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pasteltime
さようなら | #シロクマ文芸部
寒い日に訃報は届いた。
『今朝、母が亡くなりました』
◇
入院している伯母の面会へ行った。
伯母は酸素マスクをして苦しそうだったが、私を見つめて懸命に話かけてくる。
「ごめんなさいね、ごめんなさいね」
「なんで伯母さんが謝るの?!」
「謝らなきゃならないのは私の方だよ!伯母さんにはたくさん迷惑かけて、たくさんお世話になって……」
「さようなら……」
泣いていた。
お見舞いに行って元気づけてあげなくてはいけないのに、泣いてしまった。
「涙がでる……」
伯母も泣いていた。
泣かせてしまった。
伯母は自分がもう長くないことをわかって、私にお別れを言ったんだと思った。
「なんで!さようならなんて言うの?!」
その後は出来るだけ明るい話題にし、笑って病室をでようとしたが、帰り間際に伯母は力なく言った。
「さようなら……」
◇
今日も寒かった。
従弟からのLINE通知は、そういう事なのだろうと画面を開く前からわかっていた。
(さようなら……伯母さん)
心の中で呟いていた。
シロクマ文芸部の企画に参加しました。
小牧幸助さん
いつもありがとうございます。