(花魁?台詞)「お別れでありんす。」
なぁにをお言いでありんすかぇ。
廓の中での言葉なぞ、戯れ言[ざれごと]ばかり。
主は、そんなこともわからぬままに
廓遊びをしておいででありんしたのかぇ。
わっちを本気で妻にするなぞ、フフフッ、馬鹿も休み休みお言いなんし。
主とわっちでは釣り合い等とれるわけもあるまいに。
主には、ほとほと、呆れんした。
もう、お逢いすることはありんせん。
さぁ、お帰り下さんし。
そして、二度と廓遊び等せずに確りとした出自の奥方を御迎え下さんしな。
誰か、主様がお帰りでありんすぇ。
では、主様、此にて失礼させて頂きんす。
(襖を閉める音)
(暫く歩き、部屋が遠のいたところでしなりと座り込む。)
戯れ言ではない気持ちを申さば…主様…わっちとて、主様の傍に在りたいと思っておりんした。
それでも、わっちは遊女…主様には釣り合わぬ女…。
愛しておりんした。
愛しているからこそのお別れでありんす。