りくとのヒトリゴト部屋

演劇を学ぶ大学生。劇評を書いてみたり、エッセイを書いてみたり。ヒトリゴトをつらつらと。

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最近の記事

ひとりひとりが輝くこと|劇団四季ミュージカル『エルコスの祈り

 劇団四季が贈る子ども向けのミュージカルがこの夏、東京・浜松町の自由劇場で上演された。50年後の地球、自由な行動や発想を制限された子どもたちに、心を持ったロボットが人間の素晴らしさを与える、心温まるストーリーである。連日多くの観客を魅了し、東京での幕を下ろした本作は、全国ツアーでの幕を開けたばかりである。  1984年のニッセイ名作劇場で初演となった本作。以来、数多くの再演を重ね、また時代と共に台詞の変更や演出の刷新を重ねてきた。2002年までは『エルリック・コスモスの23

    • 空(そら、から?)

       いま演出している作品の稽古では、それぞれの価値観や思い出を共有しています。 「四月ってどんなイメージ?」 「思い出を与えてくれた存在は?」 とにかく私たちには色んな背景があって、色んな絵の具を持ってる。もしかしたら絵の具だけじゃないかもしれない。人によっては赤い血で染められたキャンバスを持っているかもしれない。皆の価値観を聞く時間ってすごく楽しいし、どれだけ他者の価値観に触れられるかって、その人に深みを与えるものだと思う。  昨日は、原民喜が遺した作品集『画集』から「

      • 【備忘録】わたしの演劇〔2023年春編〕

         わたしが思う「演劇」をツラツラと書き残しておく。あくまでもいま、2023年3月時点での話である。少しずつ考え方が変わるだろうから、備忘録程度に。  2023年に入ってから色んな演劇に出会った。もっとも、一番観ているのはミュージカルだが、四季以外の興行も触れているのだから、少しは成長したのだろうか?(いや、4月からは四季に浸かる予定)  わたしと演劇の出会い。それはミュージカルだった。もともと「エンタメ」が好きだった私はエンタメを演劇として捉えたことがなかった。  これは

        • ありふれた日常と「自由」|東京演劇道場『わが町』

           混乱の世の中。ある場所では戦争があり、ある場所では疫病が流行り、ある場所では、、、。激動の時代を生きる私たちにとって、日常とは何か。そんな深い問題を突き付けられた舞台だった。  1月25日、東京芸術劇場・シアターイーストにてソーントン・ワイルダーによる『わが町(原題:Our Town)』が幕を開けた。同劇場が主催し、野田秀樹を中心とした芝居創作を行う東京演劇道場のメンバーが挑むこの舞台。演出は柴幸男(ままごと)が務める。  3幕からなるこの舞台。原作では「舞台監督」と呼

          この世界を見渡す|演劇ユニット・にもじ『こうさてん』

           演劇的行為とは何だろうか。面白い戯曲、あっと驚く演出、思わず感情移入してしまう芝居。たしかにこれらの要素が「おもしろい演劇」を創っているが、もっと大切な存在がいる。それは「観客」だ。  皆さまは[ワークインプログレス]という言葉をご存じだろうか?これは「制作中の作品」を指し、完成した作品ではなく未完成の作品を上演する形態のことだ。このワークインプログレスに挑戦しているのが、演劇ユニット・にもじだ。日本大学芸術学部に在学中の山本真生、渡邉結衣(=劇作・演出)と林美月(=俳優

          この世界を見渡す|演劇ユニット・にもじ『こうさてん』

          ひとりでは生きられない|劇団久遠旗揚げ公演『象の王様と天使の筆』

           エネルギーに満ち溢れた舞台が、新たな旅を始めている。  日本大学芸術学部の学生、浅賀香太(代表)・上村陽太郎・丹羽駿介ら3人により旗揚げされた劇団久遠の公演が、23日(水・祝)に東京・高円寺のアトリエファンファーレ高円寺で幕を開けた。  原田章生によるストップモーションアニメ『ゾウの王様と天使の筆』を原作に、丹羽駿介が台本を書き下ろした。演出は上村陽太郎による。  舞台は、乱暴で自分以外に興味を持たない象の王様が治める動物の国。そこでは、ナマケモノやリス、パンダの親子、

          ひとりでは生きられない|劇団久遠旗揚げ公演『象の王様と天使の筆』

          生きようとする私たち|コーポ指『みおさめ』

           姉妹の絆、友情の証。違う2人、同じ人間。忘れてしまった、人とのつながりを強く感じさせる舞台がここにある。  11月3日(木・祝)から同月4日(金)まで、日本大学芸術学部の学園祭企画として、演劇団体「コーポ指」が公演を行った。本公演で旗揚げとなった同団体。記念すべき初公演は、作=福島さや乃・演出=工藤咲喜による『みおさめ』である。  急逝した長女・夢原光希の葬儀をひかえたある日。光希の妹で次女の唯月(=小西美穂)は副葬品に悩み、部屋一面に服やぬいぐるみ、本を散らかす。三女

          生きようとする私たち|コーポ指『みおさめ』

          言葉が生きる舞台~愛が生んだ1日の悲劇~|浅利演出事務所『アンドロマック』

           究極のせりふ劇がここにある。浅利演出事務所による『アンドロマック』が、今月22日(土)に東京・浜松町の自由劇場で幕開けした。フランス古典主義を代表する悲劇作家、ジャン・ラシーヌによるこの戯曲。オリジナル演出は2018年に亡くなった浅利慶太によるが、今回の再演に際し、タイトルロールを務める野村玲子が演出も担う。  舞台はトロイア戦争が終結したギリシア。戦争をギリシア側の勝利に導いたエピール国王・ピュリス(阪本篤)は、その功績を称えられスパルタ王女・エルミオーヌ(坂本里咲)を

          言葉が生きる舞台~愛が生んだ1日の悲劇~|浅利演出事務所『アンドロマック』