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リクの話

何はともあれ、相棒リクの話から…。リクは大型犬ミックス。体重約20キロ。推定5-6歳。

長野に引っ越してきたのが8月1日。そのわずか数週間前の7月15日、ワンコが亡くなった。病弱な子で、6歳で我が家にやってきて、わずか3年と10か月しか一緒にいられなかった。悲しみで茫然としていた数時間後、初孫が誕生した。悲しみと喜びが同時に来て、当然、悲しみに蓋をした。でもね、悲しみって隠しとおすことはできないんだよ。引っ越しの忙しさに紛れていたけど、一人になるとたまらなく寂しさがこみあげてくる。夜中にふと目が覚め、パニックになったこともあった。自分が何をしているのか、なぜこんな森の中に一人でいるのかわからなくなった。移住自体が愚かな失敗に思えてきた。

俗にいうペットロス状態だった。たかが犬一匹と思われるかもしれないが、それまでいつも一緒にいて、気にかけてきた相棒を亡くす辛さ…同じ経験をした人にしかわからないかもしれない。きちんとワンコの死に向かい合わずに突っ走ったことで、完全にメンタルバランスがくずれていた。

娘は私が鬱になるかもしれないと心配し、次のワンコを引き取ることを勧め、私もまだそんな気になれないと思いつつも、里親募集を見るたびに心が傾いていった。保健所にいるリクを見つけ、会いに行った。保健所の担当の方は優しい方で、精いっぱい犬の世話をしている。しかし、冷たいコンクリートで仕切られた犬舎、担当の方が夕方帰ったら、次の日の9時過ぎまで誰も来てくれない。殺処分されないだけましなのかもしれないが、リクにはかなりのストレスが溜まっているようにみえた。

会った瞬間、リクは飛びついてきた。(私だけではなく誰にでもそうらしいが…)私は完全にリクから離れられなくなった。大きいし、散歩の引きが異常に強い。おばちゃん一人で飼えるのか不安がある。でも私が引き取らなかったら、あとどれくらいこの冷たい犬舎に閉じ込められているのだろう。そう思うと、いたたまれなく、今度は気持ちの整理がついていないとしぶる気持ちに蓋をして、威勢よく引き取りますと返事をしていた。

リクは賢い。二日目にして自分がリクであることを認識した。運動能力は素晴らしく高い。ドッグランの柵をよじ登って乗り越えてしまう。鹿や他のワンコを見ると興奮してガンガン引っ張り、二本足で立ち上がる。まるでカンガルーを飼っているみたいで、不安しかない。出社もしなくてはならないし、まだ頻繁に都内に戻る必要があるのにワンコ飼ってる場合じゃないのでは?しかし、そんな不安よりもリクの存在が日に日に愛おしくなっていく。

リクがきて1週間、ようやく前を向いて歩けるようになった。

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