霧のサンフランシスコ | #シロクマ文芸部
霧の朝だった。古びたホテルの窓から見える景色は綿あめのような真っ白な霧で覆われていた。窓から道路を覗き込もうとしたが、真っ白で何も見えなかった。
夏のサンフランシスコの朝と夕方は霧が多い。東京ではお目にかかれないほどの霧を見ることができる。どんどん流れていく霧を眺めていたらアサミが後ろから抱きついてきた。
「何にも見えないんだからさ!パン食べちゃおうよ」
「そうだな」
「ねぇ、ゴールデンゲートブリッジって、どうして金色じゃなくて赤いんだろうね」
そういえば、そうだな。考えたことなかったけど、金色じゃないよな。オレンジがかった赤色という感じの色だ。ネットで調べてみればと言おうとしたがやめておいた。それではあまりに野暮な会話じゃないか。
「霧に覆われても目立つようにじゃないかな?」
「じゃぁ何でゴールデンなのよ……」
アサミが口を尖らせて疑問をぶつけてくる。こんなたわいもない会話が楽しいのは自分たちの付き合いの月日が浅いからかもしれない。
今日はそのゴールデンゲートブリッジとフィッシャーマンズワーフを観光予定で、牡蠣や海老を食べることになるだろう。天気が良ければ急な坂道のてっぺんからみる港の景色は素晴らしいはずだ。
アサミの楽しそうな横顔を眺めながら、はやく夕方になって、またこの霧の街を見たいと思っている自分がいた。
シロクマ文芸部の企画に参加しました。
小牧幸助さん
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