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頼もしい彼 【笑話】
( ※ この記事には虫の画像が含まれます。)
暑くなったと思ったら寒さがぶり返して、晴れたと思ったら雨が降り続いて、やっと夏らしい青空になったと思ったらまた灰色の空が広がっています。これは女心ですか、それとも男心ですか。
夏のBGM、蝉の声がすきです。
閑さや岩にしみ入る蝉の声
蚊の音は憎らしいです。
ねぶたしと思ひて臥したるに、蚊の細声にわびしげに名のりて、顔のほどに飛びありく。羽風さへ、その身のほどにあるこそ、いとにくけれ。
(ねむたくてたまらなくて横になったのに、蚊が細くやるせなげにプーンとうなって顔のあたりを飛びまわる。小さいその身体相応に羽風までごていねいに送ってよこすのが、ひどくにくらしい)」。
ある日のことです。
愛猫クロくんの部屋に、「く」の字の形をした黒い小さなものが落ちていました。糸くずかなと思いながら手で拾い上げたのですが、持った感触が糸くずと違う。よくよく見てみると、虫の足でした。
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恥ずかしながら、私は虫が大の苦手。「うわっ!」となって即座に手に持ってしまったものを振り落としました。
震える足に力を込めながら床を注意深く見ていくと、もうひとつ、虫の足が落ちていました。
これはいったい・・・。
愛猫クロくんのほうに目を向けました。
「もしかして、食べちゃった?」
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クロくんは素知らぬ顔です。
クロくんのおなかは大丈夫かな、どこかに虫まだいるのかな、と不安がよぎりましたが、気をとりなおして、掃除機をかけ始めました。
掃除機をかけながら思い出していたのは、イニシャルGのことです。
イニシャルG、黒光りする燕尾服を身にまとい、ご自慢の駿足で世界中の闇から闇へ縦横無尽に暗躍する恐ろしいアイツです。イニシャルGのいるところには必ずそばにGKB集団がいるという、ああ、なんとも恐ろしい。
イニシャルG、できれば遭遇したくない・・・。
そんな思いはどこにも届かず、掃除機を進めたラグマットの下、足の持ち主がいました。
眼前に広がった光景を私は描写しません。
クロくん、虫、食べていませんでした。足の主はイニシャルGでした。クロくんはGをやっつけた後、ラグマットの下にしまったようです。
私は、イニシャルGをやっつけてくれる頼もしい彼と暮らしています。
しあわせです。
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