支倉清乃の日常 #演舞ステラ 卓前SS
7:15 起床
カーテンを開けて天気を伺う。今日は、あんまり暑くなさそうだ。
ベッドメイクを手早く済ませて、動きやすい服装に着替える。寝室の清掃は2~3日に1回、この時間に。自分の部屋だけど過ごす時間はあまり多くないから、あまり汚れることはないのだけど。
邪魔にならないように髪をひとつに結んで、居間に向かう。
7:45 朝食の準備
あまり朝から量を食べられないのは、私もお父さんも一緒。お父さん、今日は食べられるかな。冷蔵庫に並べた作り置きのタッパーたちをぺこぺこと開けて、かぼちゃのサラダを皿に出す。あとは、昨日私が食べた残りのスープ。食欲がなければどちらかだけでもいいし、スープを飲むことくらいはできるよね。一回しっかり火を入れて、運ぶ頃には食べやすい温度に冷めてるかな。
どれも、お母さんが置いたままのレシピメモを見て作った。お母さんの味にはなれないけど、その違いは私しか分からないからいいんだ。
8:00 健康観察
居間と隣室を仕切る引き戸を開ければお父さんの……元書斎。今は寝室。ここが一番落ち着きそうだからと、机と本棚の一部をどかしてベッドを置いた。本棚をどけたら窓があってびっくりしたなあ。こっちもカーテンを開けて明るくしてから、肩を叩いて呼び起こす。ひとつ、咳払いをして。
「清隆さん、おはようございます。朝ですよ」
ゆるりと瞼が上がり、こちらを見てふんわり笑うお父さん。今日はちょっと顔色が良い。ごはん食べられるかも。
ぼんやりしているうちに、手首に血圧計を巻いてスイッチを押す。反対側の脇には体温計を挟んで、まだ表情が変わらないお父さんに笑い返した。
お父さんの挨拶はいつも、はっきり目が合ったとわかってからだ。
「おはよう、茉乃。今日も綺麗だね」
実際、目元はだんだんお母さんに似てきていると思う。お母さんもお父さんも綺麗でかっこよかったから、それ自体は嬉しいことだと思う。
だけど、
「ふふ、そればっかり」
……本当に。
丁度よく左手首と右脇から電子音が響く。お父さんの耳には入らないそれらをできるだけ自然に取り去って、ノートに記録する。熱は無い。脈も安定してる。うん。今日も生きてる。
「さ、ごはんですよ。あなたの好きなかぼちゃのサラダもつけちゃった。食べられる?」
自分で食べる体力が今はあんまりないから、おなかが受け付けるかどうか。がんばろうね、お父さん。
※増えたり増えなかったりするかもしれない