いつ病院にいったらいいの 3.病院に行きたいときどうすればいいか? (後編) つらいときこそ病院に行こう
私は田舎の一臨床医です。感染の専門家でも大学の教授でもないしがない医者にすぎません。
本当はこのような内容を書くと世の中に誤解を招いたり間違った行動に人を導かないかと不安です。本音を言えば書きたくありません。
でも、あえて書かせていただくのは、つらつら世の中を見るにつけ、新型コロナウイルスのことで世間は混乱に満ち、ところどころでパニックが起き、あまつさえそれを利用して金儲けしようとしたり、名前を売ろうとしたり、人を出し抜こうとしたりという振る舞いが目に付くためです。こんな自分の知識と考えでも少しでも世の中のために立つかもしれないと思うからです。
以下の内容はすべて私自身に文責があります。あらゆるご批判はあまんじて受け止めさせていただきます。
いま、たくさんの人たちが悩んでいるところだと思います。でも、
どうしてかわかりますか?
患者さんが病院や診療所に行くときには「心配」でいく場合と、「症状がつらくて」行く2つの場合があると思います。血圧、ちょっとしたからだのあちこちの痛みやらしびれ、尿に泡が立つ、がんにかかったかどうか心配、脳梗塞にならないか心配、ボケたのではないかと心配、いろいろとあります。
でも、こういう心配だけなら今は病院に行かないほうがよいと思います。
「心配」は普通、急ぐ必要は全くないのです。それをいま、一番新型コロナウイルスに感染する可能性の高い場所である「病院や診療所」に行くのはおかしいことです。そんな心配よりも、新型コロナウイルス感染のほうがよほど現実的ですから、なるべく避けるべきだと思います。
「どうぞ、いつでもいらっしゃい」と私も言いたいです。でも、それはできません。
「心配」なだけ、あるいは軽い風邪症状でそんなに辛くもないのに病院・診療所に来て、狭い待合室でたくさんの人と長い時間を過ごせば...
あなた自身がスーパースプレッダーになるかも知れないのです。間接的には人の命を奪う結果になるかもしれない。
「心配なだけ」ならどうか今は辛抱してください。
病院や診療所に行くべきなのはいままさにつらい人です。
たとえば
つらさというものは
ごく大雑把にいうならばこういうことになるでしょう。
だから、ある程度つらくても
えっ、「様子を見る」ってどういうこと...
今度はそう来ますよね。
ただ、ボーッとみていてももちろんだめです。いくつかの点に気をつけてしっかり観察するのです。
うまく話ができない人ではこういう観察もしにくいものです。そういうときに使えるのは、血圧とか脈拍とか体温、飲水量などの数字やこういうものもあります。
こうやって観察していくと変化がわかると思います。上の図でいうとあぶないのは③④であることはわかりますよね。
「風邪」は正式には「急性上気道炎」といいます。上気道というのは鼻、ノド、気管支のことです。だから鼻水、咽頭痛、咳がでるわけです。下気道というと肺のことになります。
風邪はだいたいはじまりは急です。だから、最初の3〜6時間は「急に悪くなる」のは仕方がありません。上のような症状があってこのような経過をたどるならはじめはじっくり様子を見ましょう。
風邪がいったんよくなってきたなと思っているとしばらくしてまた悪くなることがあります。しかも、咳や痰や息苦しさが強くなることが多いのですが、これはただの風邪のあとに肺炎が起きてしまった可能性があります。
これはもう病院や診療所に行くしかありません。
新型コロナウイルス肺炎も初めの一週間はふつうの風邪症状で、一週間程度で急に息苦しさや倦怠感が強くなって肺炎を引き起こし入院になることが多いそうです。だから、現時点では二次性肺炎のうち症状がつよいものは新型コロナウイルスのPCRを行う可能性が高いです。
また、熱だけで風邪らしい症状がないときにはかえって注意が必要なのです。
からだのなかにばい菌が入り込んでいることが結構あるんです。こういうときは熱だけでなくすごくつらく、しんどくなります。
悪寒戦慄には特に注意が必要。
でも、熱は高くても平気な顔していて食事もよく食べる、こういうときはあわてる必要はありません。
バイタルというのは病院に行くと普通は看護師さんがしらべてくれます。次のようなものです。
これらが大きく変化するときはやはり危険な状態であることが多いです。以下に、いくつかのパターンを考えて書いてみました。
いろいろな病気での注意点を思いつくままに並べてみました。あまりできがよくないのであくまでも参考までにしてください。
これで終わりです。最後に一つだけ追加させていただきます。
いまは時間を惜しんで、できるかぎり頑張って、新型コロナウイルスの流行と戦うべきときです。建設的でない批判やゴシップに時間を費やすべきではありません。よく考えてデマに振り回されないようにしてください。
今は批判し合うべき時ではありません。智慧を出し合って協力しあうべき時です。
たくさんの患者さんの命がかかっています。これに失敗すれば、失われる命は多くの人が考えているよりはるかに大きいものになります。それはもう一種の戦争といったほうがよいくらいです。あの3.11をはるかに上まわる人の命が奪われるでしょう。
だから、普段は患者さんに「1日7時間以上はしっかり寝なきゃいけないよ」と念仏のように言っているのに、今日もほぼ徹夜のようにしてこんな記事を書かせていただきました。
でも、いつかこの戦いも終わります。穏やかな日々が戻ってきます。私も、最近覚えた下手くそなスケッチを思う存分描ける日を待ちわびながらもう少し頑張ろうと思います。