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自分が変わればいいだけだった

情熱と勘違い|須藤 陸 の続き

仕事で無理を続けて身体を壊し、それが原因で障害を抱えた結果、不本意な職に就いていた僕は、その団体で活動することで充足感を得、人とのつながりを持ち、充実した日々を送っていた。

しかし、団体を運営するうえで不可欠な裏方仕事を何年も続けていくうちに、僕の腹の中で、少しずつ不満が蓄積されていった。
 
何もしない、協力もしないで、平然としている会員のなんと多いことか。
手助けを求めても、お決まりの「私は忙しいので」。

僕は「好きなことを続けるためには、嫌なこともやらねばならない」などと、自分を無理やり納得させ、我慢して、仕事を続けた。
いつか、この苦労が報われる時が来ると思っていた。

現実には、その後数年たっても報われることはなく、ねぎらいや感謝の言葉さえ、ほぼなかった。
盛大に使った、自分の時間の重さに、身を切られる思いがした。

やる気を無くし、代表との間に軋轢が生まれ、団体を去ることにした。
代表に抱いていた尊敬も憧れも、憎しみに変わっていた。
仕事の引継ぎには時間をかけ、きちんと済ませた。
自分の中で、きっちりと幕を引きたかったからだ。
 
団体を抜けた後も、怒りは収まらなかった。 

憎悪をたぎらせても、苦しむのは自分自身だと気が付いたのは、退会から1年以上も経ってからだ。 

結局は、自分の時間を生きなかったことが、この結果を生んだ。 
自分が変わればいいだけの話だ。
それに気が付いた翌日の朝、腹の中の憎悪の塊は消え、悩まされていた首の痛みと頭痛が嘘のようになくなった。
 
僕は顔を上げて、朝日を飲み込み、二度と来ない今日を大切にする。

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