続きだお!『居場所』(薄桜鬼 原田 千鶴)
どのくらい眠ったのだろう。
さっきより熱があがっているのか体が重くて起き上がるのもきつい。
きっとあの時沖田さんが寝るように言ってくれなかったら私は倒れて余計に迷惑をかけたかもしれない。”
意識がはきっきりしない中千鶴は心の中で呟いた。
「千鶴?」
誰かの声が襖を通して聞こえる。
でも、返事をするのも億劫なほど千鶴の体は言う事を聞かない。
「俺、原田だけどよ、入るぞ。」
声の主は新選組十番組組長原田左之助だった。
襖を開けて原田がはいってきた。
隊服に身をつつんでいるところを見ると夜の巡察当番は十番組らしかった。
その手には水の入った桶と手ぬぐいをもっていた。
「原田、さん。」
か細くその名を口にする。
「こりゃ、そうとう熱があがってるみたいだな。大丈夫か?」
そういいながら桶に手ぬぐいを浸ししぼると千鶴の額にあててくれる。
「あのっ、風邪感染っちゃいますよ。あまり近づかないほうがいいです。」
か細い声で千鶴が原田に言う。
「馬鹿だな、俺の心配なんかしてんじゃねぇよ。」
優しく微笑んで千鶴の頭を撫でる。
「心配すんな、俺は丈夫なほうだからよ。風邪の方が逃げていっちまうから、な。」
原田の暖かくて大きな手が千鶴の頭を何度も撫でる。
それが心地よくて有難くて少々心ぼそかった心に染み入る。
千鶴の目から涙が一筋流れる。
その涙に気がついた原田が親指軽く拭ってくれる。
「何泣いてんだ。まぁ、こんなところで熱だして一人で部屋に居れば心ぼそくもなるよな。」
言いながらまた手ぬぐいを水でぬらししぼって千鶴の額にのせてくれる。
「俺は、これから巡察いかなきゃなんねぇけど帰ってきたらまた来るからよ、大人しく寝てろよ。」
原田は言うともう1度手ぬぐいを濡らしてしぼり千鶴の額にのせると立ちあがって優しく微笑むとそのまま千鶴の部屋を後にした。
”原田さんありがとうございます”
千鶴は心の中でお礼を言うのだった。
続く・・・・。