコロを振って人殺しゲームに興じて最後は爆弾テロを企む異常者の話「べトラム・アクシス」の3話が特にスリリングな展開でした。中でも「べトラム・アクシス」は、膨大な数のエキストラ、市街での大掛かりなロケ、先の読めない込み入った筋書き等、劇場公開の大作映画のような仕上がりになっています。
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補足:このTVドラマは映画化され、2023年3月10日よりNetflixで配信されたとのこと
ヴェラ ~ 信念の女警部 :原題 Vera
2011-2023 12seasons 全50話
イギリス制作 TV放映局:BS11
本国では12シーズンも放送された人気ドラマです。海の見えるイングランドの北東部地方が舞台。警部ヴェラは、帽子とヨレヨレのコート姿で、古くて汚れた車を乗り回して捜査を行う肥満気味の中年女性。部下たちの「お母さん」として、厳しく優しく、時にはイライラをぶつけては怒鳴り散らしながら、地道な捜査と突然のひらめきにより、難事件を解決してゆく設定です。
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こじんまりとした街並み、見える果てまで広がる草原地帯、夕焼けの美しい海辺などの光景が時おり挿入されて、湿気たような独特の空気感が画面に漂っています。事件の謎解きの興味だけでなく、主人公ヴェラの個性と人柄、ひと気のない草原の中にポツンと佇む古い家(父親の実家)での生活ぶりなどの描写を通じて、一篇の味わい深い人間ドラマに仕立て上げられています。
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刑事モース ~ オックスフォード事件簿
原題:Endeavour 2013-2023 9seasons 全35話
イギリス制作 TV放映局:BS11
2013年にイギリスで放映スタートして、9シーズンまで作り続けられた超人気作品です。私が初めて見た時は、あまりピンとこなかったのですが、数年後の再放送を見て、その丁寧で緻密に創り込まれた作品世界に魅了されて、すっかりファンになりました。
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勘と体力勝負の上司サーズデイ
舞台は1965年、大学町としても有名なオックスフォード。刑事巡査として赴任してきた新人モースが、ベテランのサーズデイ警部補とともに、数々の難事件を解決する物語です。
最大の特徴であり魅力が、3つあります;
・細くひ弱だが知的分析力と観察力に優れたモースと、巨漢で勘と体力勝負
のサーズディの対照コンビが面白い
・60年代という、その当時のイギリスの流行、風俗、世情が丹念に描かれて
いて興味深い
・凝ったカメラ・アングルの映像がスリリングで鮮やかな美しさ、奏でられ
る音色も上質のムード音楽のように素晴らしい
以上が、作品全体に通じて感じられ、どこか頼りなげながらも誠意と良心のあるモースの活躍に次第に惹かれてゆくのです。また、舞台がオックスフォードであるからでしょう、今はほぼ消え去ってしまった「古き良きイギリス」の香り = 伝統と風格、良識と善意を尊ぶ西洋文化の落ち着いた雰囲気にあふれています。
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牧師探偵シドニー・チェンバース
原題 Grantchester 2014 - 4seasons
全24話 イギリス制作 TV放映局 BS11
1950年代、ケンブリッジ郊外の小さな村グランチェスター。ウィスキーとジャズをこよなく愛する若き牧師シドニー・チェンバースの平穏な生活は、ある殺人事件をきっかけに一変・・・
主役は、坂口健太郎とロバート・レッドフォードを足して二で割ったような、甘い風貌の俳優です。女性は皆きっと好感を持つタイプでしょう。ドラマの中でも、登場するいろんな年代・職業の女性たちから頼りにされ、好かれ、愛されます。牧師としてはあるまじき行動もしてしまいます。要するに、悩み多き熱血漢の若者として描かれています。
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牧師館の世話係でちょっと偏屈な中年女性、同僚牧師でゲイの気弱な男性、かつての婚約者の女性、一緒に事件解決を行う管轄の曲者刑事、この魅力的なキャラの4人を中心にドラマが展開します。
1950年代が舞台であるため、衣装や車や小道具そして音楽等、ノスタルジックな風情に満ちた白人西洋文化の「古き良きイングランド」を堪能しつつ、相も変らぬ人間の宿業に思い至らされる、・・・そういうところが、このドラマをずっと見続けてしまう理由かなと思います。
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冤罪 ~弁護士エマの挑戦 : 原題 fearless
イギリス制作 2017 全6話
TV放映局 BS11
人権弁護の活動をするエマが、14年前の少女殺害事件で犯人扱いされて刑に服している男の妻から依頼されて再調査を行うと、彼女のキャリアや私生活が危険に晒され始め、背後に何か大きな真相が隠されていた、・・・という物語です。
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中年女優ヘレン・マックロリー(もしこの役を日本人女優が演じるなら室井滋か、故市原悦子あたりでしょうか・・)が、地道ながらも女性特有の意地と粘りで事件の核心に迫っていくところは見事でした。
移民国家イギリスの今を背景にリアルなテーマ設定、独自のこだわりとセンスが感じられる映像と音楽など、最後まで飽きさせない仕上がりで、同居している変わった男性や職場同僚とのエピソードを随所に差し込んで物語に起伏を与えて効果的です。
