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工房めぐ海~困難に立ち向かい夢を追う工房の物語~

工房めぐ海の創業と再建工房めぐ海は岩手県陸前高田市広田町に震災の4か月前オープンしました。創業者の村上豊子さんは地元の海産物を使ったおやきを開発し、広田町の特産品として11人の仲間と販売し始めました。村上さんは工房で広田の特産品を作ることが夢でした。村上さんは、広田には良い海産物がたくさんあるのに牡蠣が採れれば牡蠣だけ、ワカメも塩蔵にするばかりではもったいないと感じていました。そして自ら地域おこしを手伝ってくれる女性を探し工房めぐ海を始めることができました。「めぐ海」という名前は「海からの恵み」「地域からの恵み」という意味が込められているのです。

そんな工房めぐ海さんの工房が津波によって流されたのは、おやきの販売を開始してからわずか4か月後のことでした。村上さんが工房の近くまで行くと、建物はほとんど跡形もなく消えていたそうです。それを見て工房の再建は諦めることを覚悟しましたが、工房で働くスタッフたちの言葉で村上さんの気持ちは変わりました。11人いた仲間は1人が津波の犠牲となり、家を流された人もいました。そんな中、家を流された仲間の「やるしかないでしょ!」という声を原動力として工房めぐ海を再建させました。
工房めぐ海では、地元の食材を使ったおやきに加え、がんづき、ゆべし、味噌、お弁当などを全て手作りしています。その中でも有名なのは、ここでしか作られていないホタテやワカメなどの海産物のおやきです。おやき一つ一つ丁寧に手作りで、具材を包む皮は営農組合のお父さんたちによって作られたお米でできています。多くの改良を重ねて作られているこのおやきは、決して機械化はせず、全て手作業で作られています。手作りだからこそ、めぐ海のおやきは工房で働くメンバーの真心を感じることができ、美味しい仕上がりになっているのです。

工房めぐ海再建秘話
私たちは今回オンラインゼミ合宿で創業当初からのメンバーで現在工房めぐ海の代表である臼井美奈子さんにお話を伺いました。
震災当時、臼井さんも家が流されてしまい、3か月ほどお姉さんの家に居候していたそうです。そして工房のメンバーで話し合いが行われた際に、「レシピもあるし、まだ開発途中のおやきもある、おやきを待っている人たちもいる」という想いで再建しようと決意されました。創業者である村上さんの夢が村上さんだけでなく、メンバー全員の夢に変わった瞬間でした。東日本大震災の被害は本当に大きく、工房を立て直すどころではなかったと思います。しかし、工房めぐ海のメンバーたちの広田町への愛があったからこそ現在も美味しいおやきが食べられ、陸前高田の復興へ貢献しているのだと感じました。去年、陸前高田にリニューアルオープンした道の駅への出品も決まり、ますます陸前高田を盛り上げています。
震災前には給与面の問題があったそうですが、震災後は「何か地域のためにやらなければ」という気持ちで働かれました。その中で、少しでもおやきや、他の商品を作り、工房を絶やさないように現在まで働かれています。しかしおやきや他の商品を作るにしても、1つ新しい商品を作るのに何回も何回も試さなければ新商品はできません。その期間はなんと2年以上かかるそうです。それでも広田の特産品を作るという工房めぐ海の地域に対する想いが新商品開発の原動力となっています。このような困難を乗り越えながら広田の食材を使った工房めぐ海の商品がこれまで多く開発されてきているのです。

今回、臼井さんのお話を聴かせていただき、工房めぐ海さんの強さを学ぶことができました。工房めぐ海さんの強さは再建した後についての質問をしたときに、新商品をつくるのは2年以上かかるけどそれでも工房を絶やさないように頑張っているという話しを聴いたときに感じました。震災という困難の中でもおやきに対する情熱、地域のために再建を決意した強い気持ちを感じることができました。これから社会に出て困難が訪れた時、工房めぐ海さんの物語を思い出して困難に立ち向かっていこうと思いました!


4年斉藤 3年尾方