1.プロローグ今年の夏は無機質だ。 毎朝、冷たくて不快なエアコンの風が僕を起こすが、その空気で芯まで冷やされた体は重くてなかなか起き上がってくれない。 なんとか体を起こしたら、デスクに座り、パソコンのディスプレイをつける。 朦朧とする頭と痺れた指先で見慣れたUIを無意識に操作すると、スピーカーから聞き慣れた声が聞こえてくる。