次は、フランスのミステリードラマ2本
バルタザール 法医学者捜査ファイル
原題 BALTHAZAR
フランス制作 2018 全18話
TV放映局 BS11
主人公バルタザールは優秀な法医学者ですが、妻を殺された忌まわしい過去をひきずっています。殺人課の女性刑事エレーヌとともに、天才的観察眼と分析力で殺人現場を検証し、遺体解剖を行い、複雑怪奇な殺人事件の謎を解決してゆく、・・という物語です。
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TV放映では珍しいフランス制作です。奇妙な遺体から謎を紐解く抜群の面白さだけでなく、市街の街並みや郊外の田園風景、今のフランス人の生活ぶりなどをうかがい知ることができて、殺伐としたアメリカの都会などとは違ったヨーロッパ特有の風情も堪能できる作品でした。
何よりも、最初はちょっと個性が強すぎて受け入れにくかったバルタザールという人物が、だんだんと人間味あふれる魅力的な男だと思うようになるのが、このドラマの一番の面白みかもしれません。
クリムゾン・リバー
原題 The Crimson Rivers
フランス制作 2019年 全8話
TV放映局 BS11
ヨーロッパの各地に根付く土着信仰や奇異な風習等の複雑に絡み合った連続猟奇殺人事件に対して、国境も超えて捜査するベテラン警視と若手女性刑事のコンビによるサスペンス・ミステリー。
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扱う題材や設定が、日本のお馴染みのドラマ「トリック」や「浅見光彦シリーズ」などと類似している点がありますが、このフランス製ドラマに笑いはなく、ひたすら暗く重く、冬場に撮影したのかと思うほど寒そうな天気ばかりが映っています。
老練な男性警視は渋すぎて、とても犯人と格闘はできない感じ、若い女性刑事の方もどこかはすっぱな感じで、キャラクターとしての魅力はないのですが、ついつい見てしまうのは、やはり、その特異な設定と脚本のおかげ。美しく華やかなヨーロッパの隠された悪魔的な裏側を覗き見る愉しみなのでしょう。
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次は、珍しいドイツのミステリードラマ1本
ウーゼドム・ミステリー 罪深き母の捜査ファイル
原題:Baltic Crimes ドイツ制作 2014~2019
全20話 TV放映局 BS11
物語の舞台であるウーゼドム島は、バルト海沿岸に実際にある人気のリゾート地。島の東側はポーランド領で、欧州一の長さを誇る海岸沿いの遊歩道はポーランドに繋がっています。制作国のドイツをはじめ、これまでアメリカ、カナダ、英国、フランス、スペイン、スイスで放送された人気ミステリーとのことです。
まだシーズン1しか見ていませんが、このドラマの特異な設定として、主人公の元検事は浮気した夫殺しの罪で服役していた女性であること、舞台の島は隣国ポーランドと接しており、事件の容疑者によってはポーランド警察と協同で捜査すること、さらには、娘の刑事は不倫の悩み、高校生の孫娘は違法活動に加担している、夫もどこか陰では不義を働いている気配など、登場人物たちにどこか不穏な動きがあることです。
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ちょっと変わり種の好印象ドラマ2つ
マクドナルド&ドッズ :窓際刑事ドッズの捜査手帳
原題:McDonald & Dodds
イギリス制作 BS11
日本語サブタイトル通り、定年間際の風采の冴えない白人オジサン刑事と野心に満ちた美貌の黒人女刑事という、本来なら全く合わない者同士がコンビを組んだ「バディ」もので、コメディタッチです。
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冴えない刑事ドッズのキャラクターが実にユニークで微笑ましく、遠慮がちに鋭い見識を示して事件解決につなげる点など、演じた俳優の魅力も相まって面白く見ることができます。わずか4話で終わったのは残念でした・・。
アストリッドとラファエル :文書係の事件録
原題:Astrid et Raphaëlle
フランス制作 NHK
パリの犯罪資料局の文書係アストリッドは自閉症の女性ですが、たまたま出会った女性刑事に、専門家並みの豊富な知識と論理的な思考力で事件の核心を紐解くような指摘を披露して以来、一緒に組んで事件解決を図ってゆく、という設定です。
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マイノリティを主役にしたドラマは日本では時おり見かけますが、海外ドラマでは初めてだったので、毎回、新鮮で面白く見ることができました。
最後に
2024年にBS11で放映のドラマをひとつ
警視ステラ・ギブソン:原題 The Fall
2013年より放送 イギリスのドラマ 全17話
ロンドンではなく、北アイルランドの都市ベルファスト(血と暴力の紛争が頻発した歴史あり)が舞台である点がまず目新しく、街の重苦しい空気、曇りがちな天候、無駄に笑わない人々など、独特の風情と匂いを感じます。
妻子のある犯人は、昼間は良き夫でやさしい父、仕事は心理カウンセラー、夜は女性を死へと導く儀式を執り行う異常人格の殺人鬼に変貌、それを追う有能な女警視は私生活では肉食系、この二人を中心に、駆け引きと確執、追跡と逮捕そして逃走など、めまぐるしく状況が変化してゆくドラマで目が離せないです。
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「なぜ彼はこんなモンスターになり果てたのか」が徐々に解明されて、陰惨で過酷な過去が露わになります。ただ、後味は悪いので、もう一度ぜひ見たいとは思いにくいかもしれません